社会保険労務士試験【厚生年金保険法】<令和3年第2問>

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厚生年金保険法に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

厚生年金保険法 令和3年第2問 A

厚生年金保険の被保険者期間の月数にかかわらず、60歳以上の厚生年金保険の被保険者期間は、老齢厚生年金における経過的加算額の計算の基礎とされない。

解答の根拠

昭60法附則第59条第2項

根拠条文を確認します。

(老齢厚生年金の額の計算の特例)
第五十九条
 老齢厚生年金(略)の額は、当分の間、第一号に掲げる額が第二号に掲げる額を超えるときは、同法第四十三条第一項及び第四十四条第一項の規定にかかわらず、これらの規定に定める額に第一号に掲げる額から第二号に掲げる額を控除して得た額を加算した額とする。
 千六百二十八円に改定率を乗じて得た額(略)に厚生年金保険の被保険者期間(略)の月数(当該月数が四百八十を超えるときは、四百八十とする。)を乗じて得た額
 国民年金法第二十七条本文に規定する老齢基礎年金の額にイに掲げる数をロに掲げる数で除して得た数を乗じて得た額

厚生年金保険法昭60法附則

本肢は、「老齢厚生年金の経過的加算」に関する問題です。

経過的加算については、上記の根拠条文に従って支給額が決定します。

もう少しわかりやすく表現すると…

・第59条第2項第1号…1628円に改定率を乗じて得た額に被保険者数を乗じて得た額
→いわゆる「特別支給の老齢厚生年金の定額部分の金額」【1】

・第59条第2項第2号…厚生年金保険の被保険者期間のうち昭和36年4月以降で20歳以上60歳未満の期間の老齢基礎年金相当額【2】

・経過的加算額…【1】ー【2】

このうち、【1】については、第59条第2項第1号のかっこ書きに「当該月数が480を超えるときは、480とする」とありますので、その上限に達していなければ加味されることとなります。

したがって「…月数に関わらず…基礎とされない」としている問題文は誤りとなります。

本肢は×です。

厚生年金保険法 令和3年第2問 B

経過的加算額の計算においては、第3種被保険者期間がある場合、当該被保険者期間に係る特例が適用され、当該被保険者期間は必ず3分の4倍又は5分の6倍される。

解答の根拠

昭60法附則第59条第2項

論点としては、一つ前の肢Aと同じになります。

肢Aの解説で示した【2】の老齢基礎年金相当額の計算に関する出題です。

この場合ですが、第3種被保険者期間があるときは、当該被保険者期間に係る特例は適用されず、実期間での計算となることに注意が必要です。

そのため、問題文にある「必ず3分の4倍又は5分の6倍される」という点が誤りになります。

なお、たいてい「必ず」と書いてある問題文は誤りであることが多いですね…(絶対とは言い切れませんが)

本肢は×です。

厚生年金保険法 令和3年第2問 C

第1号厚生年金被保険者(船員被保険者を除く。)の資格喪失の届出が必要な場合は、当該事実があった日から10日以内に、所定の届書又は所定の届書に記載すべき事項を記録した光ディスクを日本年金機構に提出しなければならない。

解答の根拠

則第22条第1項

根拠条文を確認します。

(被保険者の資格喪失の届出)
第二十二条 法第二十七条の規定による被保険者(船員被保険者を除く。)の資格喪失の届出は、当該事実があつた日から五日以内に、厚生年金保険被保険者資格喪失届・七十歳以上被用者不該当届(様式第十一号又は様式第十一号の二)又は当該届書に記載すべき事項を記録した光ディスクを機構に提出することによつて行うものとする。

厚生年金保険法施行規則

基本的な届出期限に関する問題なので、確実に押さえておきましょう。

上記根拠条文の通り、船員被保険者を除く被保険者の資格喪失の届出は5日以内となっています。

「5日」というのは、社会保険関連の届出の原則なので、まずは5日と覚え、それに該当しないイレギュラーなケース(下記肢Dの船員保険など)を押さえておくと効率的ですね。

本肢は×です。

厚生年金保険法 令和3年第2問 D

船員被保険者の資格喪失の届出が必要な場合は、当該事実があった日から14日以内に、被保険者の氏名など必要な事項を記載した届書を日本年金機構に提出しなければならない。

解答の根拠

則第22条第4項

根拠条文を確認します。

(被保険者の資格喪失の届出)
第二十二条
 法第二十七条の規定による船員被保険者の資格喪失の届出は、当該事実があつた日から十日以内に、次に掲げる事項を記載した届書を機構に提出することによつて行うものとする。(以下省略)

厚生年金保険法施行規則

肢Cに続き、基本的な届出期限に関する問題なので、確実に押さえておきましょう。

上記根拠条文の通り、船員被保険者の資格喪失の届出は10日以内となっています。

本肢は×です。

厚生年金保険法 令和3年第2問 E

老齢厚生年金の受給権を取得することにより、適用事業所に使用される高齢任意加入被保険者が資格を喪失した場合には、資格喪失の届出は必要ない。

解答の根拠

則第22条第1項第2号 / 法附則第4条の3第5項第2号

根拠条文を確認します。

(被保険者の資格喪失の届出)
第二十二条 法第二十七条の規定による被保険者(船員被保険者を除く。)の資格喪失の届出は、当該事実があつた日から五日以内に、厚生年金保険被保険者資格喪失届・七十歳以上被用者不該当届(様式第十一号又は様式第十一号の二)又は当該届書に記載すべき事項を記録した光ディスクを機構に提出することによつて行うものとする。ただし、被保険者が次のいずれかに該当するときは、この限りでない。
 (略)
 法附則第四条の三第一項の規定による被保険者が同条第四項の規定によつて資格を喪失したとき又は同条第五項第二号若しくは第六項に該当することにより資格を喪失したとき

厚生年金保険法施行規則

(高齢任意加入被保険者)
第四条の三 適用事業所に使用される七十歳以上の者であつて、老齢厚生年金、国民年金法による老齢基礎年金その他の老齢又は退職を支給事由とする年金たる給付であつて政令で定める給付の受給権を有しないもの(第十二条各号に該当する者を除く。)は、第九条の規定にかかわらず、実施機関に申し出て、被保険者となることができる。
 (略)
 第一項の規定による被保険者は、第十四条第一号、第二号若しくは第四号又は次の各号のいずれかに該当するに至つた日の翌日(その事実があつた日に更に被保険者の資格を取得したときは、その日)に、被保険者の資格を喪失する。
 第八条第一項の認可があつたとき。
二 第一項に規定する政令で定める給付の受給権を取得したとき。
 前項の申出が受理されたとき。

厚生年金保険法附則

本肢は「高齢任意加入被保険者が老齢厚生年金の受給権を取得したことにより被保険者資格を喪失した際に、届出は必要か」というのが論点です。

結論としては「不要」です。

まず条文を確認すると、以下の整理になります。

・「則第22条第1項第2号」で、「法附則第四条の三第一項の規定による被保険者が同条第五項第二号によつて資格を喪失したとき」は資格喪失の届出が不要、と規定されている。

・「法附則第四条の三第五項第二号」で、「第一項に規定する給付(老齢厚生年金)の受給権を取得したとき」と規定されている。

したがって、「老齢厚生年金の受給権を取得した場合は、資格喪失の届出は不要」となるわけですね。

理由としては、老齢厚生年金の受給権を取得すれば、年金事務所が当該高齢任意加入被保険者に変更が生じたことがわかるわけで、それに重ねて資格喪失の届出をしなくても「もうわかっているから大丈夫!」となるわけですね。

無駄な届出は、届出をする方にも受ける方にも良い事はないので、省略!とされているわけですね。

本肢は○となり、本問の正解となります。

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