社会保険労務士試験【健康保険法】<令和4年第6問>

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健康保険法に関する次の記述のうち、誤っているものを選びなさい。(試験後の訂正により、誤りが2つあります)

健康保険法 令和4年第6問 A

保険者は、健康保険において給付事由が第三者の行為によって生じた事故について保険給付を行ったときは、その給付の価額(当該保険給付が療養の給付であるときは、当該療養の給付に要する費用の額から当該療養の給付に関し被保険者が負担しなければならない一部負担金に相当する額を控除した額)の限度において、保険給付を受ける権利を有する者(当該給付事由が被保険者の被扶養者について生じた場合には、当該被扶養者を含む。)が第三者から同一の事由について損害賠償を受けたときは、保険者は、その価額の限度において、保険給付を行う責めを免れる。

解答の根拠

法第57条

根拠条文を確認します。

(損害賠償請求権)
第五十七条 保険者は、給付事由が第三者の行為によって生じた場合において、保険給付を行ったときは、その給付の価額(当該保険給付が療養の給付であるときは、当該療養の給付に要する費用の額から当該療養の給付に関し被保険者が負担しなければならない一部負担金に相当する額を控除した額。次条第一項において同じ。)の限度において、保険給付を受ける権利を有する者(当該給付事由が被保険者の被扶養者について生じた場合には、当該被扶養者を含む。次項において同じ。)が第三者に対して有する損害賠償の請求権を取得する。
 前項の場合において、保険給付を受ける権利を有する者が第三者から同一の事由について損害賠償を受けたときは、保険者は、その価額の限度において、保険給付を行う責めを免れる。

健康保険法

本肢は、「損害賠償請求権」に関する問題です。

第三者に責任がある保険給付について、上記根拠条文のとおり第57条では
・第1項…保険者は被保険者が有する損害賠償請求権を取得する
・第2項…保険給付を受けたときは保険者は保険給付の責任が免除される

とされています。

イメージとしては、第1項は「これから第三者に請求するなら、この前、私(保険者)があなた(被保険者)に給付したのだから、私に請求させて!」となり、第2項は「給付しようとしたけど、もう第三者から損害賠償を受けているなら、私が給付する必要ないね」という感じです。

問題文では、第1項の「この前、私があなたに給付したのだから」の部分と、第2項の「私が給付する必要ないね」がごっちゃになってしまっています。

本肢は×です(当初は○想定の問題ですが、試験後に誤りとされた)。

健康保険法 令和4年第6問 B

日雇特例被保険者に係る傷病手当金の支給期間は、同一の疾病又は負傷及びこれにより発した疾病に関しては、その支給を始めた日から起算して6か月(厚生労働大臣が指定する疾病に関しては、1年6か月)を超えないものとする。

解答の根拠

法第135条第3項

根拠条文を確認します。

(傷病手当金)
第百三十五条 
 日雇特例被保険者に係る傷病手当金の支給期間は、同一の疾病又は負傷及びこれにより発した疾病に関しては、その支給を始めた日から起算して六月(厚生労働大臣が指定する疾病に関しては、一年六月)を超えないものとする。

健康保険法

本肢は、「傷病手当金」に関する問題です。

こちらは上記根拠条文のとおりの問題です。

「日雇特例被保険者に係る傷病手当金の支給期間は、同一の疾病又は負傷及びこれにより発した疾病に関しては、その支給を始めた日から起算して6月(厚生労働大臣が指定する疾病に関しては、1年6月)を超えないものとする」とされています。

原則は「6月を超えない」/例外として特定の疾病については「1年6月を超えない」となるわけですね。

本肢は○です。

健康保険法 令和4年第6問 C

保険者は、特定健康診査等以外の事業であって、健康教育、健康相談及び健康診査並びに健康管理及び疾病の予防に係る被保険者及びその被扶養者(以下「被保険者等」という。)の健康の保持増進のために必要な事業を行うに当たって必要があると認めるときは、労働安全衛生法その他の法令に基づき保存している被保険者等に係る健康診断に関する記録の写しの提供を求められた事業者等(労働安全衛生法第2条第3号に規定する事業者その他の法令に基づき健康診断(特定健康診査に相当する項目を実施するものに限る。)を実施する責務を有する者その他厚生労働省令で定める者をいう。)は、厚生労働省令で定めるところにより、当該記録の写しを提供しなければならない。

解答の根拠

法第150条第2項・第3項

根拠条文を確認します。

(保健事業及び福祉事業)
第百五十条
 保険者は、前項の規定により被保険者等の健康の保持増進のために必要な事業を行うに当たって必要があると認めるときは、被保険者等を使用している事業者等(労働安全衛生法(昭和四十七年法律第五十七号)第二条第三号に規定する事業者その他の法令に基づき健康診断(特定健康診査に相当する項目を実施するものに限る。)を実施する責務を有する者その他厚生労働省令で定める者をいう。以下この条において同じ。)又は使用していた事業者等に対し、厚生労働省令で定めるところにより、同法その他の法令に基づき当該事業者等が保存している当該被保険者等に係る健康診断に関する記録の写しその他これに準ずるものとして厚生労働省令で定めるものを提供するよう求めることができる。
 前項の規定により、労働安全衛生法その他の法令に基づき保存している被保険者等に係る健康診断に関する記録の写しの提供を求められた事業者等は、厚生労働省令で定めるところにより、当該記録の写しを提供しなければならない。

健康保険法

本肢は、「保健事業及び福祉事業」に関する問題です。

保険者が、「よし!何か健康の保持増進のために事業をしよう!」となった場合に、適当に考えても的外れなものになってしまいます。

実際にその事業の対象となる被保険者の健康の状況を把握したうえで、事業を考える必要がありますね。

したがって、上記根拠条文第150条第2項において、厚生労働大臣は各事業者に対して「参考にしたいから、健康診断に関する記録を出してね」と求めることができます。

そして第3項で「そういう求めがあったら、ちゃんと応じてあげてね」と義務を規定しているわけですね。

本肢は○です。

健康保険法 令和4年第6問 D

健康保険の適用事業所と技能養成工との関係が技能の養成のみを目的とするものではなく、稼働日数、労務報酬等からみて、実体的に使用関係が認められる場合は、当該技能養成工は被保険者資格を取得する。

解答の根拠

被保険者の資格について(昭和26年11月2日保文発4602号)

根拠通達を確認します。

(略)当該事業所と技能養成工との関係が技能の養成のみを目的とするものではなく、稼働日数、労務報酬等からみて、実体的に使用関係が認められる場合は、被保険者資格を取得させるよう取り扱われたい。

被保険者の資格について(昭和26年11月2日保文発4602号)

本肢は、「被保険者資格」に関する問題です。

技能養成工、とありますので、イメージ的には「養成中/見習い中」と考えられると思います。

したがって、成果を出すために働いているわけではない、というのが建前なので、被保険者には該当しないとも思えます。

しかし、上記根拠通達によれば「当該事業所と技能養成工との関係が技能の養成のみを目的とするものではなく、稼働日数、労務報酬等からみて、実体的に使用関係が認められる場合は、被保険者資格を取得させる」とあります。

つまり、見習い中であっても、実態として普通に働いている人と変わらないような状況が、稼働日数や労務報酬等から認められる場合は、被保険者資格を取得する…とされているわけですね。

本肢は○です。

健康保険法 令和4年第6問 E

被保険者が闘争、泥酔又は著しい不行跡によって給付事由を生じさせたときは、当該給付事由に係る保険給付は、その全部又は一部を行わないことができるが、被保険者が数日前に闘争しその当時はなんらかの事故は生じなかったが、相手が恨みを晴らす目的で、数日後に不意に危害を加えられたような場合は、数日前の闘争に起因した闘争とみなして、当該給付事由に係る保険給付はその全部又は一部を行わないことができる。

解答の根拠

闘争又ハ泥酔ニ因リテ生セシメタル保険事故ニ関スル件(昭和2年4月27日保理1956号)

根拠通達を確認します。

(略)健康保険法第六十一条ニ規定スル闘争又ハ泥酔ニ因リ事故ヲ生セシメタル云々トアル事故ハ闘争又ハ泥酔ニ因リ其ノ際生セシメタル事故ヲ謂フ義ニ有之故ニ例示ノ場合ハ右ニ該当セサルモノト認メラレ候

闘争又ハ泥酔ニ因リテ生セシメタル保険事故ニ関スル件(昭和2年4月27日保理1956号)

本肢は「被保険者の責めに帰すべき事由」に関する問題です。

なんと…昭和2年のカタカナ表記の通達からの出題です。

ケガの原因が本人にある…上記通達には「闘争又は泥酔に因り事故を生ぜじめたる云々とある事故」とされていますが、それに対して保険給付を行うのはおかしいのでは?と思いますよね。

では、問題文にあるように、「相手が恨みを晴らす目的で、数日後に不意に危害を加えられたような場合」と、その場ではなく、後日になってケガをした場合はどのように考えるのでしょうか。

この点、上記根拠通達では「闘争又は泥酔に因り其の際生ぜしめたる事故を謂う」とあるので、「その時限定」と解釈できます。

つまり、自分の責任によってその場で負ったケガは給付をしないが、自分の責任によって「後日」負ったケガは、給付制限に該当しない…となるわけですね。

本肢は×となり、本問の正解となります。

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