解雇の効力について争いがある場合の基本手当に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
雇用保険法 令和7年第7問 A
離職を認めず解雇の効力について争っているものの基本手当を受給している受給資格者が、事業所との間で雇用関係は継続するがその間賃金は支払わない旨の裁判上の和解が成立したときは、当該賃金を支払わないとされた間に支給を受けた基本手当を返還しないことができる。
雇用保険に関する業務取扱要領 53302
根拠となる要領を確認します。
53302(2)失業の認定及び基本手当等の支給
ル なお、雇用関係は継続するが、その間賃金は支払われない旨の和解が成立したとしても、和解は争いの当事者が相互にその主張を譲歩して争いを解決する契約であり、その内容は、当事者の間で自由な意思によって決定することができるものであるから、受給要件の緩和は認められない。雇用保険に関する業務取扱要領
本肢は「失業の認定及び基本手当等の支給」に関する問題です。
上記の通り「雇用関係は継続するが、その間賃金は支払われない旨の和解が成立したとしても、和解は争いの当事者が相互にその主張を譲歩して争いを解決する契約であり、その内容は、当事者の間で自由な意思によって決定することができるものであるから、受給要件の緩和は認められない」とされています。
ということは、当該期間は失業している状態ではないため、その期間に受給した基本手当は返還しなければなりません。
本肢は×となり、本問の正解となります。
雇用保険法 令和7年第7問 B
基本手当を受給している者に対し賃金支払いの仮処分命令により解雇時に遡及して賃金が支払われた場合、当該者は支給を受けた基本手当を返還しなければならない。
雇用保険に関する業務取扱要領 53302
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53302(2)失業の認定及び基本手当等の支給
ホ 仮処分命令が出され、当該命令に基づき賃金が支払われた場合には、賃金が支払われた期間については、暫定的であっても労働者の生活保障が従前の事業主によりなされ、失業状態は解消したものと考えられるので、当該期間は雇用関係が存在する場合と同様に取り扱いこの間基本手当は支給しない。賃金が解雇時に遡及して支払われた場合であるときは、既に行った資格喪失の確認処分及び基本手当の支給処分をいずれも取り消し、支給した基本手当を返還させるとともに、当該仮処分命令に基づいて支払われた金員は、現実に就労がなされたか否かにかかわりなく賃金として取り扱い、保険料徴収の対象とする。雇用保険に関する業務取扱要領
本肢は「53302(2)失業の認定及び基本手当等の支給」に関する問題です。
基本手当を受給している者に対し賃金支払いの仮処分命令により解雇時に遡及して賃金が支払われた場合には、当該期間は失業状態ではないことになるため、当該者は支給を受けた基本手当を返還しなければなりません。
本肢は○です。
雇用保険法 令和7年第7問 C
解雇の効力について係争中に事業所が廃止となり、解雇無効の判決が確定しても原状回復の実現が不可能と認められる場合には、判決に先立って行われた資格喪失の確認処分は取り消されない。
雇用保険に関する業務取扱要領 53253
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53253(3)解雇を無効又は不当とする命令、判決又は判定があった場合の取扱い
解雇の効力等について係争中に、事業所を廃止するか又は事実上廃止と同様の状態に至ったため、たとえ解雇無効(原状回復を含む。)の命令、判決又は判定が確定しても、原状回復の実現が不可能と認められる場合には、この状態が継続する限り、資格喪失の確認処分を取り消す必要はない。雇用保険に関する業務取扱要領
本肢は「解雇を無効又は不当とする命令、判決又は判定があった場合の取扱い」に関する問題です。
「解雇の効力等について係争中に、事業所を廃止するか又は事実上廃止と同様の状態に至ったため、たとえ解雇無効(原状回復を含む。)の命令、判決又は判定が確定しても、原状回復の実現が不可能と認められる場合には、この状態が継続する限り、資格喪失の確認処分を取り消す必要はない」とされています。
本肢は○です。
雇用保険法 令和7年第7問 D
X社を解雇された基本手当の受給資格者が、X社における解雇の効力について係争中に適用事業所であるY社に就職し一般被保険者の資格を取得した。その後、X社に係る解雇無効の判決が確定し、Y社就職中の収入を控除してX社の賃金が支払われた。この場合、Y社就職中の収入の額がX社から支払われた賃金の額以上である期間については、当該者の希望により、いずれか一方の事業主との雇用関係について被保険者資格を取得する。
雇用保険に関する業務取扱要領 53255
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53255(5)解雇を無効(原状回復を含む。)とする命令、判決、判定等により2の雇用関係が生じた場合の取扱い
解雇の効力等について係争中に、労働者が他に就職した場合に、就職先の事業主が適用事業主であるときは、被保険者資格を取得させることは当然であるが、その後解雇無効(原状回復を含む。)の命令、判決又は判定が確定するか又は確定と同様の状態になった場合、又は仮処分命令若しくは労働委員会の救済命令に基づき賃金を支払われた場合における被保険者資格の取扱いについては、原則として20352のイによることとするが、就職中の収入を控除して賃金が支払われたことにより、就職中の収入の額が当該賃金の額以上である期間については、労働者の希望により、いずれか一方の事業主との雇用関係についての被保険者資格を認めることとする。雇用保険に関する業務取扱要領
本肢は「解雇を無効(原状回復を含む。)とする命令、判決、判定等により2の雇用関係が生じた場合の取扱い」に関する問題です。
問題文の場合の取り扱いは「就職中の収入を控除して賃金が支払われたことにより、就職中の収入の額が当該賃金の額以上である期間については、労働者の希望により、いずれか一方の事業主との雇用関係についての被保険者資格を認めることとする」こととされています。
本肢は×です。
雇用保険法 令和7年第7問 E
労働者が事業主の行った解雇について労働組合法第7条に違反するから無効であると主張し、当該労働者が加入する労働組合が労働委員会に対して不当労働行為の申立てをしその効力を争っている場合においては、救済命令が確定するまでは、他の要件を満たす限り当該労働者は基本手当の支給を受けることができる。
雇用保険に関する業務取扱要領 53201
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53201-53250 1 概要
労働者が事業主の行った解雇を労働組合法第7条若しくは労働基準法第 3条、第19条、第 20 条違反又は労働協約等に違反するからその解雇は無効であると主張し、労働委員会、裁判所又は労働基準監督機関に申立て、提訴又は地位保全若しくは賃金支払いの仮処分(以下「仮処分」という。)の申請又は申告をし、その効力を争っている場合においては、解雇事実の判定はきわめて困難であり、一方、労働者を保護する必要が大であるので、解雇の効力等について争いがある場合における措置として、一定の場合に限って資格喪失の確認を行い、これに基づき基本手当等を支給することとするものである。雇用保険に関する業務取扱要領
本肢は「解雇の効力等について争いがある場合の措置」に関する問題です。
問題文の場合は、「労働者を保護する必要が大である」という理由から、「救済命令が確定するまでは、他の要件を満たす限り当該労働者は基本手当の支給を受けることができる」こととされています。
本肢は○です。

