社会保険労務士試験【労働基準法】<令和5年第4問>

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労働基準法の総則(第1条~第12条)に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

労働基準法 令和5年第4問 A

労働基準法第2条により、「労働条件は、労働者と使用者が、対等の立場において決定すべきもの」であるが、個々の労働者と使用者の間では「対等の立場」は事実上困難であるため、同条は、使用者は労働者に労働組合の設立を促すように努めなければならないと定めている。

解答の根拠

法第2条

根拠条文を確認します。

(労働条件の決定)
第二条 労働条件は、労働者と使用者が、対等の立場において決定すべきものである。

労働基準法

本肢は、「労働条件の決定」に関する問題です。

上記根拠のとおり、労働基準法第2条において、「労働条件は、労働者と使用者が、対等の立場において決定すべきものである」と規定されているため、問題文の前半は正しいです。

しかし、だからと言って「使用者は労働者に労働組合の設立を促すように努めなければならない」とはどこにも規定されていません

もちろん、個々の労働者と使用者でやりとりするより、労働組合のような組織の力を使う方がよいことはそのとおりですが、使用者が労働者に労働組合の設立を促す…まではいきません。

本肢は×です。

労働基準法 令和5年第4問 B

特定の思想、信条に従って行う行動が企業の秩序維持に対し重大な影響を及ぼす場合、その秩序違反行為そのものを理由として差別的取扱いをすることは、労働基準法第3条に違反するものではない。

解答の根拠

法第3条

根拠条文を確認します。

(均等待遇)
第三条 使用者は、労働者の国籍、信条又は社会的身分を理由として、賃金、労働時間その他の労働条件について、差別的取扱をしてはならない。

労働基準法

本肢は、「均等待遇」に関する問題です。

上記根拠条文の通り、「信条」を理由として労働条件について差別的取扱をしてはならない、とされています。

しかし、その信条が行き過ぎてしまい、企業の秩序を乱すような影響を及ぼすようであれば、企業側も困ってしまいます。

その場合は、企業側の秩序維持を理由として、差別的取扱をするのもやむなし、となります。

本肢は○となり、本問の正解となります。

労働基準法 令和5年第4問 C

労働基準法第5条に定める「監禁」とは、物質的障害をもって一定の区画された場所から脱出できない状態に置くことによって、労働者の身体を拘束することをいい、物質的障害がない場合には同条の「監禁」に該当することはない。

解答の根拠

昭和22年9月13日発基17号

根拠通達を確認します。

「監禁」とは、刑法第220条に規定する監禁であり、一定の区画された場所から脱出できない状態に置くことによって、労働者の身体を拘束することをいい、必ずしも物質的障害を以って手段とする必要はない。

労働基準法の施行に関する件(昭和22年9月13日発基17号)

本肢は、「強制労働の禁止」に関する問題です。

「監禁」というと、物理的な空間…牢屋のような場所に閉じ込めることをイメージしますね。

しかし、上記根拠通達では、そのような「物質的障害」だけでなく、例えば鍵がかかっていなく物理的には逃げ出せるような状態であっても、精神的に…例えば脅迫などをして逃げられない状態にすることも「監禁」にあたる…とされています。

本肢は×です。

労働基準法 令和5年第4問 D

法人が業として他人の就業に介入して利益を得た場合、労働基準法第6条違反が成立するのは利益を得た法人に限定され、法人のために違反行為を計画し、かつ実行した従業員については、その者が現実に利益を得ていなければ同条違反は成立しない。

解答の根拠

昭和34年2月16日基収8770号

根拠通達を確認します。

法人の場合には、当該法人のために実際の介入行為を行った行為者である従業員が処罰される。

昭和34年2月16日基収8770号

本肢は、「中間搾取の排除」に関する問題です。

労基法では、「何人も、法律に基いて許される場合の外、業として他人の就業に介入して利益を得てはならない。」と中間搾取を禁止しています。

この「何人も」というのは、「法人」も含まれますが、その法人の為に違反行為を計画し、かつ実行した従業員がいた場合は、違反の対象は法人だけでなくその従業員も含まれます。

本肢は×です。

労働基準法 令和5年第4問 E

労働基準法第10条にいう「使用者」は、企業内で比較的地位の高い者として一律に決まるものであるから、同法第9条にいう「労働者」に該当する者が、同時に同法第10条にいう「使用者」に該当することはない。

解答の根拠

法第10条

根拠条文を確認します。

(定義)
第九条 この法律で「労働者」とは、職業の種類を問わず、事業又は事務所(以下「事業」という。)に使用される者で、賃金を支払われる者をいう。

第十条 この法律で使用者とは、事業主又は事業の経営担当者その他その事業の労働者に関する事項について、事業主のために行為をするすべての者をいう。

労働基準法

本肢は「使用者」に関する問題です。

上記根拠条文(第10条)の通り、
・使用者=事業主の為に行為するすべての者
とされています。

したがって、問題文にある「企業内で比較的地位の高い者として一律に決まるもの」とは言えず、実態にそくして、社長や取締役のような役員レベルから、店長・支配人・現場監督などの方たちも含まれます。

そのため、法第9条にいう「労働者」であっても、法第10条にいう「使用者」に該当する場合は、もちろんあるわけですね。

本肢は×です。

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