労働保険の保険料の徴収等に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
雇用保険法/徴収法 令和7年第8問 A
継続事業を営む事業主が、当該事業に係る労働保険事務の処理を労働保険事務組合に委託している場合、令和6年11月1日に保険関係が成立した事業について当該保険年度の概算保険料を延納することができる。
則第27条第1項
根拠条文を確認します。
(事業主が申告した概算保険料の延納の方法)
第二十七条 有期事業以外の事業であつて法第十五条第一項の規定により納付すべき概算保険料の額が四十万円(労災保険に係る保険関係又は雇用保険に係る保険関係のみが成立している事業については、二十万円)以上のもの又は当該事業に係る労働保険事務の処理が労働保険事務組合に委託されているもの(当該保険年度において十月一日以降に保険関係が成立したものを除く。)についての事業主は、同項の申告書を提出する際に法第十八条に規定する延納の申請をした場合には、その概算保険料を、四月一日から七月三十一日まで、八月一日から十一月三十日まで及び十二月一日から翌年三月三十一日までの各期(当該保険年度において、四月一日から五月三十一日までに保険関係が成立した事業については保険関係成立の日から七月三十一日までを、六月一日から九月三十日までに保険関係が成立した事業については保険関係成立の日から十一月三十日までを最初の期とする。)に分けて納付することができる。労働保険の保険料の徴収等に関する法律施行規則
本肢は「事業主が申告した概算保険料の延納の方法」に関する問題です。
保険年度の中途に保険関係が成立した継続事業は、
・概算保険料の金額が40万円(労災保険に係る保険関係・雇用保険のみの事業については20万円)以上の場合
・労働保険事務組合に労働保険事務を委託している場合
であって、保険関係成立日が9月30日以前である場合には延納できます。
問題文のケースでは、「令和6年11月1日に保険関係が成立した事業」ですので、延納することはできません。
本肢は×です。
雇用保険法/徴収法 令和7年第8問 B
令和7年8月1日に保険関係が成立した一括有期事業について、納付すべき当該保険年度の概算保険料の額が50万円のとき、事業主は当該概算保険料を延納することができない。
則第27条第1項
根拠条文は、選択肢Aと同じです。
本肢は「事業主が申告した概算保険料の延納の方」に関する問題です。
一括有期事業の延納のルールは継続事業と同じです。
問題文のケースは、概算保険料額・保険関係成立時期ともに要件を満たしているため、概算保険料を延納することができます。
本肢は×です。
雇用保険法/徴収法 令和7年第8問 C
一般保険料の算定基礎となる賃金総額の見込額を500万円として算定し納期限までに概算保険料を納付した後、賃金総額の見込額が1,200万円に増加し、増加後の賃金総額の見込額に基づき算定した概算保険料の額と既に納付した概算保険料との差額が122,500円であるとき、事業主はその差額を所定の期限までに納付書を添えて納付しなければならない。
則第25条第1項
根拠条文を確認します。
(概算保険料の増額等)
第二十五条 法第十六条の厚生労働省令で定める要件は、増加後の保険料算定基礎額の見込額が増加前の保険料算定基礎額の見込額の百分の二百を超え、かつ、増加後の保険料算定基礎額の見込額に基づき算定した概算保険料の額と既に納付した概算保険料の額との差額が十三万円以上であることとする。労働保険の保険料の徴収等に関する法律施行規則
本肢は「概算保険料の増額」に関する問題です。
増加概算保険料の要件は、増加後の保険料算定基礎額の見込額が
・増加前の保険料算定基礎額の見込額の100分の200を超
・増加後の保険料算定基礎額の見込額に基づき算定した概算保険料の額と既に納付した概算保険料の額との差額が13万円以上
双方を満たす場合となります。
問題文のケースでは、「増加後の賃金総額の見込額に基づき算定した概算保険料の額と既に納付した概算保険料との差額が122,500円」ということで13万円以上とはなりませんので、増加概算保険料の納付は不要です。
本肢は×です。
雇用保険法/徴収法 令和7年第8問 D
事業主が所定の納期限までに概算保険料申告書を提出しなかったため、政府が納付すべき概算保険料の額を決定し、これを当該事業主に対して令和7年8月20日に通知を発した場合、当該事業主の未納額の納期限は同年9月19日となる。
則第38条第4項・第5項
根拠通達を確認します。
(概算保険料の納付)
第十五条
3 政府は、事業主が前二項の申告書を提出しないとき、又はその申告書の記載に誤りがあると認めるときは、労働保険料の額を決定し、これを事業主に通知する。
4 前項の規定による通知を受けた事業主は、納付した労働保険料の額が同項の規定により政府の決定した労働保険料の額に足りないときはその不足額を、納付した労働保険料がないときは同項の規定により政府の決定した労働保険料を、その通知を受けた日から十五日以内に納付しなければならない。労働保険の保険料の徴収等に関する法律
本肢は「概算保険料の納付」に関する問題です。
政府は、事業主が概算保険料申告書を提出しないとき、又はその申告書の記載に誤りがあると認めるときは、労働保険料の額を決定し、これを事業主に通知する(概算保険料の認定決定)。
この通知を受けた事業主は、納付した労働保険料の額が政府の決定した労働保険料の額に足りないときはその不足額を、納付した労働保険料がないときは政府の決定した労働保険料を、その通知を受けた日から15日以内に納付書により納付しなければならない。
本肢では、「令和7年8月20日に通知を発した」との記述があるが、「その通知を受けた日」が不明である。仮に、当日に通知を受けたとすると、8月20日から15日以内(翌日起算)は、9月4日であり、9月19日ではない。
本肢は×です。
雇用保険法/徴収法 令和7年第8問 E
政府が保険年度の中途で保険料率の改定を行い、雇用保険率が引き上げられた場合、事業主が既に概算保険料の延納を認められているとき、当該事業主は所轄都道府県労働局歳入徴収官が発する追加徴収の通知により指定された納期限までに延納の申請をすることで追加徴収される概算保険料についても延納することができ、その最初の期分の追加徴収される概算保険料の納期限は、当該通知を発した日が令和7年10月20日であった場合、同年11月19日となる。
法第17条 / 則第26条
根拠通達を確認します。
(概算保険料の追加徴収)
第十七条 政府は、一般保険料率、第一種特別加入保険料率、第二種特別加入保険料率又は第三種特別加入保険料率の引上げを行つたときは、労働保険料を追加徴収する。労働保険の保険料の徴収等に関する法律
(概算保険料の追加徴収)
第二十六条 所轄都道府県労働局歳入徴収官は、法第十七条第一項の規定に基づき、労働保険料を追加徴収しようとする場合には、通知を発する日から起算して三十日を経過した日をその納期限と定め、事業主に、次に掲げる事項を通知しなければならない。
一 一般保険料率、第一種特別加入保険料率、第二種特別加入保険料率又は第三種特別加入保険料率の引上げによる労働保険料の増加額及びその算定の基礎となる事項
二 納期限労働保険の保険料の徴収等に関する法律施行規則
本肢は「概算保険料の追加徴収」に関する問題です。
政府が保険年度の中途で保険料率の改定を行い一般保険料率等が引き上げられた場合で、事業主が既に概算保険料の延納を認められているときは、所轄都道府県労働局歳入徴収官が発する追加徴収の通知により指定された納期限までに延納の申請をすることで、追加徴収分についても延納することができます。
また、追加徴収される概算保険料の延納については、「通知を発する日から起算して30日を経過した日」をその最初の期分の納期限と定めなければなりません。
そのため、問題文のケースでは、
当該通知を発した日が令和7年10月20日
→令和7年11月19日(30日経過後の31日目)が最初の期分の納期限となります。
本肢は○となり、本問の正解となります。

