社会保険労務士試験【厚生年金保険法】<令和5年第10問>

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厚生年金保険法に関する次のアからオの記述のうち、誤っているものの組み合わせは、後記AからEまでのうちのどれか。
A (アとイ)  B(アとウ)  C(イとエ)  D(ウとオ)  E(エとオ)

厚生年金保険法 令和5年第10問 ア

障害厚生年金の給付事由となった障害について、国民年金法による障害基礎年金を受けることができない場合において、障害厚生年金の額が障害等級2級の障害基礎年金の額に2分の1を乗じて端数処理をして得た額に満たないときは、当該額が最低保障額として保障される。なお、配偶者についての加給年金額は加算されない。

解答の根拠

法第50条第3項

根拠条文を確認します。

(障害厚生年金の額)
第五十条
3 障害厚生年金の給付事由となつた障害について国民年金法による障害基礎年金を受けることができない場合において、障害厚生年金の額が国民年金法第三十三条第一項に規定する障害基礎年金の額に四分の三を乗じて得た額(その額に五十円未満の端数が生じたときは、これを切り捨て、五十円以上百円未満の端数が生じたときは、これを百円に切り上げるものとする。)に満たないときは、前二項の規定にかかわらず、当該額をこれらの項に定める額とする。

厚生年金保険法

本肢は、「障害厚生年金の額」に関する問題です。

「障害厚生年金の給付事由となつた障害について国民年金法による障害基礎年金を受けることができない場合」…つまり、障害等級3級の場合には、最低保証額が定められています。

問題文には、「障害等級2級の障害基礎年金の額に2分の1を乗じて端数処理をして得た額」となっていますが、正しくは上記根拠条文のとおり、「障害等級2級の障害基礎年金の額に4分の3を乗じて端数処理をして得た額」となります。

本肢は×です。

厚生年金保険法 令和5年第10問 イ

甲は、障害等級3級の障害厚生年金の支給を受けていたが、63歳のときに障害等級3級に該当する程度の障害の状態でなくなったために当該障害厚生年金の支給が停止された。その後、甲が障害等級に該当する程度の障害の状態に該当することなく65歳に達したとしても、障害厚生年金の受給権は65歳に達した時点では消滅しない。

解答の根拠

法第53条第1項第2号

根拠条文を確認します。

(失権)
第五十三条 障害厚生年金の受給権は、第四十八条第二項の規定によつて消滅するほか、受給権者が次の各号のいずれかに該当するに至つたときは、消滅する。
一 死亡したとき。
二 障害等級に該当する程度の障害の状態にない者が、六十五歳に達したとき。ただし、六十五歳に達した日において、障害等級に該当する程度の障害の状態に該当しなくなつた日から起算して障害等級に該当する程度の障害の状態に該当することなく三年を経過していないときを除く。
三 障害等級に該当する程度の障害の状態に該当しなくなつた日から起算して障害等級に該当する程度の障害の状態に該当することなく三年を経過したとき。ただし、三年を経過した日において、当該受給権者が六十五歳未満であるときを除く。

厚生年金保険法

本肢は、「失権」に関する問題です。

障害等級に該当する程度の障害の状態にない者が、65歳に達したときには、障害厚生年金の受給権は消滅します。

ただし、上記根拠条文のとおり、65歳に達した日において、障害等級に該当する程度の障害の状態に該当しなくなった日から起算して障害等級に該当する程度の障害の状態に該当することなく3年を経過していないときは除く…つまり、受給権は消滅しない、とされています。

問題文には「63歳のときに障害等級3級に該当する程度の障害の状態でなくなった」とありますので、そこから3年経っていない「65歳に達した時点」では消滅しません。

本肢は○です。

厚生年金保険法 令和5年第10問 ウ

遺族厚生年金を受けることができる遺族のうち、夫については、被保険者又は被保険者であった者の死亡の当時その者によって生計を維持していた者で、55歳以上であることが要件とされており、かつ、60歳に達するまでの期間はその支給が停止されるため、国民年金法による遺族基礎年金の受給権を有するときも、55歳から遺族厚生年金を受給することはない。

解答の根拠

法第65条の2

根拠条文を確認します。

第六十五条の二 夫、父母又は祖父母に対する遺族厚生年金は、受給権者が六十歳に達するまでの期間、その支給を停止する。ただし、夫に対する遺族厚生年金については、当該被保険者又は被保険者であつた者の死亡について、夫が国民年金法による遺族基礎年金の受給権を有するときは、この限りでない。

厚生年金保険法

本肢は、「夫に対する遺族厚生年金」に関する問題です。

問題文には「60歳に達するまでの期間はその支給が停止されるため、国民年金法による遺族基礎年金の受給権を有するときも、55歳から遺族厚生年金を受給することはない。」とありますが、上記根拠条文のとおり、「夫が国民年金法による遺族基礎年金の受給権を有するときは、この限りでない」と規定されています。

つまり、問題文のケースでは、遺族厚生年金は受給できることとなります。

本肢は×です。

厚生年金保険法 令和5年第10問 エ

遺族厚生年金は、障害等級1級又は2級に該当する程度の障害の状態にある障害厚生年金の受給権者が死亡したときにも、一定の要件を満たすその者の遺族に支給されるが、その支給要件において、その死亡した者について保険料納付要件を満たすかどうかは問わない。

解答の根拠

法第58条第1項

根拠条文を確認します。

(受給権者)
第五十八条 遺族厚生年金は、被保険者又は被保険者であつた者が次の各号のいずれかに該当する場合に、その者の遺族に支給する。ただし、第一号又は第二号に該当する場合にあつては、死亡した者につき、死亡日の前日において、死亡日の属する月の前々月までに国民年金の被保険者期間があり、かつ、当該被保険者期間に係る保険料納付済期間と保険料免除期間とを合算した期間が当該被保険者期間の三分の二に満たないときは、この限りでない。
一 被保険者(失踪の宣告を受けた被保険者であつた者であつて、行方不明となつた当時被保険者であつたものを含む。)が、死亡したとき。
二 被保険者であつた者が、被保険者の資格を喪失した後に、被保険者であつた間に初診日がある傷病により当該初診日から起算して五年を経過する日前に死亡したとき。
三 障害等級の一級又は二級に該当する障害の状態にある障害厚生年金の受給権者が、死亡したとき。
四 老齢厚生年金の受給権者(保険料納付済期間と保険料免除期間とを合算した期間が二十五年以上である者に限る。)又は保険料納付済期間と保険料免除期間とを合算した期間が二十五年以上である者が、死亡したとき。

本肢は、「受給権者」に関する問題です。

上記根拠条文には、遺族厚生年金の支給要件が4パターン規定されています。

そのうち、保険料納付要件が問われるのは、第1号(被保険者が死亡したとき)と、第2号(被保険者資格喪失後、被保険者であった間に初診日がある傷病により初診日から起算して5年を経過する前に死亡したとき)の2つのみです。

残りの、第3号(障害等級1・2級の障害厚生年金の受給権者が死亡したとき)と、第4号(老齢厚生年金の受給権者が死亡したとき)は、保険料納付要件は条件とされていません

本肢は○です。

厚生年金保険法 令和5年第10問 オ

遺族厚生年金と当該遺族厚生年金と同一の支給事由に基づく遺族基礎年金の受給権も有している妻が、30歳に到達する日前に当該遺族基礎年金の受給権が失権事由により消滅した場合、遺族厚生年金の受給権は当該遺族基礎年金の受給権が消滅した日から5年を経過したときに消滅する。

解答の根拠

法第63条第1項第5号ロ

根拠条文を確認します。

(失権)
第六十三条 遺族厚生年金の受給権は、受給権者が次の各号のいずれかに該当するに至つたときは、消滅する。
一~四
五 次のイ又はロに掲げる区分に応じ、当該イ又はロに定める日から起算して五年を経過したとき。
イ 遺族厚生年金の受給権を取得した当時三十歳未満である妻が当該遺族厚生年金と同一の支給事由に基づく国民年金法による遺族基礎年金の受給権を取得しないとき 当該遺族厚生年金の受給権を取得した日
ロ 遺族厚生年金と当該遺族厚生年金と同一の支給事由に基づく国民年金法による遺族基礎年金の受給権を有する妻が三十歳に到達する日前に当該遺族基礎年金の受給権が消滅したとき 当該遺族基礎年金の受給権が消滅した日

本肢は「失権」に関する問題です。

30歳未満の妻に対する遺族厚生年金の失権事由は、子の有無により分かれます。

①子がおらず遺族基礎年金を取得しない場合
30歳未満である妻の遺族厚生年金は、当該遺族厚生年金の受給権を取得した日から5年を経過したときに受給権が消滅する。

②子がおり遺族基礎年金を取得した場合
妻が30歳に到達する日前に当該遺族基礎年金の受給権が消滅したときは、当該遺族基礎年金の受給権が消滅した日から5年を経過したときに受給権が消滅する。

本肢は○です。

問題文のケースは、②に該当します。

以上から、誤りの選択肢はアとウとなり、正解はBとなります。

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