国民年金法に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
国民年金法 令和3年第5問 A
年間収入が280万円の第2号被保険者と同一世帯に属している、日本国内に住所を有する年間収入が130万円の厚生年金保険法による障害厚生年金の受給要件に該当する程度の障害の状態にある50歳の配偶者は、被扶養配偶者に該当しないため、第3号被保険者とはならない。
本肢は、「被扶養配偶者の認定基準」に関する問題です。
本肢の根拠は通達ですが、改正が入っており適当な全文が見つけられませんでしたので、以下の通りポイントをまとめます。
●被扶養配偶者の認定基準
年間収入が130万円未満(※)かつ第2号被保険者である配偶者の年間収入の1/2未満
(注):障害を事由とする公的年金受給者の年収は、180万円未満
被扶養配偶者の認定…というと、すぐに「130万円」というのが頭に浮かぶ方が多いと思います。
なので、直観的に×だ!としてしまっていないでしょうか。
問題文をよく読むと「厚生年金保険法による障害厚生年金の受給要件に該当する程度の障害の状態にある」と断り書きがあります。
障害厚生年金の受給を受けられる場合の年収基準は、「180万円」となります。
とすると、130万円で、かつ、配偶者の年収280万円の1/2である140万円未満でもあるので、認定基準を満たし、被扶養者配偶者該当・第3号被保険者となります。
本肢は×です。
国民年金法 令和3年第5問 B
被保険者又は被保険者であった者が、国民年金法その他の政令で定める法令の規定に基づいて行われるべき事務の処理が行われなかったことにより付加保険料を納付する者となる申出をすることができなくなったとして、厚生労働大臣にその旨の申出をしようとするときは、申出書を市町村長(特別区の区長を含む。)に提出しなければならない。
法附則第9条の4の7第1項 / 令第14条の14
根拠条文を確認します。
(特定事由に係る申出等の特例)
国民年金法附則
第九条の四の七 被保険者又は被保険者であつた者は、次の各号のいずれかに該当するときは、厚生労働大臣にその旨の申出をすることができる。
一 特定事由(この法律その他の政令で定める法令の規定に基づいて行われるべき事務の処理が行われなかつたこと又はその処理が著しく不当であることをいう。以下この条及び附則第九条の四の九から第九条の四の十一までにおいて同じ。)により特定手続(第八十七条の二第一項の申出その他の政令で定める手続をいう。以下この条において同じ。)をすることができなくなつたとき。
(以下略)
(法附則第九条の四の七第一項の申出の手続)
国民年金法施行令
第十四条の十四 法附則第九条の四の七第一項の申出をしようとする被保険者又は被保険者であつた者は、申出書を機構に提出しなければならない。
本肢は、「特定事由の申出」に関する問題です。
問題文にあるとおり、何かしらの手違いがあって事務処理がされていなかった(これを特定事由と言います)ために、付加保険料を納付する者となる申出ができなくなった…という場合に、申出により救済措置をうけることができる仕組みがあります。
ただし、その申し出先は、問題文にある「市町村長」ではなく、上記根拠として挙げている施行令にある通り、「日本年金機構」となります。
本肢は×です。
国民年金法 令和3年第5問 C
保険料その他国民年金法の規定による徴収金の納付の督促を受けた者が指定の期限までに保険料その他同法の規定による徴収金を納付しないときは、厚生労働大臣は、国税滞納処分の例によってこれを処分し、又は滞納者の居住地若しくはその者の財産所在地の市町村(特別区を含む。以下本問において同じ。)に対して、その処分を請求することができる。この請求を受けた市町村が、市町村税の例によってこれを処分した場合には、厚生労働大臣は徴収金の100分の4に相当する額を当該市町村に交付しなければならない。
法第96条第4項・第5項
根拠条文を確認します。
(督促及び滞納処分)
国民年金法
第九十六条
1~3(略)
4 厚生労働大臣は、第一項の規定による督促を受けた者がその指定の期限までに保険料その他この法律の規定による徴収金を納付しないときは、国税滞納処分の例によつてこれを処分し、又は滞納者の居住地若しくはその者の財産所在地の市町村に対して、その処分を請求することができる。
5 市町村は、前項の規定による処分の請求を受けたときは、市町村税の例によつてこれを処分することができる。この場合においては、厚生労働大臣は、徴収金の百分の四に相当する額を当該市町村に交付しなければならない。
本肢は、「滞納処分」に関する問題です。
被保険者が保険料納めない→督促を受けても納めない…、という場合、次の打ち手は、「滞納処分」となります。
上記根拠条文によれば、
・厚生労働大臣が市町村に対して滞納処分を請求する
・請求を受けた市町村は市町村税の例で処分する
・厚生労働大臣は徴収金の100分の4に相当する額を市町村に交付する
となっています。
ということで、問題文の内容は、上記根拠条文の内容の通りとなります。
本肢は○となり、本問の正解となります。
国民年金法 令和3年第5問 D
共済組合等が共済払いの基礎年金(国民年金法施行令第1条第1項第1号から第3号までに規定する老齢基礎年金、障害基礎年金及び遺族基礎年金であって厚生労働省令で定めるものをいう。)の支払に関する事務を行う場合に、政府はその支払に必要な資金を日本年金機構に交付することにより当該共済組合等が必要とする資金の交付をさせることができる。
令第16条第1項・第2項
根拠条文を確認します。
(資金の交付)
国民年金法施行令
第十六条 政府は、前条第一項の規定により共済組合等が共済払いの基礎年金の支払に関する事務を行う場合には、その支払に必要な資金を当該共済組合等に交付するものとする。
2 政府は、前項の規定による資金の交付をするときは、必要な資金を日本銀行に交付して、同項の規定による資金の交付をさせることができる。
本肢は、「共済組合等への資金交付」に関する問題です。
共済組合等が年金支払い事務を行うことがあります。
その場合に、年金の原資になる資金をどのように国(政府)から受け取るのか、というのが本肢の論点です。
問題文では「日本年金機構」経由で資金交付するとなっていますが、正しくは上記根拠条文のとおり「日本銀行」経由で資金交付する、となっています。
本肢は×です。
国民年金法 令和3年第5問 E
国庫は、当該年度における20歳前傷病による障害基礎年金の給付に要する費用について、当該費用の100分の20に相当する額と、残りの部分(100分の80)の4分の1に相当する額を合計した、当該費用の100分の40に相当する額を負担する。
法第85条第1項第1号・第3号
根拠条文を確認します。
(国庫負担)
国民年金法
第八十五条 国庫は、毎年度、国民年金事業に要する費用(次項に規定する費用を除く。)に充てるため、次に掲げる額を負担する。
一 当該年度における基礎年金(老齢基礎年金、障害基礎年金及び遺族基礎年金をいう。以下同じ。)の給付に要する費用の総額(次号及び第三号に掲げる額を除く。以下「保険料・拠出金算定対象額」という。)から第二十七条第三号、第五号及び第七号に規定する月数を基礎として計算したものを控除して得た額に、一から各政府及び実施機関に係る第九十四条の三第一項に規定する政令で定めるところにより算定した率を合算した率を控除して得た率を乗じて得た額の二分の一に相当する額
二(略)
三 当該年度における第三十条の四の規定による障害基礎年金の給付に要する費用の百分の二十に相当する額
本肢は「国庫負担」に関する問題です。
国庫負担にもいくつかパターンがありますが、今回は「20歳前傷病による障害基礎年金」のケースです。
まず、上記根拠条文の第85条第1項第3号にある「第三十条の四の規定による障害基礎年金」というのが、いわゆる「20歳前傷病による障害基礎年金」を指しており、100分の20の国庫負担があることがわかります。
加えて、同条の1号に戻りまして、その100分の20の額を「除いた」部分に対する部分の2分の1が国庫負担されることが規定されています。
問題文では、残りの部分に対する国庫負担が「4分の1」となっているため、誤りとなります。
本肢は×です。