社会保険労務士試験【厚生年金保険法】<令和3年第8問>

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厚生年金保険法に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

厚生年金保険法 令和3年第8問 A

育児休業を終了した被保険者に対して昇給があり、固定的賃金の変動があった。ところが職場復帰後、育児のために短時間勤務制度の適用を受けることにより労働時間が減少したため、育児休業等終了日の翌日が属する月以後3か月間に受けた報酬をもとに計算した結果、従前の標準報酬月額等級から2等級下がることになった場合は、育児休業等終了時改定には該当せず随時改定に該当する。

解答の根拠

法第23条第1項

根拠条文を確認します。

(改定)
第二十三条 実施機関は、被保険者が現に使用される事業所において継続した三月間(各月とも、報酬支払の基礎となつた日数が、十七日以上でなければならない。)に受けた報酬の総額を三で除して得た額が、その者の標準報酬月額の基礎となつた報酬月額に比べて、著しく高低を生じた場合において、必要があると認めるときは、その額を報酬月額として、その著しく高低を生じた月の翌月から、標準報酬月額を改定することができる。

厚生年金保険法

本肢は、「育休終了時に固定的賃金の増減があった場合の改定の取り扱い」に関する問題です。

育休終了時に昇給したけど、時短勤務の労働時間現象のため給与減となる…実務上もあるあるな設定です。

このような場合は、どう整理したらよいのでしょうか。

ケースを整理すると…
・育休終了後に昇給…固定的賃金UP
・その後3か月間の賃金は時短によりDOWN
ということになりますね。

ここで、随時改定の基本をおさらいしておくと、随時改定を行うのは…
・固定的賃金と3か月間平均賃金がともにUP
・固定的賃金と3か月間平均賃金がともにDOWN

の場合となり、UP・DOWNが混在しているような場合は、随時改定の対象外となります。

本肢はまさに混在パターンですので、「随時改定に該当しない」となります。

本肢は×です。

厚生年金保険法 令和3年第8問 B

60歳台前半の老齢厚生年金の受給権者が同時に雇用保険法に基づく基本手当を受給することができるとき、当該老齢厚生年金は支給停止されるが、同法第33条第1項に規定されている正当な理由がなく自己の都合によって退職した場合などの離職理由による給付制限により基本手当を支給しないとされる期間を含めて支給停止される。

解答の根拠

法附則第7条の4第3項 / 令第6条の4第1項

根拠条文を確認します。

(繰上げ支給の老齢厚生年金と基本手当等との調整)
第七条の四
 第一項各号のいずれかに該当するに至つた場合において、同項に規定する求職の申込みがあつた月の翌月から同項各号のいずれかに該当するに至つた月までの各月のうち同項の規定により老齢厚生年金の支給が停止された月(以下この項において「年金停止月」という。)の数から前項第一号に規定する厚生労働省令で定めるところにより当該老齢厚生年金の受給権者が基本手当の支給を受けた日とみなされる日の数を三十で除して得た数(一未満の端数が生じたときは、これを一に切り上げるものとする。)を控除して得た数が一以上であるときは、年金停止月のうち、当該控除して得た数に相当する月数分の直近の各月については、第一項の規定による老齢厚生年金の支給停止が行われなかつたものとみなす。

厚生年金保険法附則

(法附則第七条の四第二項第一号に規定する政令で定める日)
第六条の四 法附則第七条の四第二項第一号(同条第六項において準用する場合を含む。)に規定する政令で定める日は、雇用保険法(昭和四十九年法律第百十六号)第二十一条、第三十二条第一項若しくは第二項又は第三十三条第一項の規定により同法の規定による基本手当を支給しないこととされる期間に属する日とする。

厚生年金保険法施行令

本肢は、「特別支給の老齢厚生年金と基本手当の調整」に関する問題です。

まずは、前段の内容を確認します。

前段は、特別支給の老齢厚生年金の受給権者が基本手当を受給する際に、老齢厚生年金が支給停止されてしまう、というルールは正しいです。

しかし、「いつから支給停止になるのか」という起算点については、問題文では「基本手当を受給することができるとき」と受給がポイントとなっていますが、正しくは、上記根拠条文の黄色マーカーにあるとおり「求職の申込をしたとき」となります。

次に、後段についてです。

後段は、その支給停止期間に「基本手当の給付制限期間を含めるか否か」が論点です。

基本的には、併給調整の概念であり、年金も基本手当も両方とも受給させないようにすることが趣旨ですので、基本手当の支給が1日もなかった月に関しては、老齢厚生年金の支給があります。

しかし、雇用保険法第33条第1項の「給付制限期間」は、本来であれば基本手当の支給があるところ、本人の都合により停止となっている期間ということで、いわば「基本手当を受給しているとみなされる期間」となるわけですね。

ということで、後段だけは正しい記載となっています。

本肢は×です。

厚生年金保険法 令和3年第8問 C

63歳の被保険者の死亡により、その配偶者(老齢厚生年金の受給権を有し、65歳に達している者とする。)が遺族厚生年金を受給したときの遺族厚生年金の額は、死亡した被保険者の被保険者期間を基礎として計算した老齢厚生年金の額の4分の3に相当する額と、当該遺族厚生年金の受給権者の有する老齢厚生年金の額に3分の2を乗じて計算した額のうちいずれか多い額とする。

解答の根拠

法60条第1項第2号 / 法附則第17条の2

根拠条文を確認します。

(年金額)
第六十条 遺族厚生年金の額は、次の各号に掲げる区分に応じ、当該各号に定める額とする。ただし、遺族厚生年金の受給権者が当該遺族厚生年金と同一の支給事由に基づく国民年金法による遺族基礎年金の支給を受けるときは、第一号に定める額とする。
 第五十九条第一項に規定する遺族(次号に掲げる遺族を除く。)が遺族厚生年金の受給権を取得したとき 死亡した被保険者又は被保険者であつた者の被保険者期間を基礎として第四十三条第一項の規定の例により計算した額の四分の三に相当する額。ただし、第五十八条第一項第一号から第三号までのいずれかに該当することにより支給される遺族厚生年金については、その額の計算の基礎となる被保険者期間の月数が三百に満たないときは、これを三百として計算した額とする。
 第五十九条第一項に規定する遺族のうち、老齢厚生年金の受給権を有する配偶者が遺族厚生年金の受給権を取得したとき 前号に定める額又は次のイ及びロに掲げる額を合算した額のうちいずれか多い額
 前号に定める額に三分の二を乗じて得た額
 当該遺族厚生年金の受給権者の老齢厚生年金の額(第四十四条第一項の規定により加給年金額が加算された老齢厚生年金にあつては、同項の規定を適用しない額とする。次条第三項及び第六十四条の二において同じ。)に二分の一を乗じて得た額

本問は、「老齢厚生年金の受給権を有している65歳の配偶者の遺族厚生年金の年金額」に関する問題です。

ポイントを整理します。

●老齢厚生年金の受給権を有している65歳の配偶者の遺族厚生年金の年金額

以下のA・Bのうち、多い方の額とする

A:老齢厚生年金の報酬比例部分の4分の3に相当する額

B:老齢厚生年金の報酬比例部分の4分の3に相当する額に3分の2を乗じて計算した額と当該遺族厚生年金の受給権者の老齢厚生年金の額(加給年金額は除く)の2分の1の額を合算した額

惜しい!ですが、問題文は、上記のBの方の黄色マーカー部分「当該遺族厚生年金の受給権者の老齢厚生年金の額(加給年金額は除く)の2分の1の額」の記載が抜けています。

本肢は×です。

厚生年金保険法 令和3年第8問 D

老齢厚生年金における加給年金額の加算の対象となる配偶者が、障害等級1級若しくは2級の障害厚生年金及び障害基礎年金を受給している間、当該加給年金額は支給停止されるが、障害等級3級の障害厚生年金若しくは障害手当金を受給している場合は支給停止されることはない。

解答の根拠

法第46条第6項 / 令第3条の7第1号

根拠条文を確認します。

(支給停止)
第四十六条
 第四十四条第一項の規定によりその額が加算された老齢厚生年金については、同項の規定によりその者について加算が行われている配偶者が、老齢厚生年金(その年金額の計算の基礎となる被保険者期間の月数が二百四十以上であるものに限る。)、障害厚生年金、国民年金法による障害基礎年金その他の年金たる給付のうち、老齢若しくは退職又は障害を支給事由とする給付であつて政令で定めるものの支給を受けることができるときは、その間、同項の規定により当該配偶者について加算する額に相当する部分の支給を停止する

厚生年金保険法

(法第四十六条第六項に規定する政令で定める給付)
第三条の七 法第四十六条第六項(法第五十四条第三項において準用する場合を含む。)に規定する老齢若しくは退職又は障害を支給事由とする給付であつて政令で定めるものは、次のとおりとする。ただし、障害を支給事由とする給付であつてその全額につき支給を停止されているものを除く。
 老齢厚生年金(その年金額の計算の基礎となる被保険者期間の月数が二百四十以上であるもの又は昭和六十年改正法附則第十二条第一項第四号から第七号までのいずれかに該当する者に支給されるもの若しくは被用者年金制度の一元化等を図るための厚生年金保険法等の一部を改正する法律(平成二十四年法律第六十三号。以下「平成二十四年一元化法」という。)附則第三十五条第一項の規定により読み替えられた法の規定により支給されるもの若しくは平成二十四年一元化法附則第五十九条第一項(同条第二項の規定により適用する場合を含む。)の規定の適用を受けることにより支給されるものに限る。)及び障害厚生年金並びに昭和六十年改正法第三条の規定による改正前の法(以下「旧法」という。)による老齢年金及び障害年金

厚生年金保険法施行令

本問は、「老齢厚生年金の加給年金額と障害厚生年金・障害基礎年金との併給調整」に関する問題です。

条文の構成としては、
・(根拠条文上段)法第46条第6項…政令で定める老齢・退職・障害に関する給付を受給している間は加給年金額の支給を停止する
・(根拠条文下段)令第3条の7第1号…政令で定める給付とは、240月以上の老齢厚生年金・障害厚生年金・旧法老齢年金・旧法障害年金
となっています。

ということで、「障害厚生年金」とあり、「障害等級3級の障害厚生年金」も含まれますので、支給停止となります。

なお、もう一つ「障害手当金」についても記載がありますが、こちらは条文上に含まれておりませんので、「障害手当金を受給していても支給停止されない」という部分のみは正しい、となります。

本肢は×です。

厚生年金保険法 令和3年第8問 E

老齢厚生年金に配偶者の加給年金額が加算されるためには、老齢厚生年金の年金額の計算の基礎となる被保険者期間の月数が240以上という要件があるが、当該被保険者期間には、離婚時みなし被保険者期間を含めることはできない。

解答の根拠

法第78条の11

根拠条文を確認します。

(標準報酬が改定され、又は決定された者に対する保険給付の特例)
第七十八条の十一 第七十八条の六第一項及び第二項の規定により標準報酬が改定され、又は決定された者に対する保険給付についてこの法律を適用する場合においては、次の表の上欄に掲げる規定(他の法令において、これらの規定を引用し、準用し、又はその例による場合を含む。)中同表の中欄に掲げる字句は、それぞれ同表の下欄に掲げる字句に読み替えるものとするほか、当該保険給付の額の計算及びその支給停止に関する規定その他政令で定める規定の適用に関し必要な読替えは、政令で定める。
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第四十四条第一項…被保険者期間の月数が二百四十以上
被保険者期間(第七十八条の七に規定する離婚時みなし被保険者期間(以下「離婚時みなし被保険者期間」という。)を除く。以下この項において同じ。)の月数が二百四十以上

本肢は、「加給年金と離婚時みなし被保険者期間との関係」に関する問題です。

加給年金の支給条件として、被保険者期間が240月以上必要ですが、この「被保険者期間」に「離婚時みなし被保険者期間」が含まれるのかどうか、ということが問われています。

加給年金は、本体の老齢厚生年金の補助的な位置づけになります。

したがって、補助的な加給年金の条件にまで、本来の被保険者期間ではない「みなし」の性格を持つ「離婚時みなし被保険者期間」を考慮してあげる必要はないよね、という感じでしょうか。

本肢は○となり、本問の正解となります。

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