労働保険の保険料の徴収等に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
雇用保険法 令和4年第問 A
雇用保険法第6条に該当する者を含まない4人の労働者を雇用する民間の個人経営による農林水産の事業(船員が雇用される事業を除く。)において、当該事業の労働者のうち2人が雇用保険の加入を希望した場合、事業主は任意加入の申請をし、認可があったときに、当該事業に雇用される者全員につき雇用保険に加入することとなっている。
法附則第2条第3項
根拠条文を確認します。
(雇用保険に係る保険関係の成立に関する暫定措置)
労働保険の保険料の徴収等に関する法律 附則
第二条 雇用保険法附則第二条第一項の任意適用事業(以下この条及び次条において「雇用保険暫定任意適用事業」という。)の事業主については、その者が雇用保険の加入の申請をし、厚生労働大臣の認可があつた日に、その事業につき第四条に規定する雇用保険に係る保険関係が成立する。
2 前項の申請は、その事業に使用される労働者の二分の一以上の同意を得なければ行うことができない。
3 雇用保険暫定任意適用事業の事業主は、その事業に使用される労働者の二分の一以上が希望するときは、第一項の申請をしなければならない。
本肢は、「雇用保険に係る保険関係の成立に関する暫定措置」に関する問題です。
労働者の数が少ないために、雇用保険の適用が任意となっている事業所のことを「暫定任意適用事業」といいます。
予備軍のようなイメージですね。
では、ずっと予備軍でよいのか…というと、上記根拠条文のとおり、「その事業に使用される労働者の2分の1以上が希望するときは、雇用保険の加入の申請をしなければならない」とされています。
これをもとに、問題文を確認すると、労働者4人のうち2人が雇用保険の加入を希望しているので、「2分の1以上が希望するとき」に該当することになり、事業主は任意加入の申請をしなければなりません。
また、この申請に対して認可があった場合、希望していなかった労働者を含めて、当該事業に雇用される者全員につき雇用保険に加入することとなります。
本肢は○です。
雇用保険法 令和4年第問 B
雇用保険の適用事業に該当する事業が、事業内容の変更、使用労働者の減少、経営組織の変更等により、雇用保険暫定任意適用事業に該当するに至ったときは、その翌日に、自動的に雇用保険の任意加入の認可があったものとみなされ、事業主は雇用保険の任意加入に係る申請書を所轄公共職業安定所長を経由して所轄都道府県労働局長に改めて提出することとされている。
法附則第2条第4項
根拠条文を確認します。
(雇用保険に係る保険関係の成立に関する暫定措置)
労働保険の保険料の徴収等に関する法律 附則
第二条
4 雇用保険法第五条第一項の適用事業に該当する事業が雇用保険暫定任意適用事業に該当するに至つたときは、その翌日に、その事業につき第一項の認可があつたものとみなす。
本肢は、「雇用保険に係る保険関係の成立に関する暫定措置」に関する問題です。
今度は、肢Aとは逆に「労働者の人数が減って、雇用保険暫定任意適用事業の要件に該当することとなった」場合を考えます。
この場合は、上記根拠条文のとおり、該当することとなった翌日に、自動的に雇用保険の任意加入の認可があったものとみなされることとなります。
「みなす」というのは、「どういう状況であってもそういうことにする」という、個人的なイメージでは「強引」な措置です。
ということで、事業主からの特段の申請書の提出は必要なく、自動的に「そうなる」こととなります。
本肢は×となり、本問の正解となります。
雇用保険法 令和4年第問 C
事業の期間が予定されており、かつ、保険関係が成立している事業の事業主は、当該事業の予定されている期間に変更があったときは、その変更を生じた日の翌日から起算して10日以内に、①労働保険番号、②変更を生じた事項とその変更内容、③変更の理由、④変更年月日を記載した届書を所轄労働基準監督署長又は所轄公共職業安定所長に提出することによって届け出なければならない。
法第4条の2第2項 / 則第5条
根拠条文を確認します。
(保険関係の成立の届出等)
労働保険の保険料の徴収等に関する法律
第四条の二
2 保険関係が成立している事業の事業主は、前項に規定する事項のうち厚生労働省令で定める事項に変更があつたときは、厚生労働省令で定める期間内にその旨を政府に届け出なければならない。
(変更事項の届出)
労働保険の保険料の徴収等に関する法律施行規則
第五条 法第四条の二第二項の厚生労働省令で定める事項は、次のとおりとする。
一 事業主の氏名又は名称及び住所又は所在地
二 事業の名称
三 事業の行われる場所
四 事業の種類
五 有期事業にあつては、事業の予定される期間
本肢は、「変更事項の届出」に関する問題です。
上記根拠条文の「法第4条の2第2項」にあるとおり、保険関係が成立している事業の一定の事項に変更が生じた場合は、政府に届けなければならない、とされています。
一定の事項と言うのは、上記根拠条文「則第5条」に規定されている5つの項目です。
これらの変更事由に関して、次の事項を記載した届書を、政府(所轄労働基準監督署長又は所轄公共職業安定所長)に提出することとなります。
① 労働保険番号
② 変更を生じた事項とその変更内容
③ 変更の理由
④ 変更年月日
細かく覚える必要はなく、実務では届出書の書式として上記項目を書くように枠がありますので、覚えていなくても書かなければいけないことには気づきます。
本肢は○です。
雇用保険法 令和4年第問 D
政府は、労働保険の事業に要する費用にあてるため保険料を徴収するが、当該費用は、保険給付に要する費用、社会復帰促進等事業及び雇用安定等の事業に要する費用、事務の遂行に要する費用(人件費、旅費、庁費等の事務費)、その他保険事業の運営のために要する一切の費用をいう。
法第10条第1項
根拠条文を確認します。
(労働保険料)
労働保険の保険料の徴収等に関する法律
第十条 政府は、労働保険の事業に要する費用にあてるため保険料を徴収する。
本肢は、「労働保険料」に関する問題です。
上記根拠条文のとおり、「政府は、労働保険の事業に要する費用にあてるため保険料を徴収する」とされています。
この「労働保険の事業に要する費用」の具体的な内容については、下記の通りとされています。
・保険給付に要する費用
・社会復帰促進等事業及び雇用安定等の事業に要する費用
・事務の遂行に要する費用(人件費、旅費、庁費等の事務費)
・その他保険事業の運営のために要する一切の費用
細かく覚える必要はないので、「事業に要する費用…というといろいろあるよね…」と一読しておけばよいかな…と思います。
本肢は○です。
雇用保険法 令和4年第問 E
政府は、労働保険料その他労働保険徴収法の規定による徴収金を納付しない事業主に対して、同法第27条に基づく督促を行ったにもかかわらず、督促を受けた当該事業主がその指定の期限までに労働保険料その他同法の規定による徴収金を納付しないとき、同法に別段の定めがある場合を除き、政府は、当該事業主の財産を差し押さえ、その財産を強制的に換価し、その代金をもって滞納に係る労働保険料等に充当する措置を取り得る。
法第27条第3項
根拠条文を確認します。
(督促及び滞納処分)
労働保険の保険料の徴収等に関する法律
第二十七条
3 第一項の規定による督促を受けた者が、その指定の期限までに、労働保険料その他この法律の規定による徴収金を納付しないときは、政府は、国税滞納処分の例によつて、これを処分する。
本肢は「督促及び滞納処分」に関する問題です。
保険料を払わずにいると、もちろんですが「早く払いなさい!」と督促を受けます。
そして、その督促を受けたのにも関わらず、やはり支払わない状況が続くと、「いい加減にしなさいよ」と「国税滞納処分」という重ための対応をしますよ…ということが、上記根拠条文に規定されています。
国税滞納処分では、事業主の財産を差し押さえ、その財産を換金し滞納している労働保険料に充てることとなります。
こういう状況に陥らないように、しっかりと労働保険料を納めることが大切ですね。
本肢は○です。