労働基準法に定める労働契約等に関する次の記述のうち、正しいのはどれか。
労働基準法 令和7年第3問 A
労働基準法第14条第1項第2号は、満60歳以上である労働者との労働契約(同条同項第1号に掲げる労働契約を除く。)は、期間の定めのないものを除き、一定の事業の完了に必要な期間を定めるもののほかは、5年を超える期間について締結してはならないと定めているが、満60歳以上であるかどうかは当該労働契約締結時の年齢で判断される。
労働基準法の一部を改正する法律の施行について(平成15年10月22日基発1022001号)
根拠通達を確認します。
第1 有期労働契約(法第14条、第137条及び改正法附則第3条関係)
1 契約期間の上限(法第14条第1項関係)
(2) 特例の対象
イ 法第14条第1項第2号に掲げる労働契約
本号の労働契約は、契約締結時に満60歳以上である労働者との間に締結されるものであることを要すること。労働基準法の一部を改正する法律の施行について(平成15年10月22日基発1022001号)
本肢は「有期労働契約」に関する問題です。
本肢は上記根拠通達のとおりです。
年齢の判断は「契約締結時」の年齢をベースに行われます。
本肢は○となり、本問の正解となります。
労働基準法 令和7年第3問 B
労働基準法第14条第1項に規定する期間を超える期間を定めた労働契約を締結した場合は、同条同項には使用者とも労働者とも規定されていないことから、使用者と労働者の双方に罰則が適用される。
昭和22年12月15日基発502号
根拠通達を確認します。
問 法第14条には、使用者とも労働者とも規定していないから、罰則は双方共に適用せられると解してよいか。
答 本法立法の趣旨に鑑み、本条の罰則は使用者に対してのみ適用がある。
昭和22年12月15日基発502号
本肢は「期間を超える期間を定めた労働契約」に関する問題です。
「期間を超える期間を定めた労働契約」に関するルール違反は、使用者のみに対して罰則が適用されます。
本肢は×です。
労働基準法 令和7年第3問 C
労働契約の締結に際し明示された労働条件が事実と相違している場合、労働者は、即時に労働契約を解除することができるにとどまり、明示されたとおりの労働条件の履行を使用者に要求することはできない。
法第15条第2項
根拠条文を確認します。
第十五条
② 前項の規定によつて明示された労働条件が事実と相違する場合においては、労働者は、即時に労働契約を解除することができる。労働基準法
本肢は「労働条件の明示」に関する問題です。
条文上は「解除することができる」としか規定がありませんが、もともと労働契約も「契約」である以上、相手側がそれを履行しない場合は履行を要求できるのは当然ですし、履行されない場合は民法上の債務不履行として損害賠償を請求することができるとされています。
「泣き寝入り」しか選択肢がない…わけではないですね。
本肢は×です。
労働基準法 令和7年第3問 D
事業主が同一人でないX社とY社に使用される労働者が、X社の業務により負傷し、その療養のために休業する期間及びその後30日間については、X社もY社も当該労働者を解雇してはならない。
法第19条第1項
根拠条文を確認します。
(解雇制限)
第十九条 使用者は、労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかり療養のために休業する期間及びその後三十日間並びに産前産後の女性が第六十五条の規定によつて休業する期間及びその後三十日間は、解雇してはならない。ただし、使用者が、第八十一条の規定によつて打切補償を支払う場合又は天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となつた場合においては、この限りでない。労働基準法
本肢は「解雇制限」に関する問題です。
上記根拠条文にある「業務上」は、本問のケースに当てはめれば「X社の業務を遂行している中で」と考えます。
とすれば、Y社には関係のない話でありますので、Y社には解雇制限の規定は適用されません。
本肢は×です。
労働基準法 令和7年第3問 E
事業主が犯した経済法令違反を原因として購入した諸機械、資材等を没収され、事業の継続が不可能となったときは、労働基準法第20条第1項にいう「やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となつた場合」に該当することから、当該事業主が、これを理由として労働者を解雇しようとする場合には、少なくとも30日前にその予告をしなければならない等の同条同項に定める解雇の予告を行う必要はない。
法第20条第1項
根拠条文を確認します。
(解雇の予告)
第二十条 使用者は、労働者を解雇しようとする場合においては、少くとも三十日前にその予告をしなければならない。三十日前に予告をしない使用者は、三十日分以上の平均賃金を支払わなければならない。但し、天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となつた場合又は労働者の責に帰すべき事由に基いて解雇する場合においては、この限りでない。労働基準法
本肢は「解雇の予告」に関する問題です。
条文における「やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となつた場合」に該当するかどうかのケーススタディです。
「事業主が犯した経済法令違反を原因として購入した諸機械、資材等を没収され、事業の継続が不可能となったとき」は、わざわざ「事業主が犯した違反」と記載があり、自業自得である=やむを得ない事由とは言えないでしょう。
本肢は×です。


