社会保険労務士試験【労働基準法】<令和5年第7問>

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労働基準法に定める労働時間等に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

労働基準法 令和5年第7問 A

労働基準法第32条の3に定めるフレックスタイム制において同法第36条第1項の協定(以下本問において「時間外・休日労働協定」という。)を締結する際、1日について延長することができる時間を協定する必要はなく、1か月及び1年について協定すれば足りる。

解答の根拠

平成30年12月28日基発1228第15号

根拠通達を確認します。

問2
フレックスタイム制において時間外・休日労働協定を締結する際、現行の取扱いでは1日について延長することができる時間を協定する必要はなく、清算期間を通算して時間外労働をすることができる時間を協定すれば足りるとしているが、今回の法改正後における取扱い如何。

答2
1日について延長することができる時間を協定する必要はなく、1箇月及び1年について協定すれば足りる。

働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律による改正後の労働基準法関係の解釈について(平成30年12月28日基発1228第15号)

本肢は、「フレックスタイム制」に関する問題です。

上記根拠通達の通り、「1日について延長することができる時間を協定する必要はない」とされています。

フレックスは、一般的には1日の出退勤時間を自由に決められる…というイメージが強いですが、時間帯というよりも「時間量」が調整しやすい…つまり、「今日はやるべきことがたくさんあったのでガンガン仕事したが、明日は急ぎの仕事はないので控えめにしよう」と『1日の枠を超えて仕事量を調整する…というのが本来の趣旨です。

それが理解できていると、1日単位で時間を協定することが必要ないことがわかると思います。

本肢は○です。

労働基準法 令和5年第7問 B

労使当事者は、労働基準法第36条第1項の時間外・休日労働協定において労働時間を延長し、又は休日に労働させることができる業務の種類について定めるに当たっては、業務の区分を細分化することにより当該業務の範囲を明確にしなければならない。

解答の根拠

平成11年1月29日基発45号

根拠条通達を確認します。

第六 時間外労働(法第三六条関係)
二 限度基準
(一) 業務区分の細分化
労使当事者は、時間外労働協定において労働時間を延長する必要のある業務の種類を定めるに当たっては、業務の区分を細分化することにより当該必要のある業務の範囲を明確にしなければならないこととしたものであること。

労働基準法の一部を改正する法律の施行について(平成11年1月29日基発45号)

本肢は、「36協定」に関する問題です。

こちはら、実務で「36協定」を取り扱った方であればイメージがしやすいと思われます。

36協定には「業務の種類」について記載させる枠があります。

例えば、営業担当と総務担当では取り扱い業務が全く異なるので、同じ協定時間ではおかしい…となりますよね。

イメージがわかない方は、合格後社労士実務としては必須の書式なので、実際の36協定の書式を確認しておくことをお勧めします。

本肢は○です。

労働基準法 令和5年第7問 C

労働基準法に定められた労働時間規制が適用される労働者が事業主を異にする複数の事業場で労働する場合、労働基準法第38条第1項により、当該労働者に係る同法第32条・第40条に定める法定労働時間及び同法第34条に定める休憩に関する規定の適用については、労働時間を通算することとされている。

解答の根拠

令和2年9月1日基発0901第3号

根拠通達を確認します。

第1 法第 38 条第1項の規定による労働時間の通算が必要となる場合
3 通算されない規定
休憩(法第 34 条)、休日(法第 35 条)、年次有給休暇(法第 39 条)については、労働時間に関する規定ではなく、その適用において自らの事業場における労働時間及び他の使用者の事業場における労働時間は通算されないこと。

副業・兼業の場合における労働時間管理に係る労働基準法第 38 条第1項の解釈等について(令和2年9月1日基発0901第3号)

本肢は、「労働時間の通算」に関する問題です。

問題文の中にある「事業主を異にする複数の事業場で労働する場合」というのは、いわゆる「副業」のイメージを持ってください。

Aという会社で働いた後に、別のBという会社で働くイメージです。

このような場合、労働時間が通算されるのはイメージしやすいと思います。

しかし、休憩、休日、年次有給休暇については、上記根拠通達の通り「通算されない」となります。

一番わかりやすいのは「年次有給休暇」でしょうか。

例えば、A会社で1日有給休暇を取得したら、B会社も同時に休める…というのはオカシイと思いますよね。

本肢は×となり、本問の正解となります。

労働基準法 令和5年第7問 D

労働基準法第39条第5項ただし書にいう「事業の正常な運営を妨げる場合」か否かの判断に当たり、勤務割による勤務体制がとられている事業場において、「使用者としての通常の配慮をすれば、勤務割を変更して代替勤務者を配置することが客観的に可能な状況にあると認められるにもかかわらず、使用者がそのための配慮をしないことにより代替勤務者が配置されないときは、必要配置人員を欠くものとして事業の正常な運営を妨げる場合に当たるということはできないと解するのが相当である。」とするのが、最高裁判所の判例である。

解答の根拠

最判昭和62年7月10日(弘前電報電話局事件)

本肢は、「年次有給休暇の時季変更権」に関する問題です。

判例からの出題となりますので、過去問に出題された判例はぜひおさえておきましょう。

年次有給休暇の時季変更権…つまり、労働者が「この日に休みたい」と申し出たのに対して、会社側が「別の日に取得してくれ」と変更をできるのは、「事業の正常な運営を妨げる場合」であることが必要です。

この「事業の正常な運営を妨げる場合」というのは、ちょっとやそっとのことでは認められない、ということを覚えておきましょう。

問題文にあるように、「勤務割を変更して代替勤務者を配置することが客観的に可能な状況にあると認められる」場合は、「事業の正常な運営を妨げる場合」とは言えない、というのが判例の趣旨になります。

本肢は○です。

労働基準法 令和5年第7問 E

使用者は、労働時間の適正な把握を行うべき労働者の労働日ごとの始業・終業時刻を確認し、これを記録することとされているが、その方法としては、原則として「使用者が、自ら現認することにより確認し、適正に記録すること」、「タイムカード、ICカード、パソコンの使用時間の記録等の客観的な記録を基礎として確認し、適正に記録すること」のいずれかの方法によることとされている。

解答の根拠

労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン

根拠となるガイドラインを確認します。

4 労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置
(2)始業・終業時刻の確認及び記録の原則的な方法
使用者が始業・終業時刻を確認し、記録する方法としては、原則として次のいずれかの方法によること。
使用者が、自ら現認することにより確認し、適正に記録すること。
タイムカード、ICカード、パソコンの使用時間の記録等の客観的な記録を基礎として確認し、適正に記録すること。

労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン

本肢は「労働時間の適正な把握」に関する問題です。

こちらは上記根拠となるガイドラインのとおりとなります。

働き方が多様になっている時代なので、多くの企業が「イ」の方法を採られているのではないかと思います。

私の会社も、勤怠システム上で、パソコンのログイン・ログオフの時間を記録する仕様となっています。

本肢は○です。

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