長時間労働に対する医師による面接指導に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
労働安全衛生法 令和6年第9問 A
労働安全衛生法第66条の8第1項において、事業者が医師による面接指導を行わなければならないとされている労働者の要件は、休憩時間を除き1週間当たり40時間を超えて労働させた場合におけるその超えた時間が一月当たり80時間を超え、かつ、疲労の蓄積が認められる者(所定事由に該当する労働者であって面接指導を受ける必要がないと医師が認めたものを除く。)である。
則第52条の2第1項
根拠条文を確認します。
(面接指導の対象となる労働者の要件等)
第五十二条の二 法第六十六条の八第一項の厚生労働省令で定める要件は、休憩時間を除き一週間当たり四十時間を超えて労働させた場合におけるその超えた時間が一月当たり八十時間を超え、かつ、疲労の蓄積が認められる者であることとする。ただし、次項の期日前一月以内に法第六十六条の八第一項又は第六十六条の八の二第一項に規定する面接指導を受けた労働者その他これに類する労働者であつて法第六十六条の八第一項に規定する面接指導(以下この節において「法第六十六条の八の面接指導」という。)を受ける必要がないと医師が認めたものを除く。労働安全衛生法施行規則
本肢は、「面接指導の対象となる労働者の要件」に関する問題です。
本肢は上記根拠条文のとおりです。
(原則)休憩時間を除き1週間当たり40時間を超えて労働させた場合におけるその超えた時間が1月当たり80時間を超え、かつ、疲労の蓄積が認められる者
(例外)所定事由に該当する労働者であって面接指導を受ける必要がないと医師が認めたものを除く。
本肢は○です。
労働安全衛生法 令和6年第9問 B
労働安全衛生法第66条の8の2において、新たな技術、商品又は役務の研究開発に係る業務に従事する者(労働基準法第41条各号に掲げる者及び労働安全衛生法第66条の8の4第1項に規定する者を除く。)に対して事業者が医師による面接指導を行わなければならないとされている労働時間に関する要件は、休憩時間を除き1週間当たり40時間を超えて労働させた場合におけるその超えた時間が一月当たり100時間を超える者とされている。
則第52条の7の2第1項
根拠条文を確認します。
(法第六十六条の八の二第一項の厚生労働省令で定める時間等)
第五十二条の七の二 法第六十六条の八の二第一項の厚生労働省令で定める時間は、休憩時間を除き一週間当たり四十時間を超えて労働させた場合におけるその超えた時間について、一月当たり百時間とする。労働安全衛生法施行規則
本肢は、「新たな技術、商品又は役務の研究開発に係る業務に従事する者に対する面接指導」に関する問題です。
本肢は上記根拠条文のとおりです。
(原則)休憩時間を除き一週間当たり四十時間を超えて労働させた場合におけるその超えた時間について、一月当たり百時間を超えた場合
(例外)労働基準法41条各号に掲げる者及び労働安全衛生法66条の8の4第1項に規定する者を除く。
本肢は○です。
労働安全衛生法 令和6年第9問 C
事業者は、労働安全衛生法の規定による医師による面接指導を実施するため、厚生労働省令で定める方法により労働者の労働時間の状況を把握しなければならないとされているが、この労働者には、労働基準法第41条第2号に規定する監督若しくは管理の地位にある者又は機密の事務を取り扱う者も含まれる。
働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律による改正後の労働安全衛生法及びじん肺法関係の解釈等について(平成30年12月28日基発1228第16号)
根拠条文を確認します。
問10 労働時間の状況を把握しなければならない労働者には、裁量労働制の適用者や管理監督者も含まれるか。
答10 労働時間の状況の把握は、労働者の健康確保措置を適切に実施するためのものであり、その対象となる労働者は、新労基法第41条の2第1項に規定する業務に従事する労働者(高度プロフェッショナル制度の適用者)を除き、①研究開発業務従事者、②事業場外労働のみなし労働時間制の適用者、③裁量労働制の適用者、④管理監督者等、⑤労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律(昭和60年法律第88号)第2条第2号に規定する労働者(派遣労働者)、⑥短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律(平成5年法律第76 号)第2条に規定する労働者(短時間労働者)、⑦労働契約法(平成19年法律第128号)第17条第1項に規定する労働契約を締結した労働者(有期契約労働者)を含めた全ての労働者である。
働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律による改正後の労働安全衛生法及びじん肺法関係の解釈等について(平成30年12月28日基発1228第16号)
本肢は、「労働時間の把握」に関する問題です。
事業者には、労働者の労働時間の把握が義務付けられています。
この把握義務の対象には、労働基準法第41条によって労働時間のルールが一部適用除外とされている、いわゆる「管理監督者等」も含まれます。
本肢は○です。
労働安全衛生法 令和6年第9問 D
労働安全衛生法第66条の8及び同法第66条の8の2により行われる医師による面接指導に要する費用については、いずれも事業者が負担すべきものであるとされているが、当該面接指導に要した時間に係る賃金の支払については、当然には事業者の負担すべきものではなく、事業者が支払うことが望ましいとされている。
労働安全衛生法等の一部を改正する法律(労働安全衛生法関係)等の施行について(平成18年2月24日基発0224003号)
「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律による改正後の労働安全衛生法及びじん肺法関係の解釈等について」の一部改正について(平成31年3月29日基発0329第2号)
根拠通達を確認します。
7 面接指導等(第66条の8、第66条の9等関係)(1) 面接指導(第66条の8関係)
(エ)面接指導を受けるのに要した時間に係る賃金の支払いについては、当然には事業者の負担すべきものではなく、労使協議して定めるべきものであるが、労働者の健康の確保は、事業の円滑な運営の不可欠な条件であることを考えると、面接指導を受けるのに要した時間の賃金を事業者が支払うことが望ましいこと。労働安全衛生法等の一部を改正する法律(労働安全衛生法関係)等の施行について(平成18年2月24日基発0224003号)
問8 時間外・休日労働時間が1月当たり100時間を超えた研究開発業務従事者に対する面接指導について、面接指導の費用を事業者が負担する必要があるか。また、面接指導を受けるのに要した時間に係る賃金を事業者が支払う必要があるか。
答8 時間外・休日労働時間が1月当たり100時間を超えた研究開発業務従事者に対する面接指導について、面接指導の費用は、新安衛法において、事業者に当該面接指導の実施の義務を課している以上、当然、事業者が負担する必要がある。 また、当該面接指導については、事業者がその事業の遂行に当たり、当然実施されなければならない性格のものであり、所定労働時間内に行われる必要がある。 さらに、当該面接指導を受けるのに要した時間に係る賃金の支払いについては、面接指導の実施に要する時間は労働時間と解されるので、当該面接指導が時間外に行われた場合には、当然、割増賃金を支払う必要がある。
「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律による改正後の労働安全衛生法及びじん肺法関係の解釈等について」の一部改正について(平成31年3月29日基発0329第2号)
本肢は、「面接指導に関する費用・賃金」に関する問題です。
本肢では「第66条の8」と「第66条の8の2」という2つの論点が含まれています。
前者の第66条の8
前者の「第66条の8」は一般的な面接指導で、上記根拠条文のとおり、「面接指導を受けるのに要した時間の賃金を事業者が支払うことが望ましい」とされています。
一方、後者の「第66条の8の2」は「研究開発業務従事者」に関する面接指導となり、上記根拠条文のとおり、「当該面接指導を受けるのに要した時間に係る賃金の支払いについては、面接指導の実施に要する時間は労働時間と解されるので、当該面接指導が時間外に行われた場合には、当然、割増賃金を支払う必要がある。」とされています。
後者の方は「望ましい」ではなく、義務的な定めとなっていますので、両者の対応には違いがあります。
本肢は×となり、本問の正解となります。
労働安全衛生法 令和6年第9問 E
派遣労働者に対する医師による面接指導については、派遣元事業主に実施義務が課せられている。
労働安全衛生法等の一部を改正する法律(労働安全衛生法関係)等の施行について(平成18年2月24日基発0224003号)
根拠通達を確認します。
7 面接指導等(第66条の8、第66条の9等関係)(1) 面接指導(第66条の8関係)
(オ)派遣労働者に対する面接指導については、派遣元事業主に実施義務が課せられるものであること。労働安全衛生法等の一部を改正する法律(労働安全衛生法関係)等の施行について(平成18年2月24日基発0224003号)
本肢は、「派遣労働者の面接指導等」に関する問題です。
派遣労働者に対する面接指導については、上記根拠条文のとおり、「派遣元事業主に実施義務が課せられる」となります。
本肢は○です。