そのケガは労災適用?健康保険適用?

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そのケガは労災適用?健康保険適用?

いわゆる「労災」ですが、私もさすがに頻繁に…とまではいかないものの、定期的には書類を作成して病院や薬局、労働基準監督署に届け出ています。

実務では「社員本人が怪我をしてときに、本来ならば労災で処理すべきところを、健康保険を使ってしまった」というケースが発生します。

社員が怪我をした場合、「業務上・通勤途上の怪我であれば労災を適用」し、「業務上・通勤途上以外の怪我であれば健康保険を適用」します。

ですが、一般の方にはこの認識があまり浸透していないようです。

労災・健康保険の適用でよくある間違い

例えば「大雪が降った日の翌日の朝、自転車で出社する際に、凍結した路面に自転車のハンドルをとられて転倒し、左腕を骨折した」方のケース。

転倒しケガをしたあとにそのまま病院へ行って処置をしてもらった際に、窓口で健康保険証を提示して、本人が3割の療養費を支払う…。

通勤の時間帯の通院や、本人がスーツを着ていたりすると、医者や看護師、スタッフの方から「通勤途中のお怪我ではないですが」と本人に確認してくれるケースもあるようですが、基本は本人の自己申告です。

そのため、このような怪我でも、本人が労災・健康保険の区別を意識せずに、いつもの通院と同じように窓口で健康保険証を提示して診療・処置を受けてしまうことがあります。

このような場合は、発覚した時点で本来の適正な形に戻す、つまり、健康保険から労災保険に切り替える必要があります。

誰が誤りに気付くのか…

さて、この切替ですが、本人が「そういえばこれは労災なのかも!」と早期に気付いて人事に相談してくれれば、切替の手間も最小限に済ませることができます。

しかし、本人が気付くのが遅いと(特に月をまたいでしまう場合など)、結構手間がかかってしまうケースもあります。

本人が気付かない場合、誰が気付くのか…。

人事と言えども、自社の社員全員の通院状況を把握することは不可能です。

これは、健康保険の保険者、つまり政府管掌健康保険の場合は「協会けんぽ」、健康保険組合の場合は「各健康保険組合」が気付くのです。

保険者は、毎月各病院から報告される健康保険の適用状況を確認し、「ん?これは労災ではないのかな?」と疑いをもった場合、会社に問い合わせをします。

それを受けて、人事が当該社員に「これはどのような状況で怪我をして通院をしたのですか?」と調べていくと…、「それは健康保険は使えません!労災です!」となります。

健康保険の保険者も、労災で費用負担すべき保険給付まで支払いたくないですから、そこは厳しくチェックをしているわけです。

健康保険から労災保険への切り替え

さて、ここまでの段階になると、ちょっと手間がかかります。

まず、社員ご本人が、健康保険の保険者に対し誤って利用した健康保険の保険負担割合(7割)に相当する金額を納めます。

この時点で、本人の負担が10割(病院に対し3割・健康保険に対し7割)支払っていることになります。

そして最後に、労災でその10割負担した部分を「療養の費用の請求」という形で補填してもらうことになります(諸説…ではなく諸方法あるかもしれません。悪しからず)。

このように、労災でカバーすべき治療に誤って健康保険を適用すると、本人も一時的ではありますが、治療費の全額を立て替えて支払うことになりますので、少し大変です。

業務上または通勤途上で怪我をした際は、必ずその旨を伝え、労災保険の適用を主張してから治療を受けるようにしましょう。

オマケ…通勤災害の申請書のはなし

また、労災には「業務災害」と「通勤災害」の2種類がありますが、そのうちの「通勤災害」の申請時には、申請書に「どこで被災したか」という地図を記載する必要があります。

この地図ですが、労働基準監督署の担当者の方が「申請書を読んだだけで労働者がどこでどのように被災したか」ということを正確に把握できるように、的確な地図を書く必要があります。

しかし、申請書上の地図を記入するスペースは、そんなに広くありません。

この中に、被災場所について一切知らない労働基準監督署の担当者の方が見て、場所をイメージできる程度の制度の地図を書かなければなりません。

出典:厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督署『労災保険 療養(補償)等給付の請求手続』

これが非常に難しいです。

細かすぎても書ききれずごちゃっとしちゃいますし、大雑把過ぎても正確さに欠けてしまいます。

また、このスペースには、地図のほかにも通常の通勤経路と方法を記載する必要がありますので、スペースを最大限に活用しなければなりません。

時々、完成した申請書が自分にとって芸術作品と思えるくらい精緻になることがあります。

自分の血液型がA型であることも関係しているかもしれませんが、こういう細かい作業は嫌いではありません。

また、「通勤災害」というと、公道で被災するイメージが強いと思いますが、駅構内の階段で足を踏み外して転倒し骨折したような場合も「通勤災害」に該当します。

その場合は、駅構内の様子を図示することになります。

労働基準監督署に提出する正規の書類ですので、記入はボールペンで行いますが、この図の完成間近のところでミスをし、ため息をつきながらもう一度始めから書き直すことがときどきあります。

そのたびに、他の人の書類を一度見てみたい…と思います。

「もしかしたら、ここまで細かく描く必要はないのかも…」という悪魔のささやきと戦いながら、またペンを取り、労働基準監督署の担当者の方にわかりやすい図を!をモットーとして、今日も日々書類を書いています。

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