総括安全衛生管理者に関する次の記述のうち、正しいものはいくつあるか。
A 一つ
B 二つ
C 三つ
D 四つ
E 五つ
労働安全衛生法 令和3年第9問 A
総括安全衛生管理者は、労働安全衛生法施行令で定める業種の事業場の企業全体における労働者数を基準として、企業全体の安全衛生管理を統括管理するために、その選任が義務づけられている。
法10条1項
根拠法令を確認してみましょう。
(総括安全衛生管理者)
労働安全衛生法 第10条
第十条 事業者は、政令で定める規模の事業場ごとに、厚生労働省令で定めるところにより、総括安全衛生管理者を選任し、その者に安全管理者、衛生管理者又は第二十五条の二第二項の規定により技術的事項を管理する者の指揮をさせるとともに、次の業務を統括管理させなければならない。
(略)
上記のように、総括安全衛生管理者は「事業場ごとに…選任し」とありますが、問題文には「事業場の企業全体/企業全体…統括管理するために」とありますので、正しくありません。
労働基準法や労働安全衛生法は、「企業」ではなく「事業場」単位で法を適用します。
例えば、A企業のb支店・c支店があった場合、労働基準法の「36協定」はA企業として締結・届け出るのではなく、b支店・c支店それぞれで締結し届け出を行う必要があります。
本肢は、実務をご担当されている方であれば「企業全体ではないよな…」と違和感を覚えるのではないでしょうか。
この肢は×となります。
労働安全衛生法 令和3年第9問 B~E
B:総括安全衛生管理者は、労働者の危険又は健康障害を防止するための措置に関することを統括管理する。
C:総括安全衛生管理者は、労働者の安全又は衛生のための教育の実施に関することを統括管理する。
D:総括安全衛生管理者は、健康診断の実施その他健康の保持増進のための措置に関することを統括管理する。
E:総括安全衛生管理者は、労働災害の原因の調査及び再発防止対策に関することを統括管理する。
法10条1項1号・2号・3号・4号
本問の肢B~Eは同じ論点となりますので、解説はまとめます。
肢B~Eは「統括安全衛生責任者の担当業務」について問われています。
それぞれ肢B~Eが下記の1号~4号にマッチしており、いずれも○になります。
(総括安全衛生管理者が統括管理する業務)
労働安全衛生法 第10条1項1号~4号
1. 労働者の危険又は健康障害を防止するための措置に関すること。
2. 労働者の安全又は衛生のための教育の実施に関すること。
3. 健康診断の実施その他健康の保持増進のための措置に関すること。
4. 労働災害の原因の調査及び再発防止対策に関すること。
5. 前各号に掲げるもののほか、労働災害を防止するため必要な業務で、厚生労働省令で定めるもの。
さて、肢B~Eは、上記の条文を押さえていれば判断がつく問題でしたが、どれだけの受験生がこの条文を正確に押さえたうえで解答できたのか、と考えると、そんなに多くないのではないか、と個人的には思います。
もちろん、上記の条文を暗記するのは大変なので、本問の練習を通して「総括安全衛生管理者はこのような業務を担当する」とイメージを持っておけば良いのではないかと思います。
条文で掲げられている業務は、いずれも「安全と衛生を総括的に管理する者」が担当しそうな業務であるとイメージしやすいと思いますので、「こういうことをしているんだな…」と確認しておきましょう。
逆に言えば、この条文を細かく覚えていないと解けないような問題は、多くの受験生も同じように解けない難易度の高い問題ですので、気にしなくても良いと思います。
以上から、正しい肢は「四つ」となり、本問はDが正解となります。