社会保険労務士試験【健康保険法】<令和3年第7問>

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健康保険法に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

健康保険法 令和3年第7問 A

健康保険組合は、組合債を起こし、又は起債の方法、利率若しくは償還の方法を変更しようとするときは、厚生労働大臣の認可を受けなければならないが、組合債の金額の変更(減少に係る場合に限る。)又は組合債の利息の定率の変更(低減に係る場合に限る。)をしようとするときは、この限りではない。

解答の根拠

令第22条 / 則第11条

根拠条文を確認します。

(組合債)
第二十二条 健康保険組合は、組合債を起こし、又は起債の方法、利率若しくは償還の方法を変更しようとするときは、厚生労働大臣の認可を受けなければならない。ただし、厚生労働省令で定める軽微な変更をしようとするときは、この限りでない。

健康保険法施行令

(組合債に係る認可を要しない事項)
第十一条 健康保険法施行令(大正十五年勅令第二百四十三号。以下「令」という。)第二十二条第一項ただし書の厚生労働省令で定める事項は、次のとおりとする。
 組合債の金額(減少に係る場合に限る。)
 組合債の利息の定率(低減に係る場合に限る。)

健康保険法施行規則

本肢は健康保険組合の組合債に関する問題です。

個人的には、この問題に触れるまでは「組合債なんてあるんだな…」と思いました。

健康保険組合は法律に基づく組織なので、起債をしたり変更したりするのも厚生労働大臣の認可を受けなければならない、とされていることが、上記根拠条文で引用した施行令に規定があります。

その中で、「厚生労働省令で定める軽微な変更は、その認可が要らない」となっており、具体的にその「厚生労働省令」で定める内容が、施行規則の第11条に規定されています。

それを確認すると、組合債の「金額(減少のみ)」と「利率(低減のみ)」と、料金・利率いずれも減らす場合のみ認可が要らないとされていますね。

ということで、条文にあるとおりの内容になります。

本肢は○です。

健康保険法 令和3年第7問 B

出産育児一時金の受取代理制度は、被保険者が医療機関等を受取代理人として出産育児一時金を事前に申請し、医療機関等が被保険者に対して請求する出産費用の額(当該請求額が出産育児一時金として支給される額を上回るときは当該支給される額)を限度として、医療機関等が被保険者に代わって出産育児一時金を受け取るものである。

解答の根拠

平成23年1月31日保発131002号

根拠通達を確認します。

第1 趣旨
出産育児一時金等(出産育児一時金及び家族出産育児一時金をいう。以下同じ。)の医療機関等(病院、診療所又は助産所をいう。以下同じ。)への直接支払制度(以下単に「直接支払制度」という。)は、被保険者等(健康保険若しくは船員保険の被保険者若しくは被保険者であった者又は国民健康保険の世帯主若しくは組合員をいう。以下同じ。)が医療機関等との間に、出産育児一時金等の支給申請及び受取に係る代理契約を締結の上、出産育児一時金等の額を限度として、医療機関等が被保険者等に代わって出産育児一時金等の支給申請及び受取を直接保険者と行うことにより、被保険者等があらかじめまとまった現金を用意した上で医療機関等の窓口において出産費用を支払う経済的負担の軽減を図るものである。

「出産育児一時金等の医療機関等への直接支払制度」実施要綱(平成23年1月31日保発131002号)

本肢は、出産育児一時金の直接支払制度に関する問題です。

出産費用をいったん全額自分(被保険者)が支払い、あとで給付金を受ける…というのが本来のスキームですが、出産費用も何十万もするので、いったん給付金分を立て替えるのも結構大変…という方も多いです。

であれば、給付金は医療機関に直接支払ってもらって、出産費用と給付金の差額分を自分(被保険者)に請求してもらえば、非常に効率的であり、かつ、一度に出ていくお金も少なくてすみますよね。

そのような制度になります。

ちなみに、私には子どもがいますが、まさにこの方法にて出産費用を清算したので、経験がある方は有利だったかもしれませんね。

本肢は○です。

健康保険法 令和3年第7問 C

指定訪問看護事業者の指定を受けようとする者は、当該指定に係る訪問看護事業の開始の予定年月日等を記載した申請書及び書類を当該申請に係る訪問看護事業を行う事業所の所在地を管轄する地方厚生局長等に提出しなければならないが、開始の予定年月日とは、指定訪問看護の事業の業務開始予定年月日をいう。

解答の根拠

則第74条第1項第3号

根拠条文を確認します。

(指定訪問看護事業者に係る指定の申請)
第七十四条 法第八十八条第一項の指定を受けようとする者は、次に掲げる事項を記載した申請書及び書類を当該申請に係る訪問看護事業を行う事業所の所在地を管轄する地方厚生局長等に提出しなければならない。
(中略)
 当該指定に係る訪問看護事業の開始の予定年月日

健康保険法施行規則

本肢は「指定訪問看護事業者に係る指定の申請」に関する問題です。

指定訪問看護事業者に係る指定の申請を受けようとするものは、根拠条文に記載の通り、
・訪問看護事業の開始の予定年月日を
・事業所の所在地を管轄する地方厚生局長等に提出する

となっています。

本肢は○です。

健康保険法 令和3年第7問 D

被保険者が分娩開始と同時に死亡したが、胎児は娩出された場合、被保険者が死亡したので出産育児一時金は支給されない。

解答の根拠

昭和8年3月14日保規61号

根拠通達を確認します。

被保険者妊娠八箇月ニシテ早産ノ場合分娩開始ト同時ニ心臓麻痺ヲ起シ死亡シタルモ医師ハ其ノ侭胎児ヲ娩出セシメタリトスレハ一面分娩ヲ完了シタルトキハ被保険者既ニ死亡シタルノ故ヲ以テ分娩費ノ支給ヲ為スヘカラサルモノノ如ク思料セラルルト共ニ他面マタ分娩ハ被保険者ノ生存中ニ開始セラレ偶々其ノ分娩ノ完了前ニ被保険者ノ死亡カ競合シタルニ過キス且被保険者ノ死亡後ト雖モ医師ハ其ノ分娩ヲ完了セシメタルノミナラス譬へ被保険者死亡シタリトスルモ其ノ当日ハ依然被保険者トシテノ資格ヲ有スヘク分娩ニ関スル出費ハ生存中分娩完了シタルモノト何等選フ所ナキヲ以テスレハ分娩費ヲ支給シ之カ保護ノ任ヲ尽スコト健康保険ノ本旨トモ思考セラレ其ノ何レニ従フヘキヤ聊カ疑義相生シ候ニ付何分ノ御回示相成度此段及禀伺申候也

被保険者ノ分娩ト死亡トノ競合ノ場合ニ於ケル分娩費ノ支給ニ関スル件(昭和8年3月14日保規61号)

不幸にも、出産後にお母さんが亡くなった場合に、出産育児一時金は支給されるのか否か、という問題です。

昭和8年の通達…とういうことで、カタカナです(汗)

私も頑張って読みましたが、黄色マーカー部分が「分娩に関する出費は、生きている間に分娩を完了したとして、分娩費を支給し保護することが健康保険の本旨である」と読めると思います(間違っていたらすみません)

いくら出産したお母さんが出産後に亡くなったからといっても、上記の根拠通達のように「分娩完了したる」わけなので、その部分について出産育児一時金を支給する必要はあるということですね。

本肢は×となり、本問の正解になります。

健康保険法 令和3年第7問 E

保険者等(被保険者が全国健康保険協会が管掌する健康保険の任意継続被保険者である場合は全国健康保険協会、被保険者が健康保険組合が管掌する健康保険の被保険者である場合は当該健康保険組合、これら以外の場合は厚生労働大臣をいう。)は、被保険者に関する保険料の納入の告知をした後に告知をした保険料額が当該納付義務者の納付すべき保険料額を超えていることを知ったとき、又は納付した被保険者に関する保険料額が当該納付義務者の納付すべき保険料額を超えていることを知ったときは、その超えている部分に関する納入の告知又は納付を、その告知又は納付の日の翌日から6か月以内の期日に納付されるべき保険料について納期を繰り上げてしたものとみなすことができる。

解答の根拠

法第164条第2項

根拠条文を確認します。

(保険料の納付)
第百六十四条
 保険者等(被保険者が協会が管掌する健康保険の任意継続被保険者である場合は協会、被保険者が健康保険組合が管掌する健康保険の被保険者である場合は当該健康保険組合、これら以外の場合は厚生労働大臣をいう。次項において同じ。)は、被保険者に関する保険料の納入の告知をした後に告知をした保険料額が当該納付義務者の納付すべき保険料額を超えていることを知ったとき、又は納付した被保険者に関する保険料額が当該納付義務者の納付すべき保険料額を超えていることを知ったときは、その超えている部分に関する納入の告知又は納付を、その告知又は納付の日の翌日から六月以内の期日に納付されるべき保険料について納期を繰り上げてしたものとみなすことができる。

本肢は、保険料納付に関する問題です。

・「保険料払ってくださいよ」と告知したあとに、「やべ!多く請求しちゃった!」と気づいたとき
・「あれ?本来の保険料より多く納付されているな」と気づいたとき

どうしましょ、というケースです。

その場合は、いちいち返金するのも手間であり、時期が来ればいずれは納付しなければいけない保険料だよね…と整理して、「6か月以内の期日に納付する保険料を繰り上げて払ったことにするね」というルールになっています。

本肢は○です。

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