労働関係法規に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
労務管理その他の労働及び社会保険に関する一般常識 令和5年第4問 A
「使用者が誠実交渉義務に違反する不当労働行為をした場合には、当該団体交渉に係る事項に関して合意の成立する見込みがないときであっても、労働委員会は、誠実交渉命令〔使用者が誠実交渉義務に違反している場合に、これに対して誠実に団体交渉に応ずべき旨を命ずることを内容とする救済命令〕を発することができると解するのが相当である。」とするのが、最高裁判所の判例である。
山形大学不当労働行為救済命令取消請求事件
本肢は、「労働組合法」に関する問題です。
解答の根拠に挙げた判例の通りの問題文となっています。
使用者が労働組合からの交渉に誠意をもって対応しなければならない「誠実交渉義務」を根拠に、たとえその交渉の目的・内容が合意の見込みがないときでも、労働委員会は誠実交渉命令を発することができると解するのが相当、とされています。
本肢は○です。
労務管理その他の労働及び社会保険に関する一般常識 令和5年第4問 B
職業紹介事業者、求人者、労働者の募集を行う者、募集受託者、特定募集情報等提供事業者、労働者供給事業者及び労働者供給を受けようとする者は、特別な職業上の必要性が存在することその他業務の目的の達成に必要不可欠であって、収集目的を示して本人から収集する場合でなければ、「人種、民族、社会的身分、門地、本籍、出生地その他社会的差別の原因となるおそれのある事項」「思想及び信条」「労働組合への加入状況」に関する求職者、募集に応じて労働者になろうとする者又は供給される労働者の個人情報を収集することができない。
職業紹介事業者、求人者、労働者の募集を行う者、募集受託者、募集情報等提供事業を行う者、労働者供給事業者、労働者供給を受けようとする者等がその責務等に関して適切に対処するための指針
根拠条文を確認します。
第五 求職者等の個人情報の取扱いに関する事項(法第五条の五) 一 個人情報の収集、保管及び使用
(二) 職業紹介事業者、求人者、労働者の募集を行う者、募集受託者、特定募集情報等提供事業者、労働者供給事業者及び労働者供給を受けようとする者は、その業務の目的の達成に必要な範囲内で、当該目的を明らかにして個人情報を収集することとし、次に掲げる個人情報を収集してはならないこと。ただし、特別な職業上の必要性が存在することその他業務の目的の達成に必要不可欠であって、収集目的を示して本人から収集する場合はこの限りでないこと。
イ 人種、民族、社会的身分、門地、本籍、出生地その他社会的差別の原因となるおそれのある事項
ロ 思想及び信条
ハ 労働組合への加入状況職業紹介事業者、求人者、労働者の募集を行う者、募集受託者、募集情報等提供事業を行う者、労働者供給事業者、労働者供給を受けようとする者等がその責務等に関して適切に対処するための指針
本肢は、「職業安定法」に関する問題です。
本肢は、仮にこの指針の内容を知らなかったとしても、個人情報の収集については、
・目的を明らかにして
・必要な場合のみ必要の範囲内で
・本人から
というのは、なんとなく当たり前ではないかな…と思って「○」とできると良いと思います。
本肢は○です。
労務管理その他の労働及び社会保険に関する一般常識 令和5年第4問 C
事業主は、労働者が当該事業主に対し、当該労働者又はその配偶者が妊娠し、又は出産したことその他これに準ずるものとして厚生労働省令で定める事実を申し出たときは、厚生労働省令で定めるところにより、当該労働者に対して、育児休業に関する制度その他の厚生労働省令で定める事項を知らせるとともに、育児休業申出等に係る当該労働者の意向を確認するための面談その他の厚生労働省令で定める措置を講じなければならない。
育児介護休業法第21条第1項
根拠条文を確認します。
(妊娠又は出産等についての申出があった場合における措置等)
第二十一条 事業主は、労働者が当該事業主に対し、当該労働者又はその配偶者が妊娠し、又は出産したことその他これに準ずるものとして厚生労働省令で定める事実を申し出たときは、厚生労働省令で定めるところにより、当該労働者に対して、育児休業に関する制度その他の厚生労働省令で定める事項を知らせるとともに、育児休業申出等に係る当該労働者の意向を確認するための面談その他の厚生労働省令で定める措置を講じなければならない。育児介護休業法
本肢は、「育児介護休業法」に関する問題です。
上記根拠条文そのままの出題です。
労働者が配偶者の妊娠・出産等を事業主に申し出た場合には、
・厚生労働省令で定める事項を知らせる(制度周知)
・意向確認面談等を講じる
こととされています。
本肢は○です。
労務管理その他の労働及び社会保険に関する一般常識 令和5年第4問 D
高年齢者雇用安定法に定める義務として継続雇用制度を導入する場合、事業主に定年退職者の希望に合致した労働条件での雇用を義務付けるものではなく、事業主の合理的な裁量の範囲の条件を提示していれば、労働者と事業主との間で労働条件等についての合意が得られず、結果的に労働者が継続雇用されることを拒否したとしても、高年齢者雇用安定法違反となるものではない。
高年齢者雇用安定法Q&A
根拠条文を確認します。
Q1-9: 本人と事業主の間で賃金と労働時間の条件が合意できず、継続雇用を拒否した場合も違反になるのですか。
A1-9: 高年齢者雇用安定法が求めているのは、継続雇用制度の導入であって、事業主に定年退職者の希望に合致した労働条件での雇用を義務付けるものではなく、事業主の合理的な裁量の範囲の条件を提示していれば、労働者と事業主との間で労働条件等についての合意が得られず、結果的に労働者が継続雇用されることを拒否したとしても、高年齢者雇用安定法違反となるものではありません。
高年齢者雇用安定法Q&A
本肢は、「高年齢者雇用安定法」に関する問題です。
高齢法が求めているのは「継続雇用制度の導入」…つまり、定年を迎えたあとも働き続けることができる仕組みの導入です。
お給料の水準をどうするかなど各種労働条件の設定は、事業主の合理的な裁量の範囲であればOKとさえており、労働者の希望通りにならなくとも法違反ではない、とされています。
本肢は○です。
労務管理その他の労働及び社会保険に関する一般常識 令和5年第4問 E
厚生労働大臣は、常時雇用する労働者の数が300人以上の事業主からの申請に基づき、当該事業主について、青少年の募集及び採用の方法の改善、職業能力の開発及び向上並びに職場への定着の促進に関する取組に関し、その実施状況が優良なものであることその他の厚生労働省令で定める基準に適合するものである旨の認定を行うことができ、この制度は「ユースエール認定制度」と呼ばれている。
青少年雇用促進法第15条
根拠条文を確認します。
(基準に適合する事業主の認定)
第十五条 厚生労働大臣は、事業主(常時雇用する労働者の数が三百人以下のものに限る。)からの申請に基づき、当該事業主について、青少年の募集及び採用の方法の改善、職業能力の開発及び向上並びに職場への定着の促進に関する取組に関し、その実施状況が優良なものであることその他の厚生労働省令で定める基準に適合するものである旨の認定を行うことができる。青少年雇用促進法
本肢は「青少年雇用促進法」に関する問題です。
単純な人数条件の相違問題です(【誤】300人以上⇒【正】300人以下)
しかし、法令があまり有名ではないと思いますので、正答は難しいかもしれません。
ほかの肢を確実に○と判断して、消去法で絞れると良いと思います。
あとは、助成金などもそうですが、「国は中小規模の事業主を応援する」という基本スタンスに気づけたならば、違和感をもてたかもしれませんね。
本肢は×となり、本問の正解となります。