雇用保険の被保険者に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
雇用保険法 令和5年第1問 A
名目的に就任している監査役であって、常態的に従業員として事業主との間に明確な雇用関係があると認められる場合は、被保険者となる。
雇用保険に関する業務取扱要領 20351
根拠要領を確認します。
20351(1)労働者性の判断を要する場合
イ 取締役及び社員、監査役、協同組合等の社団又は財団の役員
(ハ) 監査役については、会社法上従業員との兼職禁止規定(会社法第335条第2項)があるで、 被保険者とならない。ただし、名目的に監査役に就任しているに過ぎず、常態的に従業員とし て事業主との間に明確な雇用関係があると認められる場合はこの限りでない。雇用保険に関する業務取扱要領
本肢は、「被保険者」に関する問題です。
原則として、取締役や監査役などの「役員」は、「雇用」されているわけではないので雇用保険被保険者とはなりません。
しかし、世の中にはいろいろな会社があって、「監査役」と名前がついている役割を担っていたとしても、上記根拠要領のように「名目的に監査役に就任しているに過ぎず、常態的に従業員として事業主との間に明確な雇用関係があると認められる場合」は、もちろん「雇用関係あり」となり、雇用保険被保険者となります。
本肢は○です。
雇用保険法 令和5年第1問 B
専ら家事に従事する家事使用人は、被保険者とならない。
雇用保険に関する業務取扱要領 20351
根拠要領を確認します。
20351(1)労働者性の判断を要する場合
チ 家事使用人 家事使用人は被保険者とならない。ただし、適用事業に雇用されて主として家事以外の労働に従事することを本務とする者は、家事に使用されることがあっても被保険者となる。雇用保険に関する業務取扱要領
本肢は、「被保険者」に関する問題です。
家事使用人は、上記根拠要領にあるとおり、原則として雇用保険被保険者とはなりません。
ただし、家事使用人とされていても、その業務のメインが家事以外であれば、例外として被保険者となります。
問題文には「専ら」とありますので、原則の通り被保険者とはなりません。
本肢は○です。
雇用保険法 令和5年第1問 C
個人事業の事業主と同居している親族は、当該事業主の業務上の指揮命令を受け、就業の実態が当該事業所における他の労働者と同様であり、賃金もこれに応じて支払われ、取締役等に該当しない場合には、被保険者となる。
雇用保険に関する業務取扱要領 20351
根拠要領を確認します。
20351(1)労働者性の判断を要する場合
リ 同居の親族 個人事業の事業主と同居している親族は、原則として被保険者としない。 法人の代表者と同居している親族については、通常の被保険者の場合の判断と異なるものではないが、形式的には法人であっても、実質的には代表者の個人事業と同様と認められる場合(略)があり、この場合は、個人事 業主と同居の親族の場合と同様、原則として被保険者としない。 なお、同居の親族であっても、次の(イ)~(ハ)の条件を満たすものについては、被保険者として取り扱う。
(イ) 業務を行うにつき、事業主の指揮命令に従っていることが明確であること。
(ロ) 就業の実態が当該事業所における他の労働者と同様であり、賃金もこれに応じて支払われていること。特に、 a 始業及び終業の時刻、休憩時間、休日、休暇等 b 賃金の決定、計算及び支払の方法、賃金の締切り及び支払の時期等 について、就業規則その他これに準ずるものに定めるところにより、その管理が他の労働者と同様になされていること。
(ハ) 事業主と利益を一にする地位(取締役等)にないこと。雇用保険に関する業務取扱要領
本肢は、「被保険者」に関する問題です。
同居の家族は、上記根拠要領にあるとおり、原則として雇用保険被保険者とはなりません。
ただし、以下の状況にある場合には、例外的に被保険者となります。
・事業主の指揮命令に従っていることが見え欠く
・当該事業所の他の労働者と就業の実態が同様であり、賃金もそれに応じて支払われている
・取締役など、事業主と利益を同じくする地位にないこと
問題文では、上記3つの要素に該当するので、例外的に被保険者となります。
本肢は○です。
雇用保険法 令和5年第1問 D
ワーキング・ホリデー制度による入国者は、旅行資金を補うための就労が認められるものであることから、被保険者とならない。
雇用保険に関する業務取扱要領 20352
根拠要領を確認します。
20352(2)労働者の特性・状況を考慮して判断する場合
ヘ ワーキング・ホリデー制度による入国者 ワーキング・ホリデー制度による入国者は、主として休暇を過ごすことを目的として入国し、その休暇の付随的な活動として旅行資金を補うための就労が認められるものであることから、被保険者とならない。雇用保険に関する業務取扱要領
本肢は、「被保険者」に関する問題です。
ワーキングホリデーとは、自国と協定を結んでいる国や地域に、長期間滞在できる制度です。
上記根拠要領に記載があるとおり、ワーキングホリデーのメインの目的は「休暇を過ごす」ことであり、滞在中に働いたとしても、それは一時的な・付随的な就労であるため、被保険者とはならないとされています。
本肢は○です。
雇用保険法 令和5年第1問 E
日本の民間企業等に技能実習生(在留資格「技能実習1号イ」、「技能実習1号ロ」、「技能実習2号イ」及び「技能実習2号ロ」の活動に従事する者)として受け入れられ、講習を経て技能等の修得をする活動を行う者は被保険者とならない。
雇用保険に関する業務取扱要領 20352
根拠要領を確認します。
20352(2)労働者の特性・状況を考慮して判断する場合
チ 外国人技能実習生 諸外国の青壮年労働者が、我が国の産業職業上の技術・技能・知識を習得し、母国の経済発展と産業育成の担い手となるよう、日本の民間企業等に技能実習生(在留資格「技能実習1号イ」、「技能実習1号ロ」、「技能実習2号イ」及び「技能実習2号ロ」の活動に従事する者)として受け入れられ、技能等の修得をする活動を行う場合には、受入先の事業主と雇用関係にあるので、被保険者となる。 ただし、入国当初に雇用契約に基づかない講習(座学(見学を含む)により実施され、実習実施期間の工場の生産ライン等商品を生産するための施設における機械操作教育や安全衛生教育は含まれない。)が行われる場合には、当該講習期間中は受入先の事業主と雇用関係にないので、被保険者とならない。雇用保険に関する業務取扱要領
本肢は「被保険者」に関する問題です。
外国人技能実習生は、原則として雇用保険被保険者となります。
ただし、実態として「雇用契約に基づかない講習期間中」は、雇用関係はないので被保険者とはなりません。
問題文には「講習を経て」とありますので、原則の通り被保険者となります。
本肢は×となり、本問の正解となります。