社会保険労務士試験【健康保険法】<令和3年第3問>

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健康保険法に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

健康保険法 令和3年第3問 A

保険者は、保険給付を行うにつき必要があると認めるときは、医師、歯科医師、薬剤師若しくは手当を行った者又はこれを使用する者に対し、その行った診療、薬剤の支給又は手当に関し、報告若しくは診療録、帳簿書類その他の物件の提示を命じ、又は当該職員に質問させることができる。

解答の根拠

法60条第1項

根拠条文を確認します。

(診療録の提示等)
第六十条 厚生労働大臣は、保険給付を行うにつき必要があると認めるときは、医師、歯科医師、薬剤師若しくは手当を行った者又はこれを使用する者に対し、その行った診療、薬剤の支給又は手当に関し、報告若しくは診療録、帳簿書類その他の物件の提示を命じ、又は当該職員に質問させることができる。

健康保険法

本肢は「診療録の提示」に関する問題です。

保険給付を行うにあたり、申請内容が本当に適切かどうか、確認をする必要があるケースの場合は、法律上は「厚生労働大臣が」もろもろの書類の提示を命じる・職員に質問させることができる権利を持っています。

単純な置き換え問題ですが、問題文は「保険者(協会けんぽ・健康保険組合)」となっておりますので、誤りとなります。

本肢は×です。

健康保険法 令和3年第3問 B

食事療養に要した費用は、保険外併用療養費の支給の対象とはならない。

解答の根拠

法86条第2項

根拠条文を確認します。

(保険外併用療養費)
第八十六条 
 保険外併用療養費の額は、第一号に掲げる額(当該療養に食事療養が含まれるときは当該額及び第二号に掲げる額の合算額、当該療養に生活療養が含まれるときは当該額及び第三号に掲げる額の合算額)とする。
(以下、省略)

健康保険法

本肢は「保険外併用療養費」の取り扱いに関する問題です。

「食事療養」に要した費用が対象となるかどうかがポイントになります。

結論としては、上記根拠条文にあるとおり、「食事療養を~合算額」となりますので、対象とすることになります。

本肢は×です。

健康保険法 令和3年第3問 C

健康保険組合は、適用事業所の事業主、その適用事業所に使用される被保険者及び特例退職被保険者をもって組織する。

解答の根拠

法8条

根拠条文を確認します。

(組織)
第八条 健康保険組合は、適用事業所の事業主、その適用事業所に使用される被保険者及び任意継続被保険者をもって組織する。

健康保険法

本肢は「健康保険組合」がどのような主体で構成されているか、がポイントです。

条文によると、健康保険組合は…
・適用事業所の事業主
・その適用事業所に使用される被保険者
・任意継続被保険者

で組織する、とされていますね。

問題文には、任意継続被保険者の代わりに「特例退職被保険者」と記載されているため、誤りとなります。

ちなみに「特例退職被保険者」とは「定年などで退職して厚生年金(老齢年金)などを受けている人が、後期高齢者医療制度に加入するまでの間になることができる被保険者」とされています。

しかし、この「特例退職被保険者」は健康保険組合によって制度の有無があり、必ずしも全員を対象としている制度ではないことが、任意継続被保険者との違いの一つです。

それもあり、組織を構成するメンバーとはされていないのですね。

被保険者にとっては非常にメリットのある制度ですが、制度がある健康保険組合は非常に少ないようですので、もし自身が加入している健康保険組合に制度があったらラッキーですね!

本肢は×です。

健康保険法 令和3年第3問 D

全国健康保険協会(以下本問において「協会」という。)は、全国健康保険協会管掌健康保険の被保険者に対して被保険者証の交付、返付又は再交付が行われるまでの間、必ず被保険者資格証明書を有効期限を定めて交付しなければならない。また、被保険者資格証明書の交付を受けた被保険者に対して被保険者証が交付されたときは、当該被保険者は直ちに被保険者資格証明書を協会に返納しなければならない。

解答の根拠

則50条の2第1項・3項

根拠条文を確認します。

(被保険者資格証明書)
第五十条の二 厚生労働大臣は、協会が管掌する健康保険の被保険者に対し、この省令の規定による被保険者証の交付、返付又は再交付が行われるまでの間に当該被保険者を使用する事業主又は当該被保険者から求めがあった場合において、当該被保険者又はその被扶養者が療養を受ける必要があると認めたときに限り、被保険者資格証明書を有効期限を定めて交付するものとする。
(略)
 被保険者資格証明書の交付を受けた被保険者は、被保険者証の交付、返付若しくは再交付を受けたとき、又は被保険者資格証明書が有効期限に至ったときは、直ちに、被保険者資格証明書を事業主を経由して厚生労働大臣に返納しなければならない。

健康保険法施行規則

本肢は「被保険者資格証明書」の取り扱いに関する問題です。

よく、会社を転職した際や、子どもが生まれて新たに被扶養者に加える場合などに、健康保険証が発行されるまでには一定の時間がかかります。

私も過去、最大で3週間くらい待ったことがあります。

もし健康保険証が手元に届く間に、通院等健康保険証を使わなければならない状態になった場合にはどうすればよいのでしょうか。

病院としては、いくら本人が「今発行してもらっているところなんです!」と訴えてきたところで、それが本当かどうかは確認することはできません。

そのため、すぐに解決できる方法としては、本人が頑張っていったん「100%(10割)」の医療費を支払い、その際の領収書をしっかりと保管しておいて、その後保険証が発行された際に、領収書とともに保険証を提示して、70%(7割分)を返金してもらう…とするやり方があります。

しかし、場合によっては一時的な立て替えでも100%支払うことは難しいこともあると思います。

そのような場合に、「この人は現在健康保険証を発行中ですよ・しっかりと資格はありますので安心芯して下さい」という証明書を発行してもらい、健康保険証が発行されるまでの代わりとして使えるものがあります。

それが「被保険者資格証明書」です。

この発行条件として、上記の根拠条文によれば…
①当該被保険者を使用する事業主又は当該被保険者から求めがあった場合
②当該被保険者又はその被扶養者が療養を受ける必要があると認めたとき

という2つの条件を満たす必要があります。

問題文には「必ず被保険者資格証明書を有効期限を定めて交付しなければならない」とありますので、この点が誤りになります。

また、後段部分(また…以降)については、上記根拠条文の第3項に記載がある通り、返送先は「協会」ではなく「厚生労働大臣」となっていますので、こちらについても誤りとなります。。

本肢は×です。

健康保険法 令和3年第3問 E

公害健康被害の補償等に関する法律(以下本問において「公害補償法」という。)による療養の給付、障害補償費等の補償給付の支給がされた場合において、同一の事由について当該補償給付に相当する給付を支給すべき健康保険の保険者は、公害補償法により支給された補償給付の価額の限度で、当該補償給付に相当する健康保険による保険給付は行わないとされている。

解答の根拠

法55条第4項

根拠条文を確認します。

(他の法令による保険給付との調整)
第五十五条
第1項~第3項(略)
 被保険者に係る療養の給付又は入院時食事療養費、入院時生活療養費、保険外併用療養費、療養費、訪問看護療養費、移送費、家族療養費、家族訪問看護療養費若しくは家族移送費の支給は、同一の疾病又は負傷について、他の法令の規定により国又は地方公共団体の負担で療養又は療養費の支給を受けたときは、その限度において、行わない。

本肢は「併給調整」に関する問題です。

健康保険法で定める各種給付と同内容の給付が、他の法令に基づいて行われる場合、対象者は二重に給付を受けられるのでしょうか、それとも、併給調整となるのでしょうか。

結論としては、上記根拠条文に「その限度において、行わない」とされていますので、「併給調整される」となります。

ほかの法律でも「併給調整」のテーマがありますが、細かいルールの相違はあるものの、基本的な考え方は「同じ原因・理由に基づく支給は重ねて行わない」ということ。

これだけ覚えておくだけでも、いろいろと応用できると思います。

本肢は○となり、本問の正解になります。

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