労働基準法第34条(以下本問において「本条」という。)に定める休憩時間に関する次のアからオの記述のうち、正しいものの組合せは、後記1から5までのうちどれか。
A(ア と イ と ウ)
B(ア と イ と エ)
C(ア と エ と オ)
D(イ と ウ と オ)
E(ウ と エ と オ)
労働基準法 令和5年第2問 ア
休憩時間は、本条第2項により原則として一斉に与えなければならないとされているが、道路による貨物の運送の事業、倉庫における貨物の取扱いの事業には、この規定は適用されない。
法第34条第2項 / 則第31条 / 法別表1第4号・5号
根拠条文を確認します。
(休憩)
労働基準法
第三十四条 ② 前項の休憩時間は、一斉に与えなければならない。ただし、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定があるときは、この限りでない
第三十一条 法別表第一第四号、第八号、第九号、第十号、第十一号、第十三号及び第十四号に掲げる事業並びに官公署の事業(同表に掲げる事業を除く。)については、法第三十四条第二項の規定は、適用しない。
労働基準法施行規則
別表第一(第三十三条、第四十条、第四十一条、第五十六条、第六十一条関係)
労働基準法
一 物の製造、改造、加工、修理、洗浄、選別、包装、装飾、仕上げ、販売のためにする仕立て、破壊若しくは解体又は材料の変造の事業(電気、ガス又は各種動力の発生、変更若しくは伝導の事業及び水道の事業を含む。)
二 鉱業、石切り業その他土石又は鉱物採取の事業
三 土木、建築その他工作物の建設、改造、保存、修理、変更、破壊、解体又はその準備の事業
四 道路、鉄道、軌道、索道、船舶又は航空機による旅客又は貨物の運送の事業
五 ドック、船舶、岸壁、波止場、停車場又は倉庫における貨物の取扱いの事業
六 土地の耕作若しくは開墾又は植物の栽植、栽培、採取若しくは伐採の事業その他農林の事業
七 動物の飼育又は水産動植物の採捕若しくは養殖の事業その他の畜産、養蚕又は水産の事業
八 物品の販売、配給、保管若しくは賃貸又は理容の事業
九 金融、保険、媒介、周旋、集金、案内又は広告の事業
十 映画の製作又は映写、演劇その他興行の事業
十一 郵便、信書便又は電気通信の事業
十二 教育、研究又は調査の事業
十三 病者又は虚弱者の治療、看護その他保健衛生の事業
十四 旅館、料理店、飲食店、接客業又は娯楽場の事業
十五 焼却、清掃又はと畜場の事業
本肢は、「休憩時間の一斉付与」に関する問題です。
法律の構成としては…
・法第34条第2項…原則
・施行規則第31条…例外
・法別表第1…例外の業種を具体的に列挙
となります。
問題文には、「道路による貨物の運送の事業」と「倉庫における貨物の取扱いの事業」と2つ出てきていますが、
・道路による貨物の運送の事業…別表1内第四に規定の「貨物の運送の事業」に該当
・倉庫における貨物の取扱いの事業…別表1に規定なし
となり、後者は原則通り、「休憩時間の一斉付与」が適用されます。
本肢は×です。
労働基準法 令和5年第2問 イ
一昼夜交替制勤務は労働時間の延長ではなく二日間の所定労働時間を継続して勤務する場合であるから、本条の条文の解釈(一日の労働時間に対する休憩と解する)により一日の所定労働時間に対して1時間以上の休憩を与えるべきものと解して、2時間以上の休憩時間を労働時間の途中に与えなければならないとされている。
昭和23年5月10日基收1582号
根拠通達を確認します。
一昼夜交替制(二日間の所定労働時間を継続して勤務する場合)であっても、法律上は1時間の休憩を与えればよい
昭和23年5月10日基收1582号
本肢は、「交代制勤務の休憩」に関する問題です。
一昼夜交替制とは、上記根拠通達にあるとおり「2日間の所定労働時間を継続して勤務する場合」のことを指します。
この一昼夜交替制における休憩は「法律上は1時間の休憩を与えればよい」とされており、通常同様に1時間の休憩を与えればOKです。
ひどいかもしれませんが、2日にまたがるからと言って、1時間×2日=2時間の休憩を与えなければならない…というわけではないのですね。
しかし、上記根拠通達にも「法律上は」とあるように、「最低限1時間」ですから、現実的には労働者に配慮してもう少し休憩時間を与えた方がよいのでは…と個人的には思います。
本肢は×です。
労働基準法 令和5年第2問 ウ
休憩時間中の外出について所属長の許可を受けさせるのは、事業場内において自由に休息し得る場合には必ずしも本条第3項(休憩時間の自由利用)に違反しない。
昭和23年10月30日基発1575号
根拠通達を確認します。
事業場内において自由に休息しうる場合には必ずしも違法にはならない
昭和23年10月30日基発1575号
本肢は、「休憩時間の自由利用」に関する問題です。
「休憩時間の自由利用」の「自由」とはどこまで「自由」なのか…。
問題文にあるように、「外出について所属長の許可」を必須とするのは、自由を妨げていることになるのか…。
この点、上記根拠通達では「事業場内で自由」が認めれていればOKとしており、裏を返せば、事業場外まで自由を認める必要はなく、許可制にしても問題ない、としています。
本肢は○です。
労働基準法 令和5年第2問 エ
本条第1項に定める「6時間を超える場合においては少くとも45分」とは、一勤務の実労働時間の総計が6時間を超え8時間までの場合は、その労働時間の途中に少なくとも45分の休憩を与えなければならないという意味であり、休憩時間の置かれる位置は問わない。
法第34条第1項
根拠条文を確認します。
(休憩)
労働基準法
第三十四条 使用者は、労働時間が六時間を超える場合においては少くとも四十五分、八時間を超える場合においては少くとも一時間の休憩時間を労働時間の途中に与えなければならない。
本肢は、「休憩時間」に関する問題です。
休憩時間を労働時間中のどこでとるか、についてですが、法律上は上記根拠条文のとおり、「労働時間の途中に」としか規定がありません。
労働時間の途中であれば、労働時間の最初の方でも、真ん中でも、終わりの方でもどこでも問題ないわけですね。
本肢は○です。
労働基準法 令和5年第2問 オ
工場の事務所において、昼食休憩時間に来客当番として待機させた場合、結果的に来客が1人もなかったとしても、休憩時間を与えたことにはならない。
昭和22年9月13日発基17号
根拠条文を確認します。
法第三四条関係
昭和22年9月13日発基17号
(一) 休憩時間とは単に作業に従事しない手持時間を含まず労働者び権利として労働から離れることを保障されて居る時間の意であつて、その他の拘束時間は労働時間として取り扱うこと。
本肢は「休憩時間」に関する問題です。
「休憩時間」は労働者の自由に過ごさせる必要があります。
スマホを見ようが、昼寝をしようが、問題ないわけです。
しかし、その休憩中に、問題文にあるように「来客当番」を命じたら…
結果として来客がなかったとしても、常に「来客があったら対応しないと」とエンジンはかかっている状態ですので、本当の意味で休憩(エンジンを切っている状態)ではないことになります。
このように、車が走っている(労働)状態ではないが、アクセルを踏めばいつでも走り出すことができる(エンジンがかかっている)状態のことを「手待時間」と言います。
上記根拠通達のとおり、この「手待時間」は休憩時間には含みませんので、問題文の状況では「休憩を与えたことにはならない」となります。
本肢は○です。
以上のことから、正しい肢はウ と エ と オとなり、Eが正解となります。