育児休業と介護休業について考えてみる

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育児休業と介護休業

育児休業と介護休業に関して、「育児介護休業法(正式名称は『育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律』)」とセットで法律が制定されていることは、ご存じの方も多いと思います。

企業の規程でも、「育児(休業)規程」・「介護(休業)規程」と整備されているので、内容を目にしたこともあるでしょう。

通常「休業」というと、自身に理由がある…例えば、自分自身がケガや病気で長期間働けないなどの状態になった際に利用するのが、企業独自の制度である「休業」や「休職」を思い浮かべます。

育児・介護は自身が原因ではなく、家族のために仕事を一定期間お休みする…ということで、セットで考えられているのでしょう。

男性の育休取得

「イクメン」という言葉がだいぶ定着してきましたが、一昔前にくらべて、「男性の育児休業の取得」がかなり浸透してきた感はあります。

直近では、令和3年に「育児介護休業法」が改正されました。

いろいろな改正項目がありますが、一番の目玉は「出生時育児休業」でしょう。

こちらは、「産後8週間以内に4週間(28日)を限度として2回に分けて取得できる休業で、1歳までの育児休業とは別に取得できる制度」であり、通称「産後パパ育休」と呼ばれていることからわかるように、メインターゲットは「男性」の新たな育児休業です。

もちろんそのような制度が新たにできたとしても、企業の規模や社風、個々の立場などで、「法律があるから会社に制度は存在するにはするが、実際には制度の利用は難しい」という方もいらっしゃるでしょう。

それでも私の親の世代(60~70歳代)の方々が現役でバリバリやっていた頃に比べれば、女性の社会進出も進み、また男性も積極的に育児や家事に携わるというような風潮は強まっています。

育児休業に関する実務上の観点

実務では…
・法律の理念を理解し
・出産や育児を経験した女性社員が復職し仕事を継続できるように
・男性職員も積極的に育児に参加できるように
・それらの社員をサポートする同じ部署の社員も快くメンバーの出産・育児を応援できるように

するために、どのような社内の制度を構築し、どのように社内に根付かせていくか、が重要になります。

「出産・育児をする社員をサポートする」という総論に対して誰しも異論はないでしょう。

しかし、実際に自分の身近な人間が産休・育休に入り、その方が担当していた仕事を自分が代わりにならなければならなくなる、など、自分に何か不都合なことが起きるとなると、とたんに、「なぜ、出産をする者だけが優遇されるのか」と感情的になってしまう方が多いのも事実です。

本来ならば、休業で長期間、一人の人材が不在になるわけですので、その方が行っていた仕事を代わりに行う人材が存在すればいいのですが、その代替要員にかかるコストや、不在の方が行っていた仕事のレベルまでに育てるまでに時間がかかるなどの理由から、代替要員が補充されることの方が少ないのではないでしょうか。

世の中には様々な会社がありますので一様には断言できませんが、この課題については、トップを始め管理職の方などから入社したての若手社員まで、全員が同じ方向を向いて解決に向けて取り組まなければいけないものであると思っています。

育児と介護の決定的な違い

一方、育児休業に比べて介護休業の方は、取得者もまだ少なく、また、制度の浸透・周知も弱いのではないでしょうか。

会社の社員の平均年齢にもよりますが、少なくとも私が勤務している会社ではそのような状況です。

しかし、ご存知のように日本全体が「超」高齢化社会を迎えようとしています。

私もそうですが、今後いわゆる働き盛り世代である40~50代の社員の親が、介護を必要とする時代になってきます。

育児と介護の決定的な違いはなんだと思いますか?

それは、「明確な終わりがあるかないか」でしょう。

育児は必ず終わりがきます。

「子どもが生きている限りはずっと育児だ」とおっしゃる方もいらっしゃるかもしれませんが、付きっきりで手取り足取り世話をしてあげなければいけない…となると、小学校入学前後くらいまでではないでしょうか。

しかし、介護は違います。

もちろん長い目で見れば介護にも終わりが来ますが、育児のように集中期としては1~2年、小学校までとすると6年と明確にゴールが決まっているわけではなく、ほとんどのケースがいつまで続くかわからない不明確なゴールのまま、家族一丸となって取り組んでいかなければならないでしょう。

なぜ介護休業は「93日」しか取得できないのか?

私が社会保険労務士試験の受験生時代、勉強をしていて疑問を感じた点がいくつかありました。

その一つに、「なぜ介護は長期的に取り組んでいかなければならないケースが多いのに、一人の家族につき(法定の日数としては)93日しか介護休業が取得できないのだろう」というものです。

育児休業と同じように1年ならまだしも(それでも全然足りませんが)、それより遥かに短い93日しか休めないとは、どういうことだろうと。

そんなとき、社労士試験の対策講座を担当されていた先生が、この疑問に答えて教えてくれました。

「介護休業の93日間というのは、介護そのものをするために休むのではなく、長期的に取り組まなければならない介護に対し、その前段階として家族で話し合いをして役割分担を決める時間や、色々行政の制度等を調べたり手続したりするための時間、つまり『介護の準備をするための期間』なんです」

その説明がとても腑に落ちてすっきりした記憶を、今でも鮮明に覚えています。

国や会社としても、何年かかるかわからない介護に対し長期的な休業を保障することはできません。

そのため、「時間をとって、介護に対しどのようなスタンスで望んでいくのか、家に呼び寄せるのか、施設に入れるのか、転居するのか、仕事を変えるのか…、などをじっくり考え、そのための準備をする」ために93日という休業期間が設けられているわけです。

したがって、根本的に休業の目的が育児とは異なるため、期間の長さも異なって当然なのです。

社員から同様の問い合わせを受けた際に、余計なこと…と思いながらも、そのような制度趣旨の話をしてしまう、そんな人事マンです。

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