社会保険労務士試験【労働者災害補償保険法】<令和6年第4問>

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複数事業労働者(事業主が同一人でない2以上の事業に使用される労働者)の業務災害に係る保険給付に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
なお、A・Bにおいて、休業補償給付は、①「療養のため」②「労働することができない」ために③「賃金を受けない日」という三要件を満たした日の第4日目から支給されるものである(労災保険法第14条第1項本文)
また、C・Dにおいて、複数事業労働者につき、業務災害が発生した事業場を「災害発生事業場」と、それ以外の事業場を「非災害発生事業場」といい、いずれにおいても、当該労働者の離職時の賃金が不明である場合は考慮しない。

労働者災害補償保険法 令和6年第4問 A

休業補償給付が支給される三要件のうち「労働することができない」に関して、業務災害に被災した複数事業労働者が、現に一の事業場において労働者として就労しているものの、他方の事業場において当該業務災害に係る通院のため、所定労働時間の全部又は一部について労働することができない場合には、「労働することができない」に該当すると認められることがある。

解答の根拠

複数事業労働者の休業(補償)等給付に係る部分算定日等の取扱いについて(令和3年3月18日基保発0318第1号)

根拠通達を確認します。

1 複数事業労働者に係る休業(補償)等給付の支給要件について
(2) 「労働することができない」
上記(1)②の「労働することができない」とは、必ずしも負傷直前と同一の労働ができないという意味ではなく、一般的に働けないことをいう。したがって、軽作業に就くことによって症状の悪化が認められない場合、あるいはその作業に実際に就労した場合には、給付の対象とはならない。
このため、複数事業労働者については、複数就業先における全ての事業場における就労状況等を踏まえて、休業(補償)等給付に係る支給の要否を判断する必要がある。例えば、複数事業労働者が、現に一の事業場において労働者として就労した場合には、原則、「労働することができない」とは認められないことから、下記(3)の「賃金を受けない日」に該当するかの検討を行う必要はなく、休業(補償)等給付に係る保険給付については不支給決定となる。
ただし、複数事業労働者が、現に一の事業場において労働者として就労しているものの、他方の事業場において通院等のため、所定労働時間の全部又は一部について労働することができない場合には、労災法第14条第1項本文の「労働することができない」に該当すると認められることがある。

複数事業労働者の休業(補償)等給付に係る部分算定日等の取扱いについて(令和3年3月18日基保発0318第1号)

本肢は、「複数事業労働者の休業(補償)等給付に係る部分算定日等の取扱い」に関する問題です。

複数事業で働いている休業補償給付の支給対象となる労働者について、A事業では働けるが、B事業では働けない場合、休業補償給付は支給されるのかされないのか。

原則として、休業補償給付の支給要件である「労働することができない」については、広く一般的に「働けない」状況を指すと言われています。

したがって、B事業で働けるのであれば、支給要件に該当しないこととなります。

しかし、上記根拠通達にあるとおり、「現に一の事業場において労働者として就労しているものの、他方の事業場において通院等のため、所定労働時間の全部又は一部について労働することができない場合には、労災法第14条第1項本文の「労働することができない」に該当すると認められることがある」とされています。

解答テクニック的な話になりますが、問題文の文末が「~することがある」というような曖昧に結ばれている場合は、○であることが多いです。

世の中には、100%断言できることはそんなに多くないので。

本肢は○です。

労働者災害補償保険法 令和6年第4問 B

休業補償給付が支給される三要件のうち「賃金を受けない日」に関して、被災した複数事業労働者については、複数の就業先のうち、一部の事業場において、年次有給休暇等により当該事業場における平均賃金相当額(複数事業労働者を使用する事業ごとに算定した平均賃金に相当する額をいう。)の60%以上の賃金を受けることにより「賃金を受けない日」に該当しない状態でありながら、他の事業場において、当該業務災害による傷病等により無給での休業をしているため、「賃金を受けない日」に該当する状態があり得る。

解答の根拠

複数事業労働者の休業(補償)等給付に係る部分算定日等の取扱いについて(令和3年3月18日基保発0318第1号)

根拠条文を確認します。

1 複数事業労働者に係る休業(補償)等給付の支給要件について
(3) 「賃金を受けない日」
上記(1)③の「賃金を受けない日」には、賃金の全部を受けない日と一部を受けない日とを含むが、賃金の一部を受けない日については、昭和40年7月31日付け基発第901号「労働者災害補償保険法の一部を改正する法律の施行について」及び昭和40年9月15日付け基災発第14号「労災保険法第12条第1項第2号の規定による休業補償費の支給について」に基づき、次の日であると解される。
① 所定労働時間の全部について「労働することができない」場合であって、平均賃金(労働基準法(昭和22年法律第49号)第12条の平均賃金をいう。以下同じ。)の60%未満の金額しか受けない日
② 通院等のため所定労働時間の一部について「労働することができない」場合であって、当該一部休業した時間について全く賃金を受けないか、又は「平均賃金と実労働時間に対して支払われる賃金との差額の60%未満の金額」しか受けない日

ここで、複数事業労働者については、複数の就業先のうち、一部の事業場において、年次有給休暇等により当該事業場における平均賃金相当額(複数事業労働者を使用する事業ごとに算定した平均賃金に相当する額をいう。以下同じ。)の60%以上の賃金を受けることにより賃金を受けない日に該当しない状態でありながら、他の事業場において、傷病等により無給での休業をしているため、賃金を受けない日に該当する状態があり得る。
したがって、複数事業労働者の休業(補償)等給付に係る「賃金を受けない日」の判断については、まず複数就業先における事業場ごとに行うこと。
その結果、一部の事業場でも賃金を受けない日に該当する場合には、当該日は労災法第14条第1項の「賃金を受けない日」に該当するものとして取り扱うこと。
一方、全ての事業場において賃金を受けない日に該当しない場合は、当該日は労災法第14条第1項の「賃金を受けない日」に該当せず、保険給付を行わないこと。

複数事業労働者の休業(補償)等給付に係る部分算定日等の取扱いについて(令和3年3月18日基保発0318第1号)

本肢は、「複数事業労働者の休業(補償)等給付に係る部分算定日等の取扱い」に関する問題です。

上記根拠通達にあるとおり、「賃金を受けない日」には、賃金の全部を受けない日と一部を受けない日とを含むが、賃金の一部を受けない日については、次の日であるとされています。

① 所定労働時間の全部について「労働することができない」場合であって、平均賃金(労働基準法第12条の平均賃金をいう。)の60%未満の金額しか受けない日
② 通院等のため所定労働時間の一部について「労働することができない」場合であって、当該一部休業した時間について全く賃金を受けないか、又は「平均賃金と実労働時間に対して支払われる賃金との差額の60%未満の金額」しか受けない日

今回のケースは、上記②に該当するため「賃金を受けない日に該当する状態があり得る」ということができます。

本肢は○です。

労働者災害補償保険法 令和6年第4問 C

 複数事業労働者については、その疾病が業務災害による遅発性疾病である場合で、その診断が確定した日において、災害発生事業場を離職している場合の当該事業場に係る平均賃金相当額の算定については、災害発生事業場を離職した日を基準に、その日(賃金の締切日がある場合は直前の賃金締切日をいう。)以前3か月間に災害発生事業場において支払われた賃金により算定し、当該金額を基礎として、診断によって当該疾病発生が確定した日までの賃金水準の上昇又は変動を考慮して算定する。

解答の根拠

複数事業労働者に係る給付基礎日額の算定について(令和2年8月21日基発0821第2号)

根拠条文を確認します。

1 平均賃金相当額の算定について
(1)平均賃金相当額の算定期間及び算定方法
ウ 算定事由発生日において平均賃金相当額を算定すべき事業場から離職している場合等
(ア)業務災害又は通勤災害の場合 当該疾病が業務災害又は通勤災害によるものである場合で、遅発性疾病等の診断が確定した日において、業務災害又は通勤災害に係る事業場(以下「災害発生事業場等」という。)を離職している場合の当該事業場に係る平均賃金相当額の算定については、災害発生事業場等を離職した日を基準に、その日(賃金の締切日がある場合は直前の賃金締切日をいう。)以前3か月間に災害発生事業場等において支払われた賃金により算定し、当該金額を基礎として、診断によって疾病発生が確定した日までの賃金水準の上昇又は変動を考慮して算定し、また、当該労働者の離職時の賃金が不明であるときには、算定事由発生日における同種労働者の一日平均の賃金額等に基づいて算定すること。

複数事業労働者に係る給付基礎日額の算定について(令和2年8月21日基発0821第2号)

本肢は、「複数事業労働者に係る給付基礎日額の算定」に関する問題です。

上記根拠通達にあるとおり、「災害発生事業場等を離職した日を基準に、その日(賃金の締切日がある場合は直前の賃金締切日をいう。)以前3か月間に災害発生事業場等において支払われた賃金により算定し、当該金額を基礎として、診断によって疾病発生が確定した日までの賃金水準の上昇又は変動を考慮して算定し」とされています。

本肢は○です。

労働者災害補償保険法 令和6年第4問 D

複数事業労働者については、その疾病が業務災害による遅発性疾病である場合で、その診断が確定した日において、災害発生事業場を離職している場合の非災害発生事業場に係る平均賃金相当額については、算定事由発生日に当該事業場を離職しているか否かにかかわらず、遅発性疾病の診断が確定した日から3か月前の日を始期として、当該診断が確定した日までの期間中に、非災害発生事業場から賃金を受けている場合は、その3か月間に非災害発生事業場において支払われた賃金により算定する。

解答の根拠

複数事業労働者に係る給付基礎日額の算定について(令和2年8月21日基発0821第2号)

根拠通達を確認します。

1 平均賃金相当額の算定について
(1)平均賃金相当額の算定期間及び算定方法
ウ 算定事由発生日において平均賃金相当額を算定すべき事業場から離職している場合等
(ア)また、災害発生事業場等を離職している場合の、新労災則第12条第2項に規定する非災害発生事業場又は通勤災害に係る事業場以外の事業場(以下「非災害3 発生事業場等」という。)に係る平均賃金相当額については、算定事由発生日に当該事業場を離職しているか否かにかかわらず、遅発性疾病等の診断が確定した日ではなく災害発生事業場等を離職した日から3か月前の日を始期として、災害発生事業場等における離職日までの期間中に、非災害発生事業場等から賃金を受けている場合は、災害発生事業場等を離職した日の直前の賃金締切日以前3か月間に非災害発生事業場等において支払われた賃金により算定し当該金額を基礎として、診断によって疾病発生が確定した日までの賃金水準の上昇又は変動を考慮して算定し、また、当該労働者の離職時の賃金が不明であるときには、算定事由発生日における同種労働者の一日平均の賃金額等に基づいて算定すること。

複数事業労働者に係る給付基礎日額の算定について(令和2年8月21日基発0821第2号)

本肢は、「複数事業労働者に係る給付基礎日額の算定」に関する問題です。

語句相違問題となります。

問題文…遅発性疾病の診断が確定した日から
正しくは…災害発生事業場等を離職した日から

肢Cの問題とセットでおさえておきましょう。

本肢は×となり、本問の正解となります。

労働者災害補償保険法 令和6年第4問 E

複数事業労働者に係る平均賃金相当額の算定において、雇用保険法等の一部を改正する法律(令和2年法律第14号。以下「改正法」という。)の施行日後に発生した業務災害たる傷病等については、当該傷病等の原因が生じた時点が改正法の施行日前であっても、当該傷病等が発生した時点において事業主が同一人でない2以上の事業に使用されていた場合は、給付基礎日額相当額を合算する必要がある。

解答の根拠

複数事業労働者に係る給付基礎日額の算定について(令和2年8月21日基発0821第2号)

根拠通達を確認します。

第1 新法第8条第3項の規定による給付基礎日額の算定について
1 平均賃金相当額の算定について
(6)なお、改正法の施行日後に発生した傷病等については、算定事由発生日又は、傷病等の原因が生じた時点が改正法の施行日前であっても、傷病等が発生した時点において事業主が同一人でない二以上の事業に使用されていた場合は、給付基礎日額相当額を合算する必要があるため、当該労働者の賃金額が客観的に確認できる資料の有無について十分に調査を行ってもなお非災害発生事業場等における賃金総額が不明な場合も、同様に取り扱うこと。

複数事業労働者に係る給付基礎日額の算定について(令和2年8月21日基発0821第2号)

本肢は、「複数事業労働者に係る給付基礎日額の算定」に関する問題です。

上記根拠通達にあるとおり、「改正法の施行日後に発生した傷病等については、算定事由発生日又は、傷病等の原因が生じた時点が改正法の施行日前であっても、傷病等が発生した時点において事業主が同一人でない二以上の事業に使用されていた場合は、給付基礎日額相当額を合算する必要がある」とされています。

本肢は○です。

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