労働基準法第12条(以下本問において「本条」という。)に定める平均賃金に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
労働基準法 令和7年第問 A
令和7年1月1日から、賃金が日給1万円、毎月20日締切、当月25日支払いの条件で雇われている労働者について、同年7月15日に平均賃金を算定すべき事由が発生した。当該労働者に支払われていた賃金は、1月支払分から6月支払分までいずれも労働日数は月10日で支払額は各月10万円であり、本条第3項各号に掲げられている業務上負傷し療養のために休業した期間等の控除期間がなかった。この場合の当該労働者に係る平均賃金の額は6,000円である。
法第12条第1項・第2項
根拠条文を確認します。
第十二条 この法律で平均賃金とは、これを算定すべき事由の発生した日以前三箇月間にその労働者に対し支払われた賃金の総額を、その期間の総日数で除した金額をいう。ただし、その金額は、次の各号の一によつて計算した金額を下つてはならない。
一 賃金が、労働した日若しくは時間によつて算定され、又は出来高払制その他の請負制によつて定められた場合においては、賃金の総額をその期間中に労働した日数で除した金額の百分の六十
二 賃金の一部が、月、週その他一定の期間によつて定められた場合においては、その部分の総額をその期間の総日数で除した金額と前号の金額の合算額
② 前項の期間は、賃金締切日がある場合においては、直前の賃金締切日から起算する。労働基準法
本肢は「平均賃金」に関する問題です。
平均賃金の計算方法は、原則(第12条第1項)と例外(最低保証:第12条第1項第1号)と2パターンあります。
それぞれ計算して、労働者にとって有利な(高い)方を採用します。
問題文のケースをそれぞれ計算してみましょう。
期間については、平均賃金を算定すべき事由が発生した日(7月15日)の直前の賃金締切日(6月20日)を基準に考えますので、下記の通りとなります。
①3月21日~4月20日(暦日31日・労働日数10日)
②4月21日~5月20日(暦日30日・労働日数10日)
③5月21日~6月20日(暦日31日・労働日数10日)
【原則の計算】
(10万円×3ヶ月分) ÷ 92日 = 3,260円86銭 (小数点第3位(1銭)未満切捨て)
【例外の計算】
(10万円×3ヶ月分) ÷ (10日×3ヶ月分)× 60% = 6,000円
(10万円+10万円+10万円)/(10日+10日+10日)×60/100
= 30万円/30日 ×60/100
= 6,000円
今回のケースでは例外の方が高いため、問題文にあるとおり「6,000円」が採用されることになります。
本肢は○です。
労働基準法 令和7年第問 B
労働基準法第20条に基づく解雇予告手当を算定する際の平均賃金算定事由発生日は、「労働者に解雇の通告をした日」であり、その後、当該労働者の同意を得て解雇日を変更した場合においても、当初の解雇を通告した日とするものとされている。
昭和39年6月12日基収2316号
根拠通達を確認します。
労働基準法第20条の規定により、解雇の予告に代えて支払われる平均賃金を算定する場合における算定すべき事由の発生した日は、労働者に解雇の通告をした日であり、解雇の予告をした後において、労働者の同意を得て解雇日を変更した場合においても、同様である。
昭和39年6月12日基収2316号
本肢は「平均賃金」に関する問題です。
本肢は、上記根拠通達どおりの問題となります。
当初予告した解雇日と、労働者の同意を経て変更した解雇日、どちらが優先されるかについては、前者となります。
本肢は○です。
労働基準法 令和7年第問 C
所定労働時間が二暦日にわたる勤務を行う労働者(一昼夜交替勤務のごとく明らかに2日の労働と解することが適当な場合を除く。)について、当該勤務の二暦日目に平均賃金を算定すべき事由が発生した場合においては、当該勤務の始業時刻の属する日に当該事由が発生したものとして取り扱うこととされている。
昭和45年5月14日基発374号
根拠通達を確認します。
所定労働時間が二暦日にわたる勤務を行なう労働者については、「算定事由発生日」及び「労働した日数」の取り扱いにおいて、始業時刻の属する日に事由が発生したもの及びその日の労働として取り扱う。
昭和45年5月14日基発374号
本肢は「平均賃金」に関する問題です。
ある日の労働が、深夜12時を過ぎて日付としては翌日に突入した場合、平均賃金はどのように計算するのでしょうか。
この場合は、上記根拠通達にあるとおり「始業時刻の属する日に事由が発生したものとして取り扱うこと」とされています。
ちなみに、問題文のかっこ書きで除外されている「一昼夜交替勤務のごとく明らかに2日の労働と解することが適当な場合」には、「原則通り、当該1勤務を2日の労働として計算すること」とされ、しっかりと分けることとなります。
本肢は○です。
労働基準法 令和7年第問 D
雇入れ後3か月未満の労働者について平均賃金を算定すべき事由が発生した場合には、算定事由発生日前に賃金締切日があるか否かにかかわらず、雇入れ後の期間とその期間中の賃金の総額で算定することとされている。
昭和23年4月22日基収1065号
根拠通達を確認します。
雇入後三カ月に満たない者の平均賃金の算定にあたり賃金締切日があるときはこの場合においても、なおその直前の賃金締切日から起算するか。
見解の通り。
昭和23年4月22日基収1065号
本肢は「平均賃金」に関する問題です。
雇入後3箇月に満たない者については、本条第6項の規定により、平均賃金の計算期間は「当該期間は、雇入後の期間とする」とされています。
では、ただでさえ短い上記のようなケースの場合に、その雇入後の期間中に「賃金締切日」があった場合は、どうするのか。
上記根拠通達により「賃金締切日から起算する」とされています。
算定期間が短くなったとしても、賃金締切日のようにしっかりと計算が完了されている期間を採用することを優先することとなります。
本肢は×となり、本問の正解となります。
労働基準法 令和7年第問 E
本条第3項第1号から第4号までに掲げられている業務上負傷し療養のために休業した期間等の控除期間が、平均賃金を算定すべき事由の発生した日以前3か月以上にわたる場合の平均賃金は、都道府県労働局長がこれを定めることとされている。
法第12条第3項 / 則第4条
根拠条文を確認します。
第十二条
③ 前二項に規定する期間中に、次の各号のいずれかに該当する期間がある場合においては、その日数及びその期間中の賃金は、前二項の期間及び賃金の総額から控除する。
一 業務上負傷し、又は疾病にかかり療養のために休業した期間
二 産前産後の女性が第六十五条の規定によつて休業した期間
三 使用者の責めに帰すべき事由によつて休業した期間
四 育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律(平成三年法律第七十六号)第二条第一号に規定する育児休業又は同条第二号に規定する介護休業(同法第六十一条第三項に規定する行政執行法人介護休業及び同法第六十一条の二第三項に規定する介護をするための休業を含む。第三十九条第十項において同じ。)をした期間
五 試みの使用期間労働基準法
第四条 法第十二条第三項第一号から第四号までの期間が平均賃金を算定すべき事由の発生した日以前三箇月以上にわたる場合又は雇入れの日に平均賃金を算定すべき事由の発生した場合の平均賃金は、都道府県労働局長の定めるところによる。
労働基準法施行規則
本肢は「平均賃金」に関する問題です。
問題文にある「業務上負傷し療養のために休業した期間等」の控除期間が、平均賃金を算定すべき事由の発生した日以前3か月以上にわたる場合の平均賃金については、休業期間のため賃金が支払われていないのでどのようにしましょう…となってしまいます。
計算のしようがないため、施行規則により「都道府県労働局長の定めによる」とされています。
本肢は○です。

