健康保険法に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
健康保険法 令和3年第9問 A
家族出産育児一時金は、被保険者の被扶養者である配偶者が出産した場合にのみ支給され、被保険者の被扶養者である子が出産した場合には支給されない。
法第114条
根拠条文を確認します。
(家族出産育児一時金)
健康保険法
第百十四条 被保険者の被扶養者が出産したときは、家族出産育児一時金として、被保険者に対し、第百一条の政令で定める金額を支給する。
これは仮に「配偶者が出産した場合のみ支給される」一時金であるならば、「配偶者出産育児一時金」という名称になるはずですよね。
わざわざ「配偶者」ではなく「家族」としていることからも、被扶養者である「配偶者」のみならず、子が出産した場合でも支給される…となります。
本肢は×です。
健康保険法 令和3年第9問 B
1年以上の継続した被保険者期間(任意継続被保険者であった期間、特例退職被保険者であった期間及び共済組合の組合員であった期間を除く。)を有する者であって、出産予定日から起算して40日前の日に退職した者が、退職日において通常勤務していた場合、退職日の翌日から被保険者として受けることができるはずであった期間、資格喪失後の出産手当金を受けることができる。
法第104条
根拠条文を確認します。
(傷病手当金又は出産手当金の継続給付)
健康保険法
第百四条 被保険者の資格を喪失した日(任意継続被保険者の資格を喪失した者にあっては、その資格を取得した日)の前日まで引き続き一年以上被保険者(任意継続被保険者又は共済組合の組合員である被保険者を除く。)であった者(第百六条において「一年以上被保険者であった者」という。)であって、その資格を喪失した際に傷病手当金又は出産手当金の支給を受けているものは、被保険者として受けることができるはずであった期間、継続して同一の保険者からその給付を受けることができる。
こういった込み入った問題文の場合は、時系列を箇条書きにすると頭の整理になります。
1年以上健康保険の被保険者だった
↓
退職日に通常勤務していた
↓(40日後)➡出産手当金を受給できる?
出産
条文には「その資格を喪失した際に傷病手当金又は出産手当金の支給を受けているものは…継続して同一の保険者からその給付を受けることができる」とありますが、問題文には「退職日に通常勤務をしていた」とあり、産休中で出産手当金を受給している状態ではなかったことがわかります。
ということは、継続給付は受けられないとなりますね。
本肢は×です。
健康保険法 令和3年第9問 C
傷病手当金の額は、これまでの被保険者期間にかかわらず、1日につき、傷病手当金の支給を始める日の属する年度の前年度の9月30日における全被保険者の同月の標準報酬月額を平均した額を標準報酬月額の基礎となる報酬月額とみなしたときの標準報酬月額(被保険者が現に属する保険者等により定められたものに限る。)を平均した額の30分の1に相当する額の3分の2に相当する金額となる。
法第99条第2項
根拠条文を確認します。
(傷病手当金)
健康保険法
第九十九条
2 傷病手当金の額は、一日につき、傷病手当金の支給を始める日の属する月以前の直近の継続した十二月間の各月の標準報酬月額(略)を平均した額の三十分の一に相当する額(略)の三分の二に相当する金額(略)とする。ただし、同日の属する月以前の直近の継続した期間において標準報酬月額が定められている月が十二月に満たない場合にあっては、次の各号に掲げる額のうちいずれか少ない額の三分の二に相当する金額(略)とする。
一 傷病手当金の支給を始める日の属する月以前の直近の継続した各月の標準報酬月額を平均した額の三十分の一に相当する額(略)
二 傷病手当金の支給を始める日の属する年度の前年度の九月三十日における全被保険者の同月の標準報酬月額を平均した額を標準報酬月額の基礎となる報酬月額とみなしたときの標準報酬月額の三十分の一に相当する額(略)
条文は途中を省略してもまだまだ長いですが、ポイントをまとめると以下の通りになります。
【傷病手当金の額】
1.原則…直近12月間の標準報酬月額の平均の30分の1に相当する額の3分の2
2.例外…12月間に満たない場合は、次のいずれかの少ない方の3分の2に相当する金額
①直近の各月の標準報酬月額を平均した額の30分の1に相当する額
②前年度の九月三十日における全被保険者の同月の標準報酬月額を平均した額を標準報酬月額の基礎となる報酬月額とみなしたときの標準報酬月額の30分の1に相当する額
ということで、問題文では上記ポイントの例外②にしか触れていませんが、実際は3パターンの中から適したものを選択して適用することとなります、
本肢は×です。
健康保険法 令和3年第9問 D
傷病手当金の支給要件に係る療養は、一般の被保険者の場合、保険医から療養の給付を受けることを要件としており、自費診療による療養は該当しない。
昭和2年2月26日保発345号
根拠通達を確認します。
健康保険法第四十五条ノ「療養ノ為」トアルハ保険給付トシテ受クル療養(療養費ノ支給ヲ受クルコトヲ含ム)ノ為ヲ謂フモノト解シ来リ候処(健康保険法規疑義事項解釈第一輯健康保険法第四十五条ノ部参照)保険事業実施後ノ実情ニ徴スルニ斯クノ如キ解釈ニ依ル場合ニ於テハ種々不都合ノ点有之故ニ本件ハ之ヲ広義ニ解シ即チ保険給付トシテ受クル療養ノ為ニノミニ限ラス然ラサル療養ノ為ヲモ含ムモノト御了知相成度
法第四十五条ノ「療養ノ為」ノ意義ニ関スル件(昭和2年2月26日保発345号)
また出ました…古すぎてカタカナで書かれている通達…。
頑張って読んでみると…
「療養のため」とは、広義に解釈し、保険の給付を受けるための療養のみならず、それに付随する療養も含む
と読めます。
つまり、「保険医から療養の給付を受けること」だけに限らず、付随する要領なども含め、幅広に考えますよ…となりますね、
本肢は×です。
健康保険法 令和3年第9問 E
被保険者又はその被扶養者において、業務災害(労災保険法第7条第1項第1号に規定する、労働者の業務上の負傷、疾病等をいう。)と疑われる事例で健康保険の被保険者証を使用した場合、保険者は、被保険者又はその被扶養者に対して、まずは労災保険法に基づく保険給付の請求を促し、健康保険法に基づく保険給付を留保することができる。
平成25年8月14日事務連絡
根拠通達を確認します。
【質問6】
被保険者またはその被扶養者において、業務災害・通勤災害と疑われる事例で健康保険の被保険者証を使用し、または現金給付の申請等が行われた場合、健康保険の保険者は、まずは労災保険への請求を促し、健康保険の給付を留保することができるか。(回答)
健康保険法の第1条(目的規定)等の改正に関するQ&Aについて(平成25年8月14日事務連絡)
○ 労災保険法における業務災害については健康保険の給付の対象外であり、また、労災保険法における通勤災害については労災保険からの給付が優先されるため、まずは労災保険の請求を促し、健康保険の給付を留保することができる。
○ ただし、保険者において、健康保険の給付を留保するに当たっては、関係する医療機関等に連絡を行うなど、十分な配慮を行うこと。
健康保険と労災保険は同時に使えないことはご承知のとおりです。
そのため、健康保険が使われた際に、「ん?これ業務災害/通勤災害じゃね」と健康保険の保険者が気づいた場合に、「健康保険に基づいて療養費を請求してきているけど、業務災害/通勤災害と思われるので、もう一度確認してもらって、もしそうなら労災に請求してくれません?」と健康保険の給付をストップ(留保)することができます。
本肢は○となり、本問の正解となります。