社会保険労務士試験【厚生年金保険法】<令和3年第7問>

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厚生年金保険法に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

厚生年金保険法 令和3年第7問 A

3歳に満たない子を養育している被保険者又は被保険者であった者が、当該子を養育することとなった日の属する月から当該子が3歳に達するに至った日の翌日の属する月の前月までの各月において、年金額の計算に使用する平均標準報酬月額の特例の取扱いがあるが、当該特例は、当該特例の申出が行われた日の属する月前の月にあっては、当該特例の申出が行われた日の属する月の前月までの3年間のうちにあるものに限られている。

解答の根拠

法第26条第1項

根拠条文を確認します。

(三歳に満たない子を養育する被保険者等の標準報酬月額の特例)
第二十六条 三歳に満たない子を養育し、又は養育していた被保険者又は被保険者であつた者が、主務省令で定めるところにより実施機関に申出(略)をしたときは、当該子を養育することとなつた日(略)の属する月から次の各号のいずれかに該当するに至つた日の翌日の属する月の前月までの各月のうち、その標準報酬月額が当該子を養育することとなつた日の属する月の前月(略)の標準報酬月額(略)を下回る月(当該申出が行われた日の属する月前の月にあつては、当該申出が行われた日の属する月の前月までの二年間のうちにあるものに限る。)については、従前標準報酬月額を当該下回る月の第四十三条第一項に規定する平均標準報酬額の計算の基礎となる標準報酬月額とみなす。

厚生年金保険法

本肢は、「3歳に満たない子を養育する被保険者等の標準報酬月額の特例」についての問題になります。

幼児を養育する被保険者は、労働時間をセーブせざるを得ない状況である方が多く、お給料が下がりがちです。

そうすると、お給料に連動する標準報酬月額も低くなってしまい、厚生年金で考えると、将来受け取る年金額が減ってしまうことにつながります。

そうなることを防ぐために、当該期間に標準報酬月額の水準をキープする特例措置が被保険者の申し出によって取られます。

さて、ここからが本題ですが、この特例については、上記の根拠条文に引いた黄色マーカー部分の通り、「当該申出が行われた日の属する月前の月にあっては、当該申出が行われた日の属する月の前月までの2年間のうちにあるものに限る」と定められています。

問題文では、「2年間」の部分が「3年間」と変えられているので、誤りとなります。

本肢は×です。

厚生年金保険法 令和3年第7問 B

在職中の老齢厚生年金の支給停止の際に用いる総報酬月額相当額とは、被保険者である日の属する月において、その者の標準報酬月額とその月以前の1年間の標準賞与額の総額を12で除して得た額とを合算して得た額のことをいい、また基本月額とは、老齢厚生年金の額(その者に加給年金額が加算されていればそれを加算した額)を12で除して得た額のことをいう。

解答の根拠

法第46条第1項

根拠条文を確認します。

(支給停止)
第四十六条 老齢厚生年金の受給権者が被保険者(略)である日(略)、国会議員若しくは地方公共団体の議会の議員(略)である日又は七十歳以上の使用される者(略)である日が属する月において、その者の標準報酬月額とその月以前の一年間の標準賞与額の総額を十二で除して得た額とを合算して得た額(略:「総報酬月額相当額」)及び老齢厚生年金の額(第四十四条第一項に規定する加給年金額及び第四十四条の三第四項に規定する加算額を除く。以下この項において同じ。)を十二で除して得た額(略:「基本月額」)との合計額が支給停止調整額を超えるときは、その月の分の当該老齢厚生年金について、総報酬月額相当額と基本月額との合計額から支給停止調整額を控除して得た額の二分の一に相当する額に十二を乗じて得た額(略:「支給停止基準額」)に相当する部分の支給を停止する。ただし、支給停止基準額が老齢厚生年金の額以上であるときは、老齢厚生年金の全部(略)の支給を停止するものとする。

厚生年金保険法

本肢は「在職中の老齢厚生年金の支給停止の際に用いる総報酬月額相当額」の定義に関する問題となります。

まずは、「在職中の老齢厚生年金の支給停止の際に用いる総報酬月額相当額・基本月額」に関する定義を確認しましょう。

●総報酬月額相当額…標準報酬月額+(1年間の標準賞与額÷12)

●基本月額…加給年金額等を除く老齢厚生年金額÷12

上記根拠条文と、上記のポイントそれぞれに黄色マーカーを引いていますが、基本月額算出の際には、「加給年金等」は加算しません。

本肢は×です。

厚生年金保険法 令和3年第7問 C

実施機関は、被保険者が賞与を受けた月において、その月に当該被保険者が受けた賞与額に基づき、これに千円未満の端数を生じたときはこれを切り捨てて、その月における標準賞与額を決定する。この場合において、当該標準賞与額が1つの適用事業所において年間の累計額が150万円(厚生年金保険法第20条第2項の規定による標準報酬月額の等級区分の改定が行われたときは、政令で定める額とする。以下本問において同じ。)を超えるときは、これを150万円とする。

解答の根拠

法第24条の4第1項

根拠条文を確認します。

(標準賞与額の決定)
第二十四条の四 実施機関は、被保険者が賞与を受けた月において、その月に当該被保険者が受けた賞与額に基づき、これに千円未満の端数を生じたときはこれを切り捨てて、その月における標準賞与額を決定する。この場合において、当該標準賞与額が百五十万円(第二十条第二項の規定による標準報酬月額の等級区分の改定が行われたときは、政令で定める額。以下この項において同じ。)を超えるときは、これを百五十万円とする

厚生年金保険法

本肢は「標準賞与額の決定」に関する問題です。

上記根拠条文の黄色マーカー部分にある通り、標準賞与額の上限は150万円となっています。

この上限は、条文中に「その月に」とあることから「1ヶ月あたり」とされています。

したがって、問題文中にある「1つの適用事業所において年間の累計額」については考える必要はありません。

なお、同じ社会保険でも、健康保険の標準賞与額の上限は「年度の累計額573万円」となっていますので、混同しないようにしましょう!

本肢は×です。

厚生年金保険法 令和3年第7問 D

第1号厚生年金被保険者が同時に第2号厚生年金被保険者の資格を有するに至ったときは、その日に、当該第1号厚生年金被保険者の資格を喪失する。

解答の根拠

法第18条の2第2項

根拠条文を確認します。

(異なる被保険者の種別に係る資格の得喪)
第十八条の二
 第一号厚生年金被保険者が同時に第二号厚生年金被保険者、第三号厚生年金被保険者又は第四号厚生年金被保険者の資格を有するに至つたときは、その日に、当該第一号厚生年金被保険者の資格を喪失する。

厚生年金保険法

本問は「異なる被保険者の種別に係る資格の得喪」に関する問題です。

これは条文の通りの問題ですので、この問題を機に覚えておきましょう。

本肢は○となり、本問の正解になります。

厚生年金保険法 令和3年第7問 E

2以上の種別の被保険者であった期間を有する老齢厚生年金の受給権者が死亡した場合における遺族厚生年金(中高齢の寡婦加算額が加算されるものとする。)は、各号の厚生年金被保険者期間に係る被保険者期間ごとに支給するものとし、そのそれぞれの額は、死亡した者に係る2以上の被保険者の種別に係る被保険者であった期間を合算し、1の期間に係る被保険者期間のみを有するものとみなして遺族厚生年金の額の計算に関する規定により計算した額に中高齢の寡婦加算額を加算し、それぞれ1の期間に係る被保険者期間を計算の基礎として計算した額に応じて按分した額とする。

解答の根拠

法第78条の32第2項・第3項

根拠条文を確認します。

(遺族厚生年金の額の特例)
第七十八条の三十二
 二以上の種別の被保険者であつた期間を有する者の遺族に係る遺族厚生年金(第五十八条第一項第四号に該当することにより支給されるものに限る。)については、各号の厚生年金被保険者期間に係る被保険者期間ごとに支給するものとし、そのそれぞれの額は、死亡した者に係る二以上の被保険者の種別に係る被保険者であつた期間を合算し、一の期間に係る被保険者期間のみを有するものとみなして、遺族厚生年金の額の計算に関する規定により計算した額をそれぞれ一の期間に係る被保険者期間を計算の基礎として第六十条第一項第一号の規定の例により計算した額に応じてあん分した額とする。この場合において、必要な読替えその他必要な事項は、政令で定める。
 前項の場合において、第六十二条第一項の規定による加算額は、政令で定めるところにより、各号の厚生年金被保険者期間のうち一の期間に係る被保険者期間を計算の基礎とする遺族厚生年金の額に加算するものとする。

厚生年金保険法

本肢は「2以上の種別の被保険者であった期間を有する老齢厚生年金の受給権者が死亡した場合における遺族厚生年金の中高齢の寡婦加算額」についての問題です。

2種類以上の種別の被保険者であった場合に、中高齢の寡婦加算額はどのように処理されるのでしょうか。

上記根拠条文の3項の方に黄色マーカーを付けましたが、これによると、「各号の厚生年金被保険者期間のうち一の期間に係る被保険者期間を計算の基礎とする遺族厚生年金の額に加算する」とされています。

つまり、このようなケースの中高齢の寡婦加算額は、問題文にあるような「按分」ではなく、各号の厚生年金被保険者期間のうち最も長い1の期間に基づく遺族厚生年金について加算されることになるわけですね。

本肢は×です。

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