社会保険労務士試験【労働基準法】<令和7年第4問>

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労働基準法に定める賃金等に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

労働基準法 令和7年第4問 A

使用者は、当該事業場の労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がないときは労働者の過半数を代表する者との書面による協定がある場合においては、賃金を前借金その他労働することを条件とする前貸の債権と相殺することができる。

解答の根拠

法第17条

根拠条文を確認します。

(前借金相殺の禁止)
第十七条 使用者は、前借金その他労働することを条件とする前貸の債権と賃金を相殺してはならない。

労働基準法

本肢は「前借金相殺の禁止」に関する問題です。

前借金相殺は上記根拠条文で禁止されていますが、労使協定をもってしてもこのルールを除外することはできません。

本肢は×です。

労働基準法 令和7年第4問 B

労働基準法第24条第1項は、使用者の意思で労働者本人以外の者に賃金を支払うことを禁止するものであるから、労働者の意思で第三者に賃金受領権限を与えようとする委任、代理等の法律行為は無効となるものではない。

解答の根拠

昭和63年3月14日基発150号

根拠通達を確認します。

労働者の親権者その他の法定代理人に支払うこと、または労働者の委任を受けた任意代理人に支払うことは、いずれも法24条違反となり、労働者が第三者に賃金受領権限を与えようとする委任、代理などの法律行為は無効である。

昭和63年3月14日基発150号

本肢は「直接払いの原則」に関する問題です。

上記根拠通達の通り、いくら労働者の意思で代理人に賃金受領権限を与えたとしても無効となります。

とにかく本人に確実に賃金が支払われることを最優先にするルールと言えますね。

本肢は×です。

労働基準法 令和7年第4問 C

労働協約によりストライキ中の賃金を支払わないことを定めているX社では日給月給制を採用しており、毎月15日に当月の賃金を前払いする(例えば、8月15日に8月1日から同月末日までの分の賃金を支払う)ことになっているが、所定労働日である8月21日から25日まで5日間ストライキが行われた場合、当該ストライキに参加した労働者の賃金について、使用者が9月15日の賃金支払いにおいて前月のストライキの5日間分を控除して支払うことは、賃金全額払原則に違反する。

解答の根拠

昭和23年9月14日基発1357号

根拠通達を確認します。

前月分の過払い賃金を翌月で清算するのは賃金計算に関わるものであり、労働基準法第24条の違反ではない。

昭和23年9月14日基発1357号

本肢は「全額払いの原則」に関する問題です。

多少支払う時期がずれたとしても、調整すること自体は全額払いの原則に反しないこととなります。

本肢は×です。

労働基準法 令和7年第4問 D

労働者が労働基準法第25条に従い賃金の非常時払を請求する場合には、使用者は、特約のない限り、いまだ労務の提供のない期間に対する賃金も含めて支払期日前に支払う義務を負う。

解答の根拠

法第25条

根拠条文を確認します。

(非常時払)
第二十五条 使用者は、労働者が出産、疾病、災害その他厚生労働省令で定める非常の場合の費用に充てるために請求する場合においては、支払期日前であつても、既往の労働に対する賃金を支払わなければならない

労働基準法

本肢は「非常時払」に関する問題です。

上記根拠条文にて明確に「既往の労働に対する賃金」とありますので、「いまだ労務の提供のない期間に対する賃金」まで支払う必要はありません。

本肢は×です。

労働基準法 令和7年第4問 E

使用者の責に帰すべき事由による休業期間中であっても、労働協約、就業規則又は労働契約により休日と定められている日については、労働基準法第26条に定める休業手当を支払う義務は生じない。

解答の根拠

昭和24年3月22日基収4077号

根拠通達を確認します。

(問)
 使用者が法第26条によって休業手当を支払わなければならないのは、使用者の責に帰すべき事由によって休業した日から休業した最終の日までであり、その期間における法第35条の休日及び就業規則又は労働協約によって定められた法第35条によらざる休日を含むものと解せられるが如何。
(答)
 法第26条の休業手当は、民法第536条第2項によって全額請求し得る賃金の中、平均賃金の100分の60以上を保障せんとする趣旨のものであるから、労働協約、就業規則又は労働契約により休日と定められている日については、休業手当を支給する義務は生じない。

昭和24年3月22日基収4077号

本肢は「休業手当」に関する問題です。

上記根拠通達にあるとおり、「労働協約、就業規則又は労働契約により休日と定められている日については、休業手当を支給する義務は生じない」とされている。

もともと労働の義務がない休日については、もちろん保障すべき賃金もない、と考えます。

本肢は○となり、本問の正解となります。

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