労災保険法第7条に規定する通勤の途中で合理的経路を逸脱・中断した場合でも、当該逸脱・中断が日常生活上必要な行為であって、厚生労働省令で定めるものをやむを得ない事由により最小限度の範囲で行う場合には、当該逸脱・中断の後、合理的な経路に復した後は、同条の通勤と認められることとされている。この日常生活上必要な行為として、同法施行規則第8条が定めるものに含まれない行為はどれか。
A 経路の近くにある公衆トイレを使用する行為
B 帰途で惣菜等を購入する行為
C はり師による施術を受ける行為
D 職業能力開発校で職業訓練を受ける行為
E 要介護状態にある兄弟姉妹の介護を継続的に又は反復して行う行為
則第8条 / 通勤災害の取扱いについて(昭和四八年一二月一日)
根拠条文および通達を確認します。
(日常生活上必要な行為)
第八条 法第七条第三項の厚生労働省令で定める行為は、次のとおりとする。
一 日用品の購入その他これに準ずる行為
二 職業訓練、学校教育法第一条に規定する学校において行われる教育その他これらに準ずる教育訓練であつて職業能力の開発向上に資するものを受ける行為
三 選挙権の行使その他これに準ずる行為
四 病院又は診療所において診察又は治療を受けることその他これに準ずる行為
五 要介護状態にある配偶者、子、父母、孫、祖父母及び兄弟姉妹並びに配偶者の父母の介護(継続的に又は反復して行われるものに限る。)労働者災害補償保険法施行規則
第九 新法の適用
7 「逸脱」、「中断」及び「日用品の購入その他これに準ずる日常生活上必要な行為をやむを得ない事由により行うための最少限度のもの」の意義(1) 「逸脱」とは、通勤の途中において就業又は通勤とは関係のない目的で合理的な経路をそれることをいい、「中断」とは、通勤の経路上において通勤とは関係のない行為を行うことをいう。逸脱、中断の具体例をあげれば、通勤の途中で麻雀を行う場合、映画館に入る場合、バー、キャバレー等で飲酒する場合、デートのため長時間にわたつてベンチで話しこんだり、経路からはずれる場合がこれに該当する。
しかし、労働者が通勤の途中において、経路の近くにある公衆便所を使用する場合、帰途に経路の近くにある公園で短時間休息する場合や、経路上の店でタバコ、雑誌等を購入する場合、駅構内でジュースの立飲みをする場合、経路上の店で渇をいやすため極く短時間、お茶、ビール等を飲む場合、経路上で商売している大道の手相見、人相見に立寄つて極く短時間手相や人相をみてもらう場合等のように労働者が通常通勤の途中で行うようなささいな行為を行う場合には、逸脱、中断として取扱う必要はない。ただし、飲み屋やビヤホール等において、長時間にわたつて腰をおちつけるに至った場合や、経路からはずれ又は門戸をかまえた観相家のところで、長時間にわたり、手相、人相等をみてもらう場合等は、逸脱、中断に該当する。(2) 通勤の途中において、労働者が逸脱、中断をする場合には、その後は就業に関してする行為というよりも、むしろ、逸脱又は中断の目的に関してする行為と考えられるので、その後は一切通勤とは認められないのであるが、これについては、通勤の実態を考慮して法律で例外が設けられ、通勤途中で日用品の購入その他日常生活上必要な行為をやむを得ない事由により最少限度の範囲で行う場合には、当該逸脱又は中断の間を除き、合理的な経路に復した後は通勤と認められることとされている。「日用品の購入その他これに準ずる日常生活上必要な行為」の具体例としては、帰途で惣菜等を購入する場合、独身労働者が食堂に食事に立ち寄る場合、クリーニング店に立ち寄る場合、通勤の途次に病院、診療所で治療を受ける場合、選挙の投票に寄る場合等がこれに該当する。
なお、「やむを得ない事由により行うため」とは、日常生活の必要から通勤の途中で行う必要のあることをいい、「最少限度のもの」とは、当該逸脱又は中断の原因となった行為の目的達成のために必要とする最少限度の時間、距離等をいうものである。通勤災害の取扱いについて(昭和四八年一二月一日)
本肢は、「通勤災害」に関する問題です。
まず、労災法施行規則第8条に
D:職業能力開発校で職業訓練を受ける行為
E:要介護状態にある兄弟姉妹の介護を継続的に又は反復して行う行為
の2つが「日常生活上必要な行為」として定められています。
次に、通達に
B:帰途で惣菜等を購入する行為
C:はり師による施術を受ける行為(病院、診療所で治療を受ける場合)
の2つが「日常生活上必要な行為」として定められています。
最後に残ったのが「A:経路の近くにある公衆トイレを使用する行為」となり、こちらが正解となります。
「経路の近くにある公衆トイレを使用する行為」は、「労働者が通常通勤の途中で行うようなささいな行為」とされ、そもそも「逸脱、中断として取扱う必要はない」とされています。
本肢の正解は「A」となります。