社会保険労務士試験【国民年金法】<令和3年第10問>

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年金たる給付に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

国民年金法 令和3年第10問 A

41歳から60歳までの19年間、第1号厚生年金被保険者としての被保険者期間を有している70歳の妻(昭和26年3月2日生まれ)は、老齢厚生年金と老齢基礎年金を受給中である。妻には、22歳から65歳まで第1号厚生年金被保険者としての被保険者期間を有している夫(昭和31年4月2日生まれ)がいる。当該夫が65歳になり、老齢厚生年金の受給権が発生した時点において、妻の年間収入が850万円未満であり、かつ、夫と生計を同じくしていた場合は、当該妻に振替加算が行われる。

解答の根拠

昭60法附則第14条第2項

根拠条文を確認します。

(老齢基礎年金の額の加算等)
第十四条 老齢基礎年金の額は、受給権者(略)が、大正十五年四月二日から昭和四十一年四月一日までの間に生まれた者であつて、六十五歳に達した日において、次の各号のいずれかに該当するその者の配偶者(略)によつて生計を維持していたとき(略)は、附則第十七条並びに国民年金法第二十七条及び第二十八条並びに附則第九条の二、第九条の二の二及び第九条の四の五の規定にかかわらず、これらの規定に定める額に、二十二万四千七百円に同法第二十七条に規定する改定率(以下「改定率」という。)を乗じて得た額(略)にその者の生年月日に応じて政令で定める率を乗じて得た額を加算した額とする。ただし、その者が老齢厚生年金、退職共済年金その他の老齢又は退職を支給事由とする給付であつて政令で定めるものを受けることができるときは、この限りでない。
 大正十五年四月二日から昭和四十一年四月一日までの間に生まれた者が六十五歳に達した日以後にその者の配偶者が前項各号のいずれかに該当するに至つた場合において、その当時その者がその者の配偶者によつて生計を維持していたときは、その者に対する老齢基礎年金の額は、附則第十七条並びに国民年金法第二十七条及び第二十八条並びに附則第九条の二、第九条の二の二及び第九条の四の五の規定にかかわらず、これらの規定に定める額に同項に規定する加算額を加算した額とする。ただし、その者が同項ただし書に該当するときは、この限りでない。

国民年金法

本肢は、「振替加算」に関する問題です。

上記根拠条文の2項には、大正15年4月2日~昭和41年4月1日生まれの者が65歳に達した際の振替加算の内容が規定されています。

この2項の最後に「ただし、その者が同項(これは一つ前の1項を指しています)ただし書に該当するときは、この限りではない(振替加算を行わない)」とあります。

1項のただし書きとは、黄色マーカー部分にある「ただし、その者が老齢厚生年金、退職共済年金その他の老齢又は退職を支給事由とする給付であつて政令で定めるものを受けることができるとき」を指しています。

この中の「その者」とは、今回の問題で言うところの「妻」を指しており、問題文にはこの妻が「老齢厚生年金と老齢基礎年金を受給中である」とあります。

したがって、1項のただし書きに該当することになり、振替加算は行われないことになります。

本肢は×です。

国民年金法 令和3年第10問 B

併給の調整に関し、国民年金法第20条第1項の規定により支給を停止されている年金給付の同条第2項による支給停止の解除の申請は、いつでも、将来に向かって撤回することができ、また、支給停止の解除の申請の回数について、制限は設けられていない。

解答の根拠

法第20条第2項・第4項

根拠条文を確認します。

(併給の調整)
第二十条
 前項の規定によりその支給を停止するものとされた年金給付の受給権者は、同項の規定にかかわらず、その支給の停止の解除を申請することができる。ただし、その者に係る同項に規定する他の年金給付又は厚生年金保険法による年金たる保険給付について、この項の本文若しくは次項又は他の法令の規定でこれらに相当するものとして政令で定めるものによりその支給の停止が解除されているときは、この限りでない。
 第二項の申請(前項の規定により第二項の申請があつたものとみなされた場合における当該申請を含む。)は、いつでも、将来に向かつて撤回することができる。

国民年金法

本肢は、「支給停止の解除の申請」に関する問題です。

今回は条文通りの内容となっておりますね。

上記根拠条文の第4項にあるとおり「第2項の申請は、いつでも、将来に向かって撤回することができる」とあります。

また、支給停止の解除の申請の回数についても、特段それに関する条文はありません。

本肢は○となり、本問の正解となります。

国民年金法 令和3年第10問 C

22歳から30歳まで第2号被保険者、30歳から60歳まで第3号被保険者であった女性(昭和33年4月2日生まれ)は、59歳の時に初診日がある傷病により、障害等級3級に該当する程度の障害の状態となった。この者が、当該障害の状態のまま、61歳から障害者の特例が適用され定額部分と報酬比例部分の特別支給の老齢厚生年金を受給していたが、その後当該障害の状態が悪化し、障害等級2級に該当する程度の障害の状態になったため、63歳の時に国民年金法第30条の2第1項(いわゆる事後重症)の規定による請求を行ったとしても障害基礎年金の受給権は発生しない。

解答の根拠

法第30条の2第1項・第3項

根拠条文を確認します。

第三十条の二 疾病にかかり、又は負傷し、かつ、当該傷病に係る初診日において前条第一項各号のいずれかに該当した者であつて、障害認定日において同条第二項に規定する障害等級(以下単に「障害等級」という。)に該当する程度の障害の状態になかつたものが、同日後六十五歳に達する日の前日までの間において、その傷病により障害等級に該当する程度の障害の状態に該当するに至つたときは、その者は、その期間内に同条第一項の障害基礎年金の支給を請求することができる。
 第一項の請求があつたときは、前条第一項の規定にかかわらず、その請求をした者に同項の障害基礎年金を支給する

国民年金法

本肢は、「事後重症」に関する問題です。

事後重症とは、疾病・負傷し、かつ、傷病に係る初診日において所定の要件に該当した者であって、障害認定日において1級または2級の障害等級に該当する程度の障害の状態になかったケースの話です。

「事後」に「重症化する」ということですので、その後、65歳に達する日の前日までの間において、その傷病により1級または2級に該当する程度の障害の状態に該当するに至ったときは、「事後重症による障害基礎年金」の支給を請求することができる、とされています。

今回の問題では、障害者の特例が適用され定額部分と報酬比例部分の特別支給の老齢厚生年金を受給している…とありますが、このようなケースでも、特段、事後重症による障害基礎年金の受給権が発生しない…とする規定は見当たりません。

本肢は×です。

国民年金法 令和3年第10問 D

障害基礎年金の受給権者が、厚生年金保険法第47条第2項に規定する障害等級に該当する程度の障害の状態に該当しなくなった日から起算して同項に規定する障害等級に該当する程度の障害の状態に該当することなく3年を経過した日において、65歳に達していないときでも、当該障害基礎年金の受給権は消滅する。

解答の根拠

法第35条第1項・第3号

根拠条文を確認します。

(失権)
第三十五条 障害基礎年金の受給権は、第三十一条第二項の規定によつて消滅するほか、受給権者が次の各号のいずれかに該当するに至つたときは、消滅する。
 厚生年金保険法第四十七条第二項に規定する障害等級に該当する程度の障害の状態に該当しなくなつた日から起算して同項に規定する障害等級に該当する程度の障害の状態に該当することなく三年を経過したとき。ただし、三年を経過した日において、当該受給権者が六十五歳未満であるときを除く

国民年金法

本肢は、「障害基礎年金の失権」に関する問題です。

障害基礎年金の失権に関しては、上記根拠条文(第35条)に規定があります。

確認すると
・原則…障害の状態に該当することなく3年経過
・例外…3年経過日に65歳未満である場合を除く
とあります。

ちょっとわかりづらいですが、簡単にまとめると、「3年経過」・「65歳に達する」いずれか遅い方に該当したときに、ようやく失権することになるわけですね。

問題文には「65歳に達していないときでも」とありますので、誤りとなります。

本肢は×です。

国民年金法 令和3年第10問 E

第1号被保険者である夫の甲は、前妻との間の実子の乙、再婚した妻の丙、丙の連れ子の丁と4人で暮らしていたところ甲が死亡した。丙が、子のある妻として遺族基礎年金を受給していたが、その後、丙も死亡した。丙が受け取るはずであった当該遺族基礎年金が未支給年金となっている場合、丁は当該未支給年金を受給することができるが、乙は当該未支給年金を受給することができない。なお、丁は甲と養子縁組をしておらず、乙は丙と養子縁組をしていないものとする。

解答の根拠

法第19条第1項・第2項

根拠条文を確認します。

(未支給年金)
第十九条 年金給付の受給権者が死亡した場合において、その死亡した者に支給すべき年金給付でまだその者に支給しなかつたものがあるときは、その者の配偶者、子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹又はこれらの者以外の三親等内の親族であつて、その者の死亡の当時その者と生計を同じくしていたものは、自己の名で、その未支給の年金の支給を請求することができる。
 前項の場合において、死亡した者が遺族基礎年金の受給権者であつたときは、その者の死亡の当時当該遺族基礎年金の支給の要件となり、又はその額の加算の対象となつていた被保険者又は被保険者であつた者の子は、同項に規定する子とみなす。

国民年金法

本肢は「未支給年金」に関する問題です。

まず、未支給年金の原則のルールを確認すると、「年金受給者が亡くなり、未支給年金がある場合は、その者の配子父孫祖兄(はいしふそんそけい…ですね)で生計を同じくしていた者は、自己の名で請求できる」と上記根拠条文第1項に規定があります。

そして、続く第2項では、「遺族基礎年金の子の加算」についてのルールが規定されており、「加算対象の子は、1項の子とみなす」とされています。

これは、どういうケースを想定しての規定なのでしょうか。

今回の問題文のケースで考えてみましょう。

【登場人物】
・甲…夫
・乙…甲と前妻の間の子(甲の連れ子)
・丙…甲と再婚した妻
・丁…丙の連れ子
➡それぞれ養子縁組はしていない

【事象】
①甲が死亡
②丙が遺族基礎年金(A)を受給
③丙が死亡
④遺族基礎年金(A)が丙に支給されていなかった(未支給年金)
➡丁は未支給年金を請求できるが、乙は養子縁組をしていないので丙とつながりがないから請求できない???

この場合、乙が請求できないのは酷ですよね。

乙は遺族基礎年金(A)の子の加算要件の対象者となっており(「丙が、子のある妻として遺族基礎年金を受給」とある)、これが根拠条文第2項の「その額の加算の対象となつていた被保険者又は被保険者であつた者の子」に該当するので、「同項に規定する子とみなす」とされ、乙も未支給年金を請求できることとなります。

このようなケースを想定しての規定だったわけですね。

本肢は×です。

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