社会保険労務士試験【健康保険法】<令和5年第5問>

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健康保険法に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

健康保険法 令和5年第5問 A

健康保険の被保険者が、労働協約又は就業規則により雇用関係は存続するが会社より賃金の支給を停止された場合、例えば病気休職であって実務に服する見込みがあるときは、賃金の支払停止は一時的なものであり使用関係は存続するものとみられるため、被保険者資格は喪失しない。

解答の根拠

昭和26年3月9日保文発619号

根拠通達を確認します。

右の趣旨に基き被保険者の資格を喪失することを要しないものと認められる病気休職等の場合は、賃金の支払停止は一時的のものであり使用関係は存続するものとみられるものであるから、事業主及び被保険者はそれぞれ賃金支給停止前の標準報酬に基く保険料を折半負担し事業主はその納付義務を負うものとして取扱うことが妥当と認められる。

休職と被保険者資格について(昭和26年3月9日保文発619号)

本肢は、「被保険者資格」に関する問題です。

本肢は会社の人事や総務で給与事務を担当されている方だと、すぐに解答できたかもしれません。

雇用関係が続いている限りは、休職で給与支払いがストップしても被保険者資格は喪失しません。

そのため、休職者から社会保険料の本人負担分を会社口座に振り込んでもらう…というようなことで対応している会社が多いと思います。

本肢は○です。

健康保険法 令和5年第5問 B

訪問看護療養費は、厚生労働省令で定めるところにより、保険者が必要と認める場合に限り、支給するものとされている。指定訪問看護を受けられる者の基準は、疾病又は負傷により、居宅において継続して療養を受ける状態にある者であって、主治医が訪問看護の必要性について、被保険者の病状が安定し、又はこれに準ずる状態にあり、かつ、居宅において看護師等が行う療養上の世話及び必要な診療の補助を要する状態に適合すると認めた者である。なお、看護師等とは、看護師、保健師、助産師、准看護師、理学療法士、作業療法士及び言語聴覚士をいう。

解答の根拠

法第88条第1項・第2項/則第67条・第68条

根拠条文を確認します。

(訪問看護療養費)
第八十八条 被保険者が、厚生労働大臣が指定する者(以下「指定訪問看護事業者」という。)から当該指定に係る訪問看護事業(疾病又は負傷により、居宅において継続して療養を受ける状態にある者(主治の医師がその治療の必要の程度につき厚生労働省令で定める基準に適合していると認めたものに限る。)に対し、その者の居宅において看護師その他厚生労働省令で定める者が行う療養上の世話又は必要な診療の補助(保険医療機関等又は介護保険法第八条第二十八項に規定する介護老人保健施設若しくは同条第二十九項に規定する介護医療院によるものを除く。以下「訪問看護」という。)を行う事業をいう。)を行う事業所により行われる訪問看護(以下「指定訪問看護」という。)を受けたときは、その指定訪問看護に要した費用について、訪問看護療養費を支給する。
2 前項の訪問看護療養費は、厚生労働省令で定めるところにより、保険者が必要と認める場合に限り、支給するものとする。

健康保険法

(法第八十八条第一項の厚生労働省令で定める基準)
第六十七条 法第八十八条第一項の厚生労働省令で定める基準は、病状が安定し、又はこれに準ずる状態にあり、かつ、居宅において看護師等(看護師その他次条に規定する者をいう。第七十四条第一項第九号及び第七十七条において同じ。)が行う療養上の世話及び必要な診療の補助を要することとする。
(法第八十八条第一項の厚生労働省令で定める者)
第六十八条 法第八十八条第一項の厚生労働省令で定める者は、保健師、助産師、准看護師、理学療法士、作業療法士及び言語聴覚士とする。

本肢は、「訪問看護療養費」に関する問題です。

問題文が長いので、前半・後半に分けて確認します。

まず前半部分です。

上記根拠条文のとおり、「訪問看護療養費は、厚生労働省令で定めるところにより、保険者が必要と認める場合に限り、支給するものとする」と定められていますので、正しい内容です。

次に後半部分、特に「看護師その他厚生労働省令で定める者」の内容が正しいかどうか…が怪しいところです。

この点については、上記根拠条文のとおり、「その他厚生労働省令で定める者」として、保健師・助産師・准看護師・理学療法士・作業療法士・言語聴覚士とされているので、過不足なく正しい内容となります。

本肢は○です。

健康保険法 令和5年第5問 C

高額療養費の支給は、償還払いを原則としており、被保険者からの請求に基づき支給する。この場合において、保険者は、診療報酬請求明細書(家族療養費が療養費払いである場合は当該家族療養費の支給申請書に添付される証拠書類)に基づいて高額療養費を支給するものであり、法令上、請求書に証拠書類を添付することが義務づけられている。

解答の根拠

昭和48年10月17日庁保発20号保発39号

根拠通達を確認します。

第五 支給方法
1 本制度は、第二で述べたとおり、償還払いを原則としており、被保険者からの請求に基づき高額療養費を支給することとしていること。(健保規則第六十三条ノ七及び船保規則第四十七条ノ四)。この場合において、保険者は、原則的には診療報酬請求明細書(家族療養費が療養費払いである場合は当該家族療養費の支給申請書に添付される証拠書類)に基づいて高額療養費を支給するものであり、法令上は、請求書に証拠書類を添付することは、特に義務づけていないものであること。

健康保険法施行令等の一部を改正する政令等の施行について(昭和48年10月17日庁保発20号保発39号)

本肢は、「高額療養費」に関する問題です。

本肢は非常に細かい論点ですが、上記根拠通達のとおり、法令上は、請求書に証拠書類(領収書)を添付することは、特に義務づけておりません。

本肢は×となり、本問の正解となります。

健康保険法 令和5年第5問 D

任意継続被保険者が任意の資格喪失の申出をしたが、申出のあった日が保険料納付期日の10日より前であり、当該月の保険料をまだ納付していなかった場合、健康保険法第38条第3号の規定に基づき、当該月の保険料の納付期日の翌日から資格を喪失する。

解答の根拠

法第38条第1項第3号

根拠条文を確認します。

(任意継続被保険者の資格喪失)
第三十八条 任意継続被保険者は、次の各号のいずれかに該当するに至った日の翌日(第四号から第六号までのいずれかに該当するに至ったときは、その日)から、その資格を喪失する。
一・二(略)
三 保険料(初めて納付すべき保険料を除く。)を納付期日までに納付しなかったとき(納付の遅延について正当な理由があると保険者が認めたときを除く。)。

健康保険法

本肢は、「任意継続被保険者」に関する問題です。

上記根拠通達のとおり、任意継続被保険者が保険料を納付期日までに納付しなかったときは、その日の翌日に資格を喪失することとされています。

本肢は○です。

健康保険法 令和5年第5問 E

健康保険法第172条によると、保険料は、納付義務者が破産手続開始の決定を受けたときは、納期前であっても、すべて徴収することができる。

解答の根拠

法第172条第1項第1号ハ

根拠条文を確認します。

(保険料の繰上徴収)
第百七十二条 保険料は、次に掲げる場合においては、納期前であっても、すべて徴収することができる。
一 納付義務者が、次のいずれかに該当する場合
イ 国税、地方税その他の公課の滞納によって、滞納処分を受けるとき。
ロ 強制執行を受けるとき。
ハ 破産手続開始の決定を受けたとき。
ニ 企業担保権の実行手続の開始があったとき。
ホ 競売の開始があったとき。

本肢は「保険料の繰上徴収」に関する問題です。

上記根拠通達のとおり、問題文で挙げられている「破産手続開始の決定」をはじめ、イ~ホに列挙されている事由に該当した場合は、保険料の繰上徴収ができるとされています。

本肢は○です。

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