社会保険労務士試験【労働基準法】<令和4年第5問>

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労働基準法に定める労働契約等に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

労働基準法 令和4年第5問 A

社会保険労務士の国家資格を有する労働者について、労働基準法第14条に基づき契約期間の上限を5年とする労働契約を締結するためには、社会保険労務士の資格を有していることだけでは足りず、社会保険労務士の名称を用いて社会保険労務士の資格に係る業務を行うことが労働契約上認められている等が必要である。

解答の根拠

法第14条第1項第1号 / 平成15年10月22日基発1022001号

根拠条文・通達を確認します。

(契約期間等)
第十四条 労働契約は、期間の定めのないものを除き、一定の事業の完了に必要な期間を定めるもののほかは、三年(次の各号のいずれかに該当する労働契約にあつては、五年)を超える期間について締結してはならない。
 専門的な知識、技術又は経験(以下この号及び第四十一条の二第一項第一号において「専門的知識等」という。)であつて高度のものとして厚生労働大臣が定める基準に該当する専門的知識等を有する労働者(当該高度の専門的知識等を必要とする業務に就く者に限る。)との間に締結される労働契約

労働基準法

第1 有期労働契約(法第14条、第137条及び改正法附則第3条関係)
1 契約期間の上限(法第14条第1項関係)
ア 法第14条第1項第1号に掲げる労働契約
(ウ) 特例基準第2号関係
本号において、契約期間の上限を5年とする労働契約を締結することができるのは、上記(イ)の考え方と同様に、労働者が本号に掲げる国家資格を有していることだけでは足りず、当該国家資格の名称を用いて当該国家資格に係る業務を行うことが労働契約上認められている等が必要であるものであること。

労働基準法の一部を改正する法律の施行について(平成15年10月22日基発1022001号)

本肢は、「労働契約期間」に関する問題です。

労働契約期間は、上記の法第14条に規定がある通り、
・原則上限…3年
・例外上限…5年

となっています。

その例外の一つに、「専門的な知識、技術又は経験であつて高度のものとして厚生労働大臣が定める基準に該当する専門的知識等を有する労働者との間に締結される労働契約」があり、本肢はこちらの内容を問う問題となっています。

もちろんですが、今回で言えば社労士の資格を持っていても、例えば社労士の分野に全然関係ない仕事をやっていたら、せっかくの専門的な知識も活用できていない状態ですので、この例外には当てはまらない…となるわけですね。

ということで結論としては、上記通達にある通り、「当該国家資格の名称を用いて当該国家資格に係る業務を行うことが労働契約上認められている等が必要」となります。

本肢は○となる、本問の正解となります。

労働基準法 令和4年第5問 B

労働基準法第15条第3項にいう「契約解除の日から14日以内」であるとは、解除当日から数えて14日をいい、例えば、9月1日に労働契約を解除した場合は、9月1日から9月14日までをいう。

解答の根拠

法第15条第3項

根拠条文を確認します。

(労働条件の明示)
第十五条
 前項の場合、就業のために住居を変更した労働者が、契約解除の日から十四日以内に帰郷する場合においては、使用者は、必要な旅費を負担しなければならない。

労働基準法

本肢は、「契約解除時の帰郷旅費」に関する問題です。

14日の具体的なカウント方法が論点となっています。

労働基準法には特段期間計算に関する定めがありませんので、その場合は一般法である民法の定めに従います。

民法の第140条に「初日不算入」という定めがあります。

例えば問題文に「9月1日に労働契約を解除した場合」とあります。

「9月1日の何時に」…とは書いていませんが、普通に考えれば、社会的な活動時間…10時とか、15時とか、そんな感じですよね。

そうすると、例えば15時なら、9月1日の半分以上が過ぎた時間となりますので、その日も「1日=24時間」とカウントするのは、少しおかしい感じがしますよね。

ということで、民法では「初日はノーカウント(不算入)」というルールがあるわけです。

では、このルールを本肢に当てはめてみますと、カウントスタートは9月2日から、となります。

そこから14日後…となると、9月15日となりますね。

本肢は×です。

労働基準法 令和4年第5問 C

労働基準法第16条のいわゆる「賠償予定の禁止」については、違約金又はあらかじめ定めた損害賠償額を現実に徴収したときにはじめて違反が成立する。

解答の根拠

法第16条

根拠条文を確認します。

(賠償予定の禁止)
第十六条 使用者は、労働契約の不履行について違約金を定め、又は損害賠償額を予定する契約をしてはならない。

労働基準法

本肢は、「賠償予定の禁止」に関する問題です。

法第16条違反は、
・違約金又は損害賠償額を予定する契約を締結した時点
・違約金又は損害賠償額を現実に徴収した時点

どっちのタイミングで該当することになるのでしょうか。

もちろんですが、法第16条をよく読むと「~契約をしてはならない」とありますので、契約すること自体がアウト、と読めますよね。

ということで、前者の「契約締結時」に違反となります。

本肢は×です。

労働基準法 令和4年第5問 D

「前借金」とは、労働契約の締結の際又はその後に、労働することを条件として使用者から借り入れ、将来の賃金により弁済することを約する金銭をいい、労働基準法第17条は前借金そのものを全面的に禁止している。

解答の根拠

法第17条

根拠条文を確認します。

(前借金相殺の禁止)
第十七条 使用者は、前借金その他労働することを条件とする前貸の債権と賃金を相殺してはならない。

労働基準法

本肢は、「前借金総裁の禁止」に関する問題です。

本肢も、肢Cと同様に、条文が正確に頭に入っていれば確実に正誤が判断できる問題です。

問題文には「全面的に禁止している」とありますが、上記根拠条文にある通り、「前借金その他労働することを条件とする前貸の債権」自体を禁止しているのではなく、それらの債権と賃金を「相殺する」ことを禁止しています。

賃金と相殺することを許してしまうと、「仕事を辞めたくても、借金返すまで辞められない」状況に陥る労働者が発生してしまうからですね。

裏を返すと、賃金が守られている状態での前借金等は問題ありません。

普通の会社でも、よく社員への貸付が行われています。

本肢は×です。

労働基準法 令和4年第5問 E

労働基準法第22条第1項に基づいて交付される証明書は、労働者が同項に定める法定記載事項の一部のみが記入された証明書を請求した場合でも、法定記載事項をすべて記入しなければならない。

解答の根拠

法第22条第3項

根拠条文を確認します。

(退職時等の証明)
第二十二条 労働者が、退職の場合において、使用期間、業務の種類、その事業における地位、賃金又は退職の事由(退職の事由が解雇の場合にあつては、その理由を含む。)について証明書を請求した場合においては、使用者は、遅滞なくこれを交付しなければならない。
 労働者が、第二十条第一項の解雇の予告がされた日から退職の日までの間において、当該解雇の理由について証明書を請求した場合においては、使用者は、遅滞なくこれを交付しなければならない。ただし、解雇の予告がされた日以後に労働者が当該解雇以外の事由により退職した場合においては、使用者は、当該退職の日以後、これを交付することを要しない。
 前二項の証明書には、労働者の請求しない事項を記入してはならない。

労働基準法

本肢は「退職時等の証明」に関する問題です。

問題文には「労働者が同項に定める法定記載事項の一部のみが記入された証明書を請求した場合でも、法定記載事項をすべて記入しなければならない。」とありますが、本当にそうなのでしょうか…。

上記根拠条文の第3項には「前2項の証明書には、労働者の請求しない事項を記入してはならない」と規定されていますね。

ということで、「すべて記入しなければならない。」というのは誤りになります。

労働者が請求しない事項は、もちろん当該労働者が知られたくないことですから、本人が望んでいないのにわざと書くのは意地悪ですよね…。

本肢は×です。

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