労災保険給付に関する決定(処分)に不服がある場合の救済手続に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
労働者災害補償保険法 令和5年第6問 A
労災保険給付に関する決定に不服のある者は、都道府県労働局長に対して審査請求を行うことができる。
法第38条第1項
根拠条文を確認します。
第三十八条 保険給付に関する決定に不服のある者は、労働者災害補償保険審査官に対して審査請求をし、その決定に不服のある者は、労働保険審査会に対して再審査請求をすることができる。
労働者災害補償保険法
本肢は、「不服申し立て」に関する問題です。
上記根拠条文のとおり、請求先は
①審査請求⇒労働者災害補償保険審査官
②再審査請求⇒労働保険審査会
となります。
都道府県労働局長は出てきません。
本肢は×です。
労働者災害補償保険法 令和5年第6問 B
審査請求をした日から1か月を経過しても審査請求についての決定がないときは、審査請求は棄却されたものとみなすことができる。
法第38条第2項
根拠条文を確認します。
第三十八条
労働者災害補償保険法
② 前項の審査請求をしている者は、審査請求をした日から三箇月を経過しても審査請求についての決定がないときは、労働者災害補償保険審査官が審査請求を棄却したものとみなすことができる。
本肢は、「審査請求」に関する問題です。
本肢は単純な数値の置き換え問題で
(誤)1ヶ月 ⇒ (正)3ヶ月
となります。
本肢は×です。
労働者災害補償保険法 令和5年第6問 C
処分の取消しの訴えは、再審査請求に対する労働保険審査会の決定を経た後でなければ、提起することができない。
法第40条
根拠条文を確認します。
第四十条 第三十八条第一項に規定する処分の取消しの訴えは、当該処分についての審査請求に対する労働者災害補償保険審査官の決定を経た後でなければ、提起することができない。
労働者災害補償保険法
本肢は、「処分の取り消しの訴え」に関する問題です。
肢Aで確認したように
①審査請求⇒労働者災害補償保険審査官
②再審査請求⇒労働保険審査会
となりますが、処分取消しの訴えは、①の審査請求の決定を得た段階で提起できる、とされています、
本肢は×です。
労働者災害補償保険法 令和5年第6問 D
医師による傷病の治ゆ認定は、療養補償給付の支給に影響を与えることから、審査請求の対象となる。
法第38条第1項
根拠条文を確認します。
第三十八条 保険給付に関する決定に不服のある者は、労働者災害補償保険審査官に対して審査請求をし、その決定に不服のある者は、労働保険審査会に対して再審査請求をすることができる。
労働者災害補償保険法
本肢は、「審査請求の対象」に関する問題です。
審査請求で行政が判断できるのは「法律効果を及ぼす処分」になります。
イメージとしては、例えば、ある医師の傷病の治ゆ認定をもって療養補償給付を支給するかどうか、については判断できます。
しかし、問題文にあるような、「そもそもその医師の治ゆ認定が正しいかどうか」については、その前提の「事実認定」の範囲ですので、行政が判断する内容ではありません。
本肢は×です。
労働者災害補償保険法 令和5年第6問 E
障害補償給付の不支給処分を受けた者が審査請求前に死亡した場合、その相続人は、当該不支給処分について審査請求人適格を有する。
法第38条第1項
根拠条文を確認します。
第三十八条 保険給付に関する決定に不服のある者は、労働者災害補償保険審査官に対して審査請求をし、その決定に不服のある者は、労働保険審査会に対して再審査請求をすることができる。
労働者災害補償保険法
本肢は「審査請求人適格」に関する問題です。
「審査請求人適格」とは、「審査請求をする主体として資格があるかどうか」というはなしになります。
例えば、Aさんが遺族補償給付の不支給決定について審査請求をしたかったのに、その請求をする前に亡くなってしまった場合、Aさんがもらえてたかもしれない遺族補償年金は消えてしまうのでしょうか。
もちろん、Aさんが遺族補償年金をもらえていればAさんの資産となりますので、受給後にAさんが無くなれば、Aさんの相続人の相続資産としてプラスになる可能性があります。
したがって、Aさんの相続人には、Aさんの意思を引き継いで審査請求をするメリットがあるわけなので、そのような場合は相続人に対しても「審査請求人適格を認める」としています。
本肢は○となり、本問の正解となります。