高年齢雇用継続給付に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
雇用保険法 令和4年第5問 A
60歳に達した被保険者(短期雇用特例被保険者及び日雇労働被保険者を除く。)であって、57歳から59歳まで連続して20か月間基本手当等を受けずに被保険者でなかったものが、当該期間を含まない過去の被保険者期間が通算して5年以上であるときは、他の要件を満たす限り、60歳に達した日の属する月から高年齢雇用継続基本給付金が支給される。
雇用保険に関する業務取扱要領 59011
根拠となる要領を確認します。
2 基本給付金の対象者等
雇用保険に関する業務取扱要領
59011(1)基本給付金の受給資格
ハ 具体的には、以下の場合に基本給付金の受給資格者となる。
(イ) 60 歳に達した一般被保険者(以下「60 歳到達者」という。)であって、60 歳に達した日(60 歳の誕生日の前日)(以下「60 歳到達時」という。)において被保険者であった期間(短期雇用特例被保険者であった期間を含む。以下同じ。)が通算して 5 年以上である場合
(例示 3)1 年を超えた期間は通算できない
本肢は、「基本給付金の受給資格」に関する問題です。
このような問題は、落ち着いて事例を整理しましょう。
・57歳から59歳まで20か月間被保険者でなかった
・被保険者期間は通算して5年以上
被保険者期間としては受給資格を満たしているものの、その間に1年以上長期の被保険者でない期間があった場合、どうなるのでしょうか。
上記引用した要領によると、「1年を超えた期間は通算できない」とあります。
したがって、本問のような場合は、57~59歳の間に大きな空白期間があることで、その前後の被保険者期間を通算できないことになり、結果としては5年以上の要件を満たさないことになりますので、「高年齢雇用継続基本給付金」は支給されないこととなります。
本肢は×です。
雇用保険法 令和4年第5問 B
支給対象期間の暦月の初日から末日までの間に引き続いて介護休業給付の支給対象となる休業を取得した場合、他の要件を満たす限り当該月に係る高年齢雇用継続基本給付金を受けることができる。
雇用保険に関する業務取扱要領 59013
根拠となる要領を確認します。
59013(3)支給対象月における支給要件
雇用保険に関する業務取扱要領
ニ 雇用月において育児休業給付又は介護休業給付の支給を受けることができないこと。
したがって、当該休業を取得したことにより、雇用月の初日から末日までの間に引き続いて育
児休業給付又は介護休業給付の支給対象となる休業を取得していた場合は、当該雇用月に係る高年齢雇用継続給付の支給はなされない。
本肢は、「支給対象月における支給要件」に関する問題です。
問題文にあるように「支給対象期間の暦月の初日から末日までの間に引き続いて介護休業給付の支給対象となる休業を取得した場合」でも、「高年齢雇用継続基本給付金」を受けることはできるのでしょうか。
上記根拠要領の中に「当該休業を取得したことにより、雇用月の初日から末日までの間に引き続いて育
児休業給付又は介護休業給付の支給対象となる休業を取得していた場合は、当該雇用月に係る高年齢雇用継続給付の支給はなされない。」とあります。
イメージとしては、自分に与えられた給付金の回数券を、育児休業給付や介護休業給付に使ってしまった期間については、重ねて高年齢雇用継続給付の支給はされない(回数券がない)という感じですね。
本肢は×です。
雇用保険法 令和4年第5問 C
高年齢再就職給付金の支給を受けることができる者が同一の就職につき再就職手当の支給を受けることができる場合、その者の意思にかかわらず高年齢再就職給付金が支給され、再就職手当が支給停止となる。
法第61条の2第4項
根拠条文を確認します。
(高年齢再就職給付金)
雇用保険法
第六十一条の二
4 高年齢再就職給付金の支給を受けることができる者が、同一の就職につき就業促進手当(第五十六条の三第一項第一号ロに該当する者に係るものに限る。以下この項において同じ。)の支給を受けることができる場合において、その者が就業促進手当の支給を受けたときは高年齢再就職給付金を支給せず、高年齢再就職給付金の支給を受けたときは就業促進手当を支給しない。
本肢は、「高年齢再就職給付金」に関する問題です。
就業促進手当と高年齢再就職給付金の調整が論点となります。
一方を受給すればもう一方が受給されない…というのは感覚的に「そうかも…」という方が多いかもしれません。
問題は、その選択を自分でできるのか、デフォルトが一方に決まっていて本人の意思は考慮されないのか…となります。
この点、上記根拠要領には、「その者が再就職手当の支給を受けたときは高年齢再就職給付金を支給せず、高年齢再就職給付金の支給を受けたときは再就職手当を支給しない」と記載があります。
この表現からするに、本人にどちらの給付を受給するかの選択権があることがわかりますね。
本肢は×です。
雇用保険法 令和4年第5問 D
高年齢雇用継続基本給付金の受給資格者が、被保険者資格喪失後、基本手当の支給を受けずに8か月で雇用され被保険者資格を再取得したときは、新たに取得した被保険者資格に係る高年齢雇用継続基本給付金を受けることができない。
雇用保険に関する業務取扱要領 59311
根拠となる要領を確認します。
59311(1)基本給付金の受給資格者が被保険者資格を喪失した場合
雇用保険に関する業務取扱要領
イ 基本給付金の受給資格者が、被保険者資格喪失後、基本手当の支給を受けずに、1 年以内に雇用され被保険者資格を再取得したときは、新たに取得した被保険者資格についても引き続き基本給付金の受給資格者となり得る。
本肢は、「基本給付金の受給資格者が被保険者資格を喪失した場合」に関する問題です。
・高年齢雇用継続基本給付金の受給資格者が被保険者資格を喪失
・その後、基本手当の支給を受けずに、1年以内に雇用され被保険者資格を再取得した
このようなケースの場合、再取得後の被保険者資格について引き続き基本給付金の受給資格者となり得るのでしょうか。
上記根拠要領によれば、「なり得る」とされています。
・基本手当を受給していない
・1年以内に再就職
ということで、従前の被保険者資格と継続性があると判断されるわけですね。
本肢は×です。
雇用保険法 令和4年第5問 E
高年齢再就職給付金の受給資格者が、被保険者資格喪失後、基本手当の支給を受け、その支給残日数が80日であった場合、その後被保険者資格の再取得があったとしても高年齢再就職給付金は支給されない。
法第61条の2第1項
根拠条文を確認します。
(高年齢再就職給付金)
雇用保険法
第六十一条の二 高年齢再就職給付金は、受給資格者(その受給資格に係る離職の日における第二十二条第三項の規定による算定基礎期間が五年以上あり、かつ、当該受給資格に基づく基本手当の支給を受けたことがある者に限る。)が六十歳に達した日以後安定した職業に就くことにより被保険者となつた場合において、当該被保険者に対し再就職後の支給対象月に支払われた賃金の額が、当該基本手当の日額の算定の基礎となつた賃金日額に三十を乗じて得た額の百分の七十五に相当する額を下るに至つたときに、当該再就職後の支給対象月について支給する。ただし、次の各号のいずれかに該当するときは、この限りでない。
一 当該職業に就いた日(次項において「就職日」という。)の前日における支給残日数が、百日未満であるとき。
二 当該再就職後の支給対象月に支払われた賃金の額が、支給限度額以上であるとき。
本肢は「高年齢再就職給付金」に関する問題です。
・高年齢再就職給付金の受給資格者が被保険者資格を喪失
・その後、基本手当の支給を受け、支給残日数が80日
・その後、被保険者資格を再取得した
このようなケースの場合、再度「高年齢再就職給付金」は支給されるのでしょうか。
この点、上記根拠条文では「支給残日数が100日未満であるとき、支給しない」とあります。
残りの日数が100日未満になったということは、従前の高年齢再就職給付金の恩恵をある程度は受けた、とみなされ、いったん失効するようなイメージですね。
本肢は○となり、本問の正解となります。