特別支給の老齢厚生年金に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
厚生年金保険法 令和5年第6問 A
第2号厚生年金被保険者期間のみを有する昭和36年1月1日生まれの女性で、特別支給の老齢厚生年金の受給資格要件を満たす場合、報酬比例部分の支給開始年齢は64歳である。
法附則第8条の2第1項
根拠条文を確認します。
(特例による老齢厚生年金の支給開始年齢の特例)
第八条の二 男子又は女子(第二号厚生年金被保険者であり、若しくは第二号厚生年金被保険者期間を有する者、第三号厚生年金被保険者であり、若しくは第三号厚生年金被保険者期間を有する者又は第四号厚生年金被保険者であり、若しくは第四号厚生年金被保険者期間を有する者に限る。)であつて次の表の上欄に掲げる者(第三項及び第四項に規定する者を除く。)について前条の規定を適用する場合においては、同条第一号中「六十歳」とあるのは、それぞれ同表の下欄に掲げる字句に読み替えるものとする。
昭和二十八年四月二日から昭和三十年四月一日までの間に生まれた者
六十一歳
昭和三十年四月二日から昭和三十二年四月一日までの間に生まれた者
六十二歳
昭和三十二年四月二日から昭和三十四年四月一日までの間に生まれた者
六十三歳
昭和三十四年四月二日から昭和三十六年四月一日までの間に生まれた者
六十四歳厚生年金保険法附則
本肢は、「特別支給の老齢厚生年金・支給開始年齢」に関する問題です。
女性の特別支給の老齢厚生年金の支給開始年齢は、問題文にある「第2号被保険者期間を有する」場合は、上記の根拠条文の通りとなり、問題文にあるとおり64歳で正しいです。
本肢は○となり、本問の正解となります。
厚生年金保険法 令和5年第6問 B
特別支給の老齢厚生年金の受給資格要件の1つは、1年以上の被保険者期間を有することであるが、この被保険者期間には、離婚時みなし被保険者期間を含めることができる。
法附則第17条の10
根拠条文を確認します。
(標準報酬が改定され、又は決定された者に対する保険給付の支給要件等の特例)
第十七条の十 第七十八条の六第一項及び第二項の規定により標準報酬が改定され、又は決定された者に対する保険給付について、附則第八条第二号、第九条の二第二項第一号、第九条の三第一項、第二十八条の二第一項、第二十八条の三第一項、第二十八条の四第一項及び第二十九条第一項の規定(他の法令において、これらの規定を引用し、又はその例による場合を含む。)を適用する場合においては、「被保険者期間」とあるのは、「被保険者期間(離婚時みなし被保険者期間を除く。)」とする。厚生年金保険法附則
本肢は、「特別支給の老齢厚生年金」に関する問題です。
特別支給の老齢厚生年金の受給資格要件に、「離婚時みなし被保険者期間」を含めることができるかどうか、というのが本肢の論点です。
結論としては、上記根拠条文のとおり、「離婚時みなし被保険者期間を除く」とされていますので、「含まれない」となります。
本肢は×です。
厚生年金保険法 令和5年第6問 C
特別支給の老齢厚生年金については、雇用保険法による高年齢雇用継続給付との併給調整が行われる。ただし、在職老齢年金の仕組みにより、老齢厚生年金の全部又は一部が支給停止されている場合は、高年齢雇用継続給付との併給調整は行われない。
法附則第11条の6
根拠条文を確認します。
第十一条の六 附則第八条の規定による老齢厚生年金(第四十三条第一項、附則第九条の二第一項から第三項まで又は附則第九条の三及び附則第九条の規定によりその額が計算されているものに限る。)の受給権者が被保険者である日が属する月について、その者が高年齢雇用継続基本給付金の支給を受けることができるときは、附則第十一条及び第十一条の二の規定にかかわらず、その月の分の当該老齢厚生年金について、次の各号に掲げる場合に応じ、それぞれ当該老齢厚生年金につき附則第十一条又は第十一条の二の規定を適用した場合におけるこれらの規定による支給停止基準額と当該各号に定める額(その額に六分の十五を乗じて得た額に当該受給権者に係る標準報酬月額を加えた額が支給限度額を超えるときは、支給限度額から当該標準報酬月額を減じて得た額に十五分の六を乗じて得た額)に十二を乗じて得た額(第七項において「調整額」という。)との合計額(以下この項において「調整後の支給停止基準額」という。)に相当する部分の支給を停止する。ただし、調整後の支給停止基準額が老齢厚生年金の額以上であるときは、老齢厚生年金の全部の支給を停止するものとする。
厚生年金保険法附則
本肢は、「特別支給の老齢厚生年金」に関する問題です。
まず原則として、特別支給の老齢厚生年金は、雇用保険法による高年齢雇用継続給付との併給調整が行われます。
ただし例外として、在職老齢年金の仕組みにより、老齢厚生年金の全部が支給停止されている場合は、高年齢雇用継続給付との併給調整は行われません。
問題文は「全部又は一部が」となっている点が誤りとなります。
本肢は×です。
厚生年金保険法 令和5年第6問 D
報酬比例部分のみの特別支給の老齢厚生年金の受給権を有する者であって、受給権を取得した日から起算して1年を経過した日前に当該老齢厚生年金を請求していなかった場合は、当該老齢厚生年金の支給繰下げの申出をすることができる。
法第44条の3
根拠条文を確認します。
(支給の繰下げ)
第四十四条の三 老齢厚生年金の受給権を有する者であつてその受給権を取得した日から起算して一年を経過した日(以下この条において「一年を経過した日」という。)前に当該老齢厚生年金を請求していなかつたものは、実施機関に当該老齢厚生年金の支給繰下げの申出をすることができる。ただし、その者が当該老齢厚生年金の受給権を取得したときに、他の年金たる給付(他の年金たる保険給付又は国民年金法による年金たる給付(老齢基礎年金及び付加年金並びに障害基礎年金を除く。)をいう。以下この条において同じ。)の受給権者であつたとき、又は当該老齢厚生年金の受給権を取得した日から一年を経過した日までの間において他の年金たる給付の受給権者となつたときは、この限りでない。
本肢は、「特別支給の老齢厚生年金」に関する問題です。
特別支給の老齢厚生年金は、支給の繰下げはできません。
あくまでも原則ではなく「特別」ということで…。
上記法第44条の3に規定する支給の繰下げの制度は、原則の老齢厚生年金についての制度となります。
本肢は×です。
厚生年金保険法 令和5年第6問 E
報酬比例部分のみの特別支給の老齢厚生年金の受給権を有する者が、被保険者でなく、かつ、障害の状態にあるときは、老齢厚生年金の額の計算に係る特例の適用を請求することができる。ただし、ここでいう障害の状態は、厚生年金保険の障害等級1級又は2級に該当する程度の障害の状態に限定される。
根拠条文を確認します。
第九条の二 附則第八条の規定による老齢厚生年金(第四十三条第一項及び前条の規定によりその額が計算されているものに限る。)の受給権者(第五項において「老齢厚生年金の受給権者」という。)が、被保険者でなく、かつ、傷病により障害等級に該当する程度の障害の状態(以下この項、第四項、第五項、次条第五項、附則第九条の四第六項並びに第十三条の五第一項及び第五項において「障害状態」という。)にあるとき(その傷病が治らない場合(その症状が固定し治療の効果が期待できない状態にある場合を除く。)にあつては、その傷病に係る初診日から起算して一年六月を経過した日以後においてその傷病により障害状態にあるとき。第五項及び附則第十三条の五第一項において同じ。)は、その者は、老齢厚生年金の額の計算に係る特例の適用を請求することができる。
厚生年金保険法附則
本肢は「特別支給の老齢厚生年金」に関する問題です。
ご存じのとおり、厚生年金保険法における障害等級は1~3級となっています。
従って、上記根拠条文にある「傷病により障害等級に該当する程度の障害の状態」の中の「障害等級」とは「3級」を含んでいますので、「1級又は2級」とする問題文は誤りとなります。
本肢は×です。